第三十八話『ギルと送電』
愚痴りながらも、オレは手際よくカメラのコードを、アジトのメインサーバー(ゴミ捨て場から拾い上げて無理やり魔改造したジャンクPC)へと繋いだ。
画面の中で、プログレスバーがゆっくりと進み始める。
『テスラコード・第1層:増幅セクター。原本の読み込みを開始します。……10%……45%……』
「なるほど。あんたたち、そういうプレイをしてたわけじゃないのね」
「当たり前だ。誰が好き好んでギルの裸体なんか……」
誤解が解けたのは良かった。だが、オレは昨日のことをありありと思い出す。あ~、今みんなといるし、昨日のことを謝りたいんだけど、言うタイミングねえ!!
当のリンコはそんなオレの気持ちも露知らず、昨日あれだけ酒を飲んだのに、オレより早く起きてショッピングに行っていたことに驚きを隠せない。すぐ酔うくせに、身体に残らないタイプ……。
『将来、絶対に酒にハマる体質』であることは容易に想像できた
「……」
ギルが無言で、PCを見つめていると、いつの間にか同期は完了していた。
「よし、アジトのサーバーへの同期はこれで完了だ。あとはお前が仕込んだあのデカブツが動くかどうかだな」
オレが視線を向けた先。
アジトの隅には、ギルが数日前から黙々と、文字通り不眠不休でビルドしていたジャンクパーツの塊があった。
銅線が幾重にも巻き付けられたコイル、王宮の廃棄物から盗み出した絶縁体、そして地下街のジャンクインフラへと電気を無線供給するための、不格好で巨大な『テスラ・アンテナ(送信機)』。
今、サーバーにマージされたギルのタトゥーのコードが、PCの基盤を通じてそのアンテナへと流し込まれていく。
「アンプも、スピーカーも、DJブースも……全部、王宮の盗電じゃなく、この足元から湧き上がる本物のフリーエネルギーで鳴らす、か」
画面の同期が『100%(COMPLETE)』になったのを見届け、オレは口元を不敵に歪めた。
さっきまで脳裏にへばりついていた、金鉱山のあの冷酷な王宮のシステム音声が、オレの記憶から完全に上書きされて消えていく。
「面白くなってきたじゃん! ギル、今夜の『フリーエネルギー音楽祭』、地下街のやつらがひっくり返るような爆音を準備しようぜ」
ギルはタバコの煙を天井の人工太陽に向けて静かに吹き出し、ジャンクPCのエンターキーをターーーーーンッと指で叩きつけた。
「ああ。ジャンクPCのエンターキーはもう押した。エーテルディスコにフリーエネルギーを送信済みだ。あとはお前が今日の箱をブチ上げろ。DJ REN」




