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VRMMOのトッププレイヤーはリアルでも最強になりました  作者: 陽月純
第1章 黒死竜討伐編

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27.人型の襲来、そして…

武闘会以降、怪物による被害の話が何故か減っていた。全く無くなった訳ではなかったが、明らかに減少していたのだ。一部の報道では、


「ここ最近、怪物による被害が沈静化してきています。ほとんどの怪物がハンターの皆さんが既に討伐してしまって、後は原因となった黒死竜だけとなったと思われ、現在、協会は、黒死竜の行方を追っています」


 と、言っている。

 だが、賢也はノッコの話を聞いていたため、人型の怪物が身を潜めているのを知っていた。だが、他の動物や昆虫等の怪物が姿をほとんど現さなくなったのは、気にはなっていた。

 ある日、ノッコから引っ越しが決まったと連絡が入った。


「ノッコの引っ越しが決まったみたいだな」

「ノッコさん、こっちに来るんだっけ?」

「ああ、身の危険を感じるらしい」

「そうなの?最近、怪物騒ぎ減って来たのにね」

「そうだな。何も起きないと良いんだけどな…」


 賢也は、いつものように道場で特訓をしていた。休憩をしようとすると、道場の外から視線を感じた。外から中の様子は見えないようにしていたが、気になり、外に出てみた。

 しかし、道場の周りには誰もいなかった。気のせいかと賢也は道場の中に戻っていった。


「見つけた。あれが我等の脅威となる1人か」


 賢也も気付かない程、遠く離れた場所で呟き、立ち去って行く影があった。


 1週間後、賢也の住む町にノッコが引っ越して来た。賢也が道場で護身術を教えているのを聞き、自分にも教えて欲しいと賢也にお願いをした。賢也は、ノッコの願いを聞き、護身術を教える事にし、次の稽古から参加するように言った。


 そして、ノッコが稽古の初参加の日、


「今日から新しく稽古を受けるようになった間 法子さんです。分からない事は教えてあげて下さい」

「間です。よろしくお願いします」


 ノッコが挨拶をすると、全員が拍手して迎え入れた。


「じゃあ、いつものように三調から始めて下さい。ノッコはこっちに来て。最初は教えるから」

「はい」


 全員が三調を始める中、ノッコは道場の隅に行き、賢也が三調の説明をする。


「分かった?それと、これが出来るようになったら、慣れると多分、自分の中にある怪物の力を感じ取れるようになると思う」

「そうなの?」

「ああ、俺もそうだったからな。その力を受け入れるんだ。多分、これから先、ノッコの鑑定の力が必要になって来る気がする。使いこなして欲しい」

「分かったわ。怖いけど、頑張ってみる」


 賢也は、皆の元に戻ろうとした時、また視線を感じた。ノッコも感じたらしい。


「何だ?この間から何かに見られている気がする」

「私も今感じたわ」


 二人は周りを見渡すが、三調を続けている皆以外に気配を感じない。賢也は、外に出てみるが、やはり誰もいなかった。


「おかしいな。誰もいないし、気配も感じないのに、視線だけは感じる」


 賢也は首を傾げ、ノッコを見ると震えていた。


「この視線は、いつも感じていたのと同じ感じがする。怖い…」


 ノッコの言うことが本当であれば、人型の怪物の可能性が高い。


(だが、何故?ノッコが来る前から視線を感じるようになっていた。ということは、狙いは俺自身?)


 賢也は、自分が狙われているのなら、稽古は中止にした方がいいかと、皆に言おうと思った時、視線を感じなくなった。


「何なんだ。本当に」


 賢也は、暫く様子を伺っていたが、その日は視線を感じる事は無かった。

 不気味な視線はその後も毎日感じるようになり、さすがに賢也も精神的に参ってきていた。


「何かをされる訳ではないけど、こうも毎日視線を感じるのはきついな」


 いっそのこと襲撃された方がまだ良いとさえ思う。

 

「そろそろ頃合いか」


 遠くから賢也を見ている影は呟いた。賢也の苛立ちを感じる。後は最後の一押しを。


「ふふふ」


 その影は不気味に笑い、消えていった。


 翌日、稽古の途中に賢也のハンターライセンスにメールが入ってきた。


「久しぶりにメールが来たな。何だ?」


 確認するとランクAの怪物が出現したため、賢也に討伐依頼のメールだった。


「ランクAの怪物が出現したらしいから、ちょっと討伐に行ってきます。戻って来るまでは、いつものメニューをしていて下さいね」


 賢也は、すぐに怪物の出現場所へと向かった。

 賢也が出ていった後、すぐに1人の女が道場を訪れてきた。


「見学ですか?すみません。今、先生は怪物退治に出掛けて留守です」


 入り口の近くにいた男性が話しかけるが、女は構わず中に入ってきた。その女は、輝の前に行く。


「お姉ちゃん、僕に何か用?」


 輝が尋ねるが、女は何も答えない。その女を見たノッコが叫ぶ。


「輝くん!その人から離れて!」


 綾乃が驚き、輝の手を取るが、女の方が一足早く動いた。女の手が輝の頭を掴む。


「痛い。何するの!」


 輝は、女の手を振りほどこうとしたが、女の手は離れない。


「ちょっと、止めなさい!」


 綾乃が女の手を掴むが、逆に吹き飛ばされた。異変を感じた男達が、体当たりをするがびくともしない。


「何だこの女?力が半端じゃない」

「痛い!痛い!」


 輝が叫んでいる。女の手からは黒い霧のようなものが現れ、輝の頭を包み込んでいた。その黒い霧が消えた時、そこに怪物を討伐し、賢也が戻って来た。


「ただいま。おい、お前何している!」


 賢也は、女を見るとすぐに輝の元へ向かった。女は、賢也を見ると、


「もう戻って来たのか。役立たずだな。あれは。まあ、いい。目的は果たせた」


 女は輝を離し、入り口に向かって走り出した。


「おい、待て」

「賢也!ダメ!その人は…」


 ノッコが叫ぶ。女は入り口に着くと振り返り、賢也に叫んできた。


「さぁ、お前の悲劇はここから始まるぞ!怒れ!そして、私に敗れ、喰われるがいい!あははははっ!」


 賢也は、女から邪悪な気を始めて感じる。


「お前、人型か!輝に何をした!」

「すぐに分かるさ。全て見ているからな。お前の狼狽える様を楽しませて貰おう!」


 そう言うと、黒い穴に女は消えていった。


「異空間に逃げたか。今までの視線を感じていたのは、あいつだったんだな」


 賢也は、輝の元に行くと、


「輝、大丈夫か?」

「うん。頭を掴まれて痛かったけど、大丈夫…」


 輝は答える途中で、急に頭を抱えて叫び出した。


「何!何なの!うるさい!僕は僕だ!嫌だ!」

「どうした!輝!」


 賢也は、ハッとする。輝から、邪悪な気を感じるのだ。


「まずい!皆、下がれ」


 全員を輝から離れさせると、賢也は身構えた。


「くそ!くそ!あいつの言っていたのはこういう事か!」


 輝がニヤリと不気味に笑っている。誰が見ても明らかに、いつもの輝では無かった。


「ひ、輝。輝ぅぅ!」


 綾乃も叫ぶ。そんな綾乃を見て、輝は笑い出した。


「あーはっはっ!輝って誰だい?あぁ、この体が人間だった時の名前か」


 綾乃はショックに耐えきれず、気絶してしまった。


「お兄ちゃん…。お兄ちゃんを返して!」


 さくらは、人型になってしまった輝に向かって叫んでいた。


「さて、お前に俺は斬れまい。実の息子だぞ。俺は」


 輝は、ニヤリと笑うとその場から離れようとしている。


「くそ、逃がすか」


 賢也は、逃がさないように輝の前に立ちはだかる。


「邪魔だ」


 輝は、手に光の球を出現させると賢也に向けて放ってきた。賢也は、【銀狼】を取り出すと光の球を真っ二つに斬る。その瞬間に輝の前にさっきの女が消えたのと同じ異空間の入り口が現れた。


「じゃあな」


 輝は、穴に入り消えてしまう。


「くそぉぉぉ!絶対許さない!」


 その場にいた全員が何と声をかけたらいいか分からず、皆ただ立ち尽くしていた。


「ノッコ。ごめん。嫌かもしれないけど、俺に力を貸してくれないか」


 賢也はノッコに話しかける。


「うん。私に出来る事なら、力を貸すよ」


 ノッコも輝が目の前で怪物化してしまった事を気にしていた。


「明日、俺と協会支部に行ってくれ」


 賢也は、協会支部の研究員に輝を元に戻す手掛かりを聞くつもりだった。


「分かった。じゃあ、明日」

「皆さんもすみません。暫く稽古は休みにさせて下さい」

「分かりました。輝くん、元に戻るように祈ってます。頑張ってください」

「ありがとうございます…」


 皆、その場から帰っていった。賢也は綾乃を起こすと家に帰った。


「必ず、輝は取り戻す。必ずだ」

「お願い…」


 賢也の握る拳から血が滲んでいた。


「パパ、手から血が出てるよ」


 さくらが賢也の手から滲んでいる血をティッシュで拭き取る。


「ありがとう」


 賢也はさくらを抱きしめ、頭にポンと手を置いた。


「兄ちゃんとまた遊べるようにするからな」


 賢也は、自分の身がどうなっても輝を元に戻す決心をしたのだった。


 翌日、賢也はノッコと共に協会支部の研究員に会いに行った。


「すみません。怪物化した人間を元に戻す方法は見つかりましたか?」


 賢也が研究員に尋ねる。研究員は、首を横に振り、


「まだです。あなたがそちらの方を救った事例しか報告がないですから」

「何か手掛かりは無いですか」


 賢也は必死に研究員に問いかける。


「どうしたんですか?何かあったんですか?」


 賢也は、研究員に事情を説明した。


「そういうことですか。でも、そちらの方の精密検査の結果を見ても何も分からないんですよ。普通の人と何も変わらないんです。むしろ、あなたが本当に何をしたのか聞きたいですよ」

「それは、前に聞かれた時に答えましたけど、ただ攻撃しただけです」

「あなたの攻撃を体内にいる竜が嫌がったのか。でも、他の動物型の死体を調べる限り、竜の遺伝子と動物の遺伝子は完全に融合してたから、分離するなんてのは、考え辛いし…」


 研究員が真剣に考え始め、ぶつぶつと呟き始めた。

 

「死体にも効果あるのかな」


 研究員が何か思い付いたらしい。


「龍崎さん、昨日討伐したランクAの猫型の怪物には同じ攻撃ってしましたか?」

「いや、剣で斬ったからしてないですけど」

「死体の解剖はまだなんで、その攻撃を死体に試して貰えますか」

「はい。それで、何か手掛かりが掴めるのなら」


 賢也達は怪物の解剖室へと向かう。


「ちょっと待ってください」


 研究員は、怪物にメスを入れ、肉片を採取すると、


「じゃあ、この死体に攻撃してみてください」


 賢也は言われた通りに死体に気を込めて殴り付けた。

「よし。じゃあ、ちょっと待ってくださいね」


 研究員は賢也が殴り付けた場所の肉片を採取すると、顕微鏡で2つの肉片を見比べた。


「うん。やっぱり」

「やっぱり?何か分かったんですか!」


 賢也は、研究員の両肩を掴み聞いた。


「いや、何も変化が無いということが分かっただけです。ただ、人型と他の動物型の違いを考えた場合の私の推測なんですが、動物型は、姿も遺伝子も全く異なる物になっていますが、人型は人の姿のまま怪物の力を使っています。そして、怪物と分離した間さんの遺伝子は人そのものという事は、人型はまだ完全に怪物と人が完全に同化していないんだと思います。だから、命の危険を感じた時に、宿主の体を捨て、分離したんじゃないですか?そして、体の同化には体の大きさも関係があるのかもしれません」


 研究員の推測の域だが、そういえば次元は、人の形は保っていたが、人外の爪が生えたりして、同化が進んでいて、宿主の体を捨てる事が出来なかったのかもしれない。


「ただ、私の推測がもし合っていたら、お子さんは早くしないと同化が進んで、取り返しがつかなくなってしまうかもしれません」

「ありがとうございます。推測かもしれませんが、今はその推測を信じて、やってみます」

「頑張ってください。私には、これ以上の事は言えないです。取り戻せるのを祈ってます」


 賢也は、礼をするとノッコと出ていった。


「ノッコ、次は君にお願いだ。君の力で輝を探せないか?」

「え?無理だよ。私の力って、何となく見た人が怪物なのかが分かるのと、賢也みたいに力を持った人がどんな力なのか、それを感じ取るだけだよ」

「ああ、だからその力で輝の力か、あの女の力を遠くからでも感じ取れないかな」


 賢也は、ノッコの力の可能性に賭けてみた。


「成る程。気の力を使って感じ取れないかってことね」

「ああ、まだ上手く出来ないかもしれないけど、試してみてくれないか」

「分かったわ。試してみる」


 ノッコは、深呼吸をすると意識を集中する。輝の力はあの時見た光を操る力だろう。光のイメージを持った力を感じ取れないか、その事だけを考える。

 ノッコが集中し始めて3分程が経過した。賢也はやっぱり厳しいかと諦めかけた時、


「居た!光の力を感じる!」

「本当か!何処に?」

「あっち。ここから50km位離れてると思う。でも、輝君かどうかまでは分からないよ」

「ああ、構わないさ。手掛かり0から、ここまでの手掛かりを貰ったんだ。行ってくる。ノッコは気を付けて帰ってくれ」

「頑張ってね」


 賢也は右手を上げ、ノッコに挨拶すると、ノッコの指差した方向に飛び上がっていった。

ここまで読んで頂きありがとうございます。


今後もよろしくお願いします。


良ければ、感想や評価もよろしくお願いします。

今後の励みになるので。

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