21.ハンター武闘会開催
武闘会当日、賢也は会場に到着した。1ヶ月という短い準備期間だった割には、しっかりとした会場が出来ていた。そして、会場の周りには様々な出店も来ており、まさしくお祭り騒ぎの状況だった。
「凄い盛り上がりだな。今日は予選だけだな。俺はBブロックか」
予選開始まではまだ時間があった。賢也は、一緒に来ていた綾乃達と出店を回っていた。
「金魚すくいやりたい」
さくらが少し先にある屋台を見つけ、走っていった。
「こら、走らない。それに金魚すくいは出来ないよ。帰りは飛行機に乗るんだから、金魚さん持って帰れないでしょ。金魚さんが可哀想だよ」
「は~い」
さくらは不機嫌そうだが、聞き分けよく返事をした。
「代わりに、あの綿菓子とかどうかな?」
「いる!」
さくらは綿菓子の屋台にまた走っていった。
「だから、走らないの。もう」
綾乃が呆れた表情でさくらに言い聞かせていた。
「輝は、欲しいもの無いのか?」
賢也が、輝に尋ねた。
「僕はいらない。そんなのよりパパが優勝してくれた方がいい」
「あはは。そうだな。パパ頑張るよ」
賢也は戦闘前のこのほのぼのした雰囲気がとても心地良かった。怪物が元は地球上の生物であっても、家族を守るためなら、どんな相手でも戦い抜いていく覚悟を決めた。
暫く歩いているとアナウンスが流れてきた。
「武闘会に参加されるハンターの皆さんは予選会場にお集まりください…」
「呼ばれたね。じゃあ行ってくるよ」
「頑張って。観覧席で応援してるから」
「パパ、頑張ってね。優勝だよ」
「今日は予選だけだから、優勝はまだだよ。さくら。じゃあね」
輝とさくらの頭をポンと軽く叩いて、予選会場へと向かった。
予選会場に着くと知った顔がいた。臼井と武井だ。2人も参加していたらしい。賢也は2人に声をかけた。
「武井さん、臼井さん、お二人も参加していたんですね」
「龍崎くん」
「ちっ、龍崎か」
臼井は賢也が参加しているのが嫌そうだった。
「ああ、俺たちだけじゃない。他のメンバーも皆、腕試しに参加しているよ」
「そうなんですね。お互い頑張りましょう」
「ありがとう。君は予選は何ブロックだい?」
「Bですよ」
「B!」
臼井が大きな声で反応する。
「そういえば臼井くんもBブロックだったね。俺はAブロックだ」
「臼井さんには悪いですが、負けませんよ。俺は」
「こっちのセリフだ。バトル・ロワイアルだからな。いくらお前が強くても、チャンスはあるはずさ」
武井、臼井と話していると、各ブロックに集合のアナウンスが流れた。
よし、やるか!
賢也と臼井は武井と別れるとBブロックの集合場所に向かった。
「おーい。龍崎くーん!」
予選会場に向かう賢也を呼び止める声がする。
振り向くと梶が走って向かって来ていた。
「今から、予選だろ。頑張って」
息を切らしながら、梶が挨拶してきた。
「梶さんもこっちに来てたんですね」
「ああ、君にこれを早く渡したくてね」
梶は、賢也に二振りの小太刀と、籠手を渡した。
「これは?」
「前に言っていた甲虫型の怪物の外郭で作った籠手と、海で君が倒した怪物の角で作った小太刀だよ。小太刀は、使えないけど籠手は使えるでしょ。間に合えばと思って」
「ありがとうございます。でも、ちょっと間に合わないので、家族に預けて貰ってもいいですか。この席にいると思うので」
賢也は、観客席の番号の控えを梶に見せた。
「分かった。渡しておくね。じゃあ本当に頑張って。応援しているよ」
「ありがとうございます。じゃあ、行ってきます」
賢也は、梶と別れると、急いで予選会場に向かった。
「おい、これ全員で競うのか」
そこには、200人程が集まっていた。
「そうですね。3327人が参加しているらしいですから、16ブロックで分ければ、200人以上になりますよね」
「場外負けもあるから、なるべく真ん中を陣取るしかないな」
「それはそれで、人が集中するから、危険かもしれませんよ。俺は外から中に攻めて行きますよ」
それぞれの作戦を話していると、Bブロックの予選開始の合図が鳴った。
賢也達は、舞台に上がる。
「では、予選Bブロックの試合を開始します。案内にもあった通り、場外、気絶をした方は負けとなります。気絶した方は、試合の邪魔になる場合は、場外に各自で退かして下さい。では、開始します。始めてください」
賢也は、作戦通り集団の外側に構えていた。すると、開始の合図と同時に叫び声が聞こえた。
「ここのブロックに今話題の新種キラーのルーキーがいるぞ!最初にそいつから片付けるんだ!全員でかかれば負けるものか!」
「何!何処だ!どいつだ!」
周囲がざわつき始めた。あの叫び声は、臼井だ。
「あ、あいつだ。模擬刀を持って端にいるぞ!」
臼井ではない。誰かが賢也を指差し叫んでいる。
「やれやれ」
賢也はため息をつく。まぁ、どうせ戦わないといけないのだ。ならば、一気に人数を削るか。
外側にいる男達が一斉に賢也目掛けて銃を撃ち始めた。
バン!バン!と乾いた銃声が鳴り止まない。時折、
「痛っ」、「うわっ」
という声が聞こえる。賢也を狙ったはずのゴム弾の流れ弾が当たっているようだ。こんな密集した状態で銃を撃てば当然だが、ついでに気絶させてしまえば自分の勝ち残れる確率が上がるため、お構い無しに撃っているため、予想通りの混戦状態となった。
「気絶させたら、足場の邪魔になるから、場外に吹き飛ばすか」
賢也は、ゴム弾を弾き、躱しながら、正面にいた男に近付く。
「こ、こいつ。近寄るな」
銃を乱射してくるが、焦りから全て狙いが定まらず、賢也は躱すまでもなかった。剣の間合いに入ると、賢也は力任せに大きく横に薙いだ。
男の横腹にもろに賢也の剣が当たり、横に吹き飛んだ。しかし、密集しているため、場外までは吹き飛ばず、途中、他の男にぶつかり留まる。
「あ、これ面倒だ。端から順に叩き出さないと駄目か」
最初の一人を吹き飛ばした事で、周りの男が賢也への警戒がより強くなり、吹き飛ばされまいと固まり始めている。
賢也は集団の端に移動すると、5人の固まりを一撃で場外に吹き飛ばした。
「そこの5人、場外。失格です」
吹き飛ばされた5人がすぐに失格のアナウンスを受ける。
これを合図に、賢也以外の男が一斉に中央に向かい始めた。
「どけ!あんな場外負けなんてなってたまるか」
「お前こそ。どけ!あいつとやるには、中央にいないと駄目だ」
それまで臼井の叫び声で賢也を狙っていた男達は、賢也ではなく、近くの男を攻撃し始め、混戦は一層ひどい状態となったのだ。
「これはまた、ひどいな」
至近距離でゴム弾を受け、気絶して倒れた者も出始めている。賢也は、外側の男達を次々と場外に吹き飛ばしながら中央に向かっていた。予選が開始されて、20分程で半数程になった。そのほとんどが賢也によって場外に吹き飛ばされている。床には、気絶した男も転がっていたが、人と人の感覚がそこそこ取れるようになって来ていた。
「気絶者が邪魔だな」
賢也は、転がっている気絶者で、足場が悪くなっているのを気にしながら、次のターゲットに向かって歩き始めた。
「あいつだ。あいつを先に片付けろ。もうだいぶ人数が減ったぞ。戦い易くなったはずだ」
また臼井の叫び声が聞こえる。まだ何とか残っているようだ。
残っている男は場外に吹き飛ばすには距離がある位置に立っているのは確かだった。
「そうだな。あんな化け物一人で相手するより、先に全員で倒した方がいい」
「場外負けはもう無いだろう。やるか」
臼井の呼び掛けに応え、全員が賢也に向かって再び攻撃を集中してきた。
「今さら攻撃を集中してきても遅いよ」
賢也は、歩みを止めることなく、近付いていく。賢也に狙われた男は、ゆっくりと近付いてくる賢也を恐れ、銃を撃ちながら、後退していく。賢也は、銃弾の嵐の中、一発も体に当てられることなく、近付き後退する男に追い付いた。
「くそー」
近付かれた男は銃を撃とうと引き金を引くが、弾切れだった。
「ちっ。弾切れかよ」
そう言うと、賢也に殴りかかっていった。賢也は男の拳が届く前に、袈裟斬りで気絶させた。
「さて、ここからは、ギアを上げて行くか」
そう言った次の瞬間には、既に近くの男の目の前に移動していた。
「はっ!」
賢也は、男の腹目掛けて薙いだ。ドスッという音と共に男が倒れ込む。周りの男は、余りの早さに呆気に取られている間に、賢也はもう次の相手の前に立っていた。誰も賢也の動きについていけていなかった。銃を撃つ間もなく次々と男が気絶させられていく。
もう残り50人程まで減っていた。
「さて、まだ続けますか?」
賢也は残った人に声をかけた。何人かの男は戦意喪失している。
「降参という人は、場外に出て下さい。攻撃はしませんよ」
「ふざけるな」
臼井が反論する。
「ちょっと強いからっていい気になるんじゃねぇ。俺達全員で掛かれば、勝てるはずだ」
臼井が再び他の男に賢也を攻撃するのを促す。しかし、3度目の先導に、他の男達の反応が変わった。
「そういえば、さっきからお前は何なんだ?」
「そうだ。お前が言い出さなければ、こんなグダグタした戦いにならず、あいつももう少し疲れたり、ダメージが入ったりしてたかもしれないじゃないか」
臼井が他の男から責められ始めた。
「え、いや、一番強い奴を全員で倒すのが、バトル・ロワイアルのセオリーだろ」
「誰が決めた。そんな事」
臼井は、残った男全員に囲まれてしまった。皆、銃を臼井に向けている。
「止めろ。俺じゃないだろ。あいつを攻撃しろよ」
「黙れ!」
これを合図に全員が臼井を撃つ。多数のゴム弾を全身に受け、臼井は倒れてしまった。
「な、なんで」
そのまま気絶してしまった。
「よし。何かスッキリした。気を取り直して、勝負といこうじゃないか」
残った男は、賢也の方を向く。どうやら降参をする者はいないようだ。
「なぁ、一つ提案があるんだが」
一人の男が全員に話しかけてきた。
「あいつが強いのは分かった。これがバトル・ロワイアルということも分かっている。だが、あいつと1対1で勝負させてくれないか」
「なるほど。それもいいな」
賢也がいつ自分の前に来るか分からないから対処出来ない。1対1ならまだ勝負になるんじゃないかという算段だった。そして、他の男はその提案を飲めば、最後に勝負すれば賢也の体力も落ちて、勝てるかもという期待を持った。
「俺もそうさせてくれ」
次々と賢也との1対1の勝負を希望する声が上がった。
「俺は1対1でも、1対全員でもどちらでもいいですよ」
賢也は答えた。どちらかと言えば、1対全員の方が手っ取り早くて助かるが。
「じゃあ、俺からだ!」
1対1を提案してきた男が、賢也に向け銃を撃ってきた。賢也は簡単に躱すと距離を詰めた。
「もらった!」
男は、腰に隠していた短刀型の模擬刀で賢也の顎を狙って突きを放った。
「いい攻撃ですね。怪物というより、人間向けですね」
賢也は、すっと後ろに体を反らすと、突きをやり過ごし、剣の柄で逆に顎を打つ。コツン。
男は気絶してしまった。
「さて、残り48人。次は誰ですか?」
「「「「俺だ!」」」
賢也の後ろにいた3人が同時に返事をして、銃を撃ってきた。
賢也は振り向き様に弾を弾く。
「あ、すまん」
「まさか、被るとは」
「悪い」
撃ってきた3人が謝ってきた。
「大丈夫ですよ。1対3でも問題無いです」
「言ってくれるね」
「なら、3人でいくかい?」
「Ok。たまたまだったが、手を組むか」
「なら、囲むぞ」
3人は、今手を組んだばかりとは思えない程の連携で、賢也を3方向で取り囲む。しかも、全員がお互いの射線軸から外れている。かなりの場数を踏んだいいハンターと思われる。
「行くぞ!」
1人の合図で3人が一斉に銃を撃つ。2射目からは、微妙にタイミングをずらしてきた。賢也は初弾は躱し、次弾からは剣で弾き耐えていた。
1人の弾が切れる。カートリッジを交換しようとした瞬間を賢也は逃さず、一瞬で距離を詰め、斬ろうとしたが3人の攻撃を見ていた男が戦いに介入してきて、カートリッジ交換の手助けをした。
「おい、どういうつもりだ」
「悪いな。俺も参加させてもらうわ」
手助けをした男が途中参加を宣言し、賢也に尋ねた。
「構わないだろ?」
「構いませんよ。今のタイミングは絶妙でしたね。危うく弾が命中する所でした」
「剣で攻撃するんだ。弾切れの相手に突っ込むのは当然だろ。そこを狙っただけさ」
この男も手練れのハンターなのだろう。このタイミングで参加したという事は、賢也を倒せるかもという判断をしたに違いない。混戦になった方がやり易いか。
「何なら皆さんで一斉に掛かって来てくれていいですよ」
賢也が他のハンター達に呼び掛けると、
「駄目だ!」
先ほど参加した男が叫んだ。
「そいつの口車に乗るなよ。混戦を狙っているんだ。人数が増えれば、あいつの反撃のチャンスが増えるはず」
賢也の狙いを見事に言い当てられ、苦笑いをする。
「さぁ、続けようか」
最初の3人が再び銃を撃ち始めた。途中参加した男は撃ってこない。どうやら、賢也の攻撃に合わせて狙い撃つつもりのようだ。この4人を倒してもまだ44人残っている。力をある程度残しておかなければ、負けてしまうかもしれない。だが、この即席4人パーティーは侮れない。全力を出すしかないかと考えていた時、即席パーティー以外の男が介入し、流れ弾が1人の顔を掠め、攻撃リズムに乱れが生じた。その隙を逃す賢也ではなかった。流れ弾が掠めた男とは別の1人を斬り伏せた。
「な。お前!」
途中参加した男が邪魔をした男に向けて、銃を撃つ。ゴム弾は、男の額に見事に命中し、気絶した。
「くそ、上手くいけるかと思ったのに。邪魔しやがって!」
1人欠けたことで、攻めやすくなった賢也は、ここぞとばかりに一気に攻め込む。2人を倒し、即席パーティーは、途中参加した男だけとなった。
「降参だ。さっきの3人以外じゃ手を組んでも、お前は倒せそうにない。痛い目を見る前に場外に出るよ」
そう言って、場外に出ていった。残り43人。さっきの男が言うように残りは余り強そうに見えない。下位ランクのEやFランクといった戦闘経験の少ないハンター達のようだった。
「あんた何者だ。まだ俺と同じEランクだろ。何でそんなに強いんだ。戦い慣れしてるような感じだし」
近くの男が質問してきた。
「怪物との戦闘経験は、リアルだけじゃないですからね。VRでだいぶ経験積んでるし」
「VRってゲームだろ」
「えぇ。聞いた事ありますか?LSM(Legend of Sword and Magic)。剣と魔法の伝説っていうFD型VRMMOゲームです」
「タイトル位なら」
「そこでは、それなりの有名人だったんですよ、っと」
話している時に背後から近付いてきた男を斬り伏せる。残り42人。周囲の様子を伺うのを忘れずに続けた。
「ソードマスターって呼ばれてましたけど、ゲームしていた人しか知らないでしょうけど」
「LSMのソードマスターだって!」
別の男が話に加わった。
「あの、PvPで負けなし、各バージョンのラスボスを最速クリアしてきたソードマスター賢也なのか!あんたは」
どうやらこの男はゲーム内の賢也を知っているらしい。
「そうか。あの賢也か。プレイヤースキルが半端なかったが、リアルでもこんなに強かったんだな」
賢也の事を知っている男は腕を組んで、何か考え始めた。
「なら、1対1じゃゲームの時みたいにやられるな。おい、誰か俺と手を組む奴いないか?」
誰も手を組もうという者は出て来ない。
「誰もいないか。よし。なら、1対1で勝負だ。ゲームの時のようにはいかないぞ」
男は左手で銃を撃ちながら突っ込んで来た。右手には模擬刀を持っている。前に気絶させた短刀とは違う。賢也の使っている模擬刀と同じ長剣だ。
「剣を使うとは珍しい人だな」
人の事は言えないが、この予選で、今まで倒してきた者達は全員銃を使っていた。短刀を隠し武器に使っていたさっきの男とは違う。普通に剣で攻撃しようとしている。賢也は、ちょっと手合わせしてみるかという気になった。
男が剣の間合いに入ると銃を腰に戻し、代わりに短刀の模擬刀を左手に持ち、二刀で攻撃してきた。
「二刀流!」
右手で下から斬り上げ、左手で薙いでくる。
賢也は、斬り上げを躱し、横薙ぎを剣で受け止める。
「中々やるじゃないですか」
剣を合わせながら、男に話しかける。
「あのゲームをやってたら、やっぱり銃よりこっちだろ」
男がニヤリと微笑む。
「まだまだ、行くぞ!」
男が両手で次々と攻撃を繰り出してくる。その攻撃を賢也は容易く往なす。2人が斬り合っている所に、銃声が響く。2人の間をゴム弾が通過した。
「ちっ、おしい」
銃を撃った男が舌打ちをしている。
「邪魔するなよ!」
二刀流の男が怒鳴ったと思ったら、その男の横に既に賢也が立っていた。
「え?いつの間に」
「バトル・ロワイアルなんで、別に構わないですが、いい所だったんで邪魔しないで欲しかったですね」
そう言うと、斬り伏せた。これで残り42人。
「さて、続きをしますか?」
「いや、その前に」
二刀流の男は賢也の問いかけに答えながら、短刀を銃に持ち替え、後ろにいた男を撃った。
「邪魔者を片付ける!」
そう言うと、周りの男達に攻撃を始めた。
「それなら!」
賢也も他の男達に攻撃を始める。
「こいつら!」
「くそっ」
突然の2人の攻撃に反撃も出来ないまま、バタバタと倒されていく。
結局、残っていた男達は、2人(ほとんどは賢也が)に倒されてしまった。
「これで邪魔は入らないな」
二刀流の男がハァハァと息を切らしながら賢也の方を向く。
「じゃあ、ラスト行きますよ」
賢也が構える。二刀流の男も息を整え、構えを取った。
「ふぅ。あぁ。これで最後だ!」
賢也よりも先に男が動く。先ほどと同じで左右の剣を交互に振り、時には同時に振り次々と賢也に斬り掛かる。
「うぉー!」
凄い気迫の連続攻撃だが、賢也はその全ての攻撃を防いでいる。少しずつ男の攻撃のスピードが落ちて来た。
「そろそろ限界ですか?」
賢也が尋ねた。
「まだまだぁ」
男が右手の剣で突きを放つと、賢也はその剣を下から弾き飛ばす。弾き飛ばされた剣は、くるくると回りながら、宙を舞っている。
残った左手の短刀で攻撃の構えを見せる。賢也はその動きに合わせて朧を放った。初撃で男の剣を地面に叩きつけ、追撃の斬り上げを顎に命中させる。
顎に命中すると男は崩れ落ちた。
「い、今のは?上段斬りが来たと思ったら、顎が下から叩き上げられたぞ」
弱々しい声で、賢也に尋ねた。
「貴方に敬意を表して、剣技を使いました。朧という技です」
「そうか。ありがとう。君の勝ちだ」
そう言うと男は気絶した。これでBブロックは、賢也以外の者が、場外あるいは気絶をし、賢也の本選出場が決定した。
「Bブロック本選出場は、龍崎さんに決定しました!」
アナウンスの声が鳴り響く。
「よし。予選通過だ」
賢也は、予選会場を後にした。
「パパ!おめでとう」
会場から出ると輝とさくらが駆け寄ってきた。
「お疲れ様。予選突破おめでとう」
「ありがとう。明日からが本番さ。さぁ、ホテルに帰ろう」
家族揃って、ホテルへ戻ろうとした時、
「賢也!」
遠くから賢也を呼ぶ声が聞こえた。この声、気配は!
「師匠!いらしてたんですか?」
賢也を呼んでいたのは、剣十郎だった。
「あぁ。ハンターの武闘会をすると聞いたからな。お前が出場すると思って見に来たのだ」
「わざわざ、ありがとうございます」
「いや。それよりも私の元で修行していた時よりも、更に強くなったな。さっきの予選は、多少手を抜いていただろう」
剣十郎が賢也に尋ねた。
「手を抜いたって。師匠、力を温存していたって言って下さいよ。まぁ、そうですね。明日からの本選に向けて、全力は出さなかったです」
「ふむ。今手合わせしたら、負けてしまいそうだな」
「そんなこと、まだまだですよ。そうだ。良かったら、食事をご一緒にどうですか?」
「誘ってくれて有り難いが、家族の時間を大切にしなさい。私も、久しぶりに娘の家族と一緒に食事をするからな。明日、またお前の試合を楽しみにしておく」
そう言うと、剣十郎は離れた場所にいる娘の元へ引き返していった。
「また負けられない理由が一つ増えたな」
賢也も家族と一緒にホテルへと向かうのだった。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
今後もよろしくお願いします。
良ければ、感想や評価もよろしくお願いします。
今後の励みになるので。




