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アトランティスに転生したら現代よりも奴隷社会だった件  作者: 和子・F・和夫
第一章『狂った計画と政府の陰謀』

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第二十八話『読み込み不良』

 ガギィィィン!!! と、脳内空間の暗黒に鋭い破壊音が鳴り響く。


 オレが叩きつけたバールの衝撃によって、リンコの脳髄を縛り付けていたドス黒い洗脳データに亀裂が走り、一気に弾け飛んだ。さっきまで糸の切れた人形のように、全身の力が抜けていたリンコだったが、徐々に力を取り戻していく。


「リ、リンコ様になにをやった!?」


「安心しろ。オレのバールの用途は三つ。武器、インフラのハック、そんで人間に埋め込まれたインプラントを剥がすことだ」


「はぁ!? いんぷらんとぉ?」


 小首を傾げるセネカ。まあ、意味は分かってなくても、オレたちが別にリンコに危害を加えようとしてないことが伝わったならそれでいい。


 そんなことを思っていたら、ぴくりと、リンコの指先が動き、長い眠りから目を覚ました。


「──っ」


 同時に、大きく息を吸い込みながら弾かれたように目を開く。


 うなじからバールを離すと、空中に浮かんでいた無数のホログラムウィンドウが、ノイズと共に掻き消える。


「リンコ様!」


 セネカが心配そうに声を上げて駆け寄る。だが、上体を起こしたリンコは、まだ焦点の定まらない目で自分の両手を見つめ、激しく混乱したように頭を振った。


「わたし、は……。……違う。お父様は……メストルは、わたしの、本当の親じゃ……」


 ガワの偽装パッチを剥がされたことで、リンコの世界が、前提からガラガラと崩れ落ちていく。


 オレがその事実の重さに息を呑むと、ギルもセネカもそれを察知したのか、沈黙がアジトを支配する。


 だが、その沈黙を切り裂くように、不気味な音が鳴った。


「──ぁ、え……?」


 セネカの口から、歪んだ電子ノイズのような掠れた声が漏れる。


 見れば、セネカの華奢な身体が──まるで読み込み不良を起こした映像のようにパチパチと不気味に明滅し、向こう側の景色が透けて見えるほど【半透明】に揺らぎ始めている。


「……お前!? その身体……っ!?」


 オレが驚愕の声を上げ、思わず一歩踏み出す。誰も、今目の前で起きている現象の意味が分からない。


 リンコも顔を真っ青にしてセネカへ手を伸ばすが、その指先は、半透明になったセネカの身体をすり抜けてただの虚空を掻いた。


「えっと……これは何が起こって……」


 セネカ自身も、何が起きたのか全く分かっていないようだった。


 すり抜けたリンコの手を不思議そうに見つめ、それから、薄くなっていく自分の両手を何度も見つめ直している。手のひらを裏返したり、自分の腕を触ろうとしてはすり抜け、戸惑ったよう身体をもじもじさせながら、消え入るような声でリンコの顔を覗き込もうとしていた。


「セネカ! ……どういうこと?」


 リンコはこの状況を呑み込めないのか、自分の身体が無事だったことや目覚めたことよりも真っ先にセネカの元へ駆け寄っていた。


 誰も状況を飲み込めない。アジト全体が激しい困惑に包まれる中、リンコの瞳が、ハッと何かに気づいたように見開かれた。


 洗脳を剥がされ、空白になった脳内メモリの底から、バラバラだった記憶のピースが急速に結びついていく。


「お父様に育てられて……そのあと、わたしは捨てられて……。それから、わたしは奴隷市場でセネカと……」


 リンコは、半透明になっていくセネカの顔を、戦慄に震えながら見つめた。


「メストルがお父様じゃないなら……あの人がわたしを捨てた事実もないなら……。わたしは、どこでセネカと出会ったの……? もしかして、この記憶の全部が……っ!」


 そういうことか。


 リンコは偽の父親に捨てられたという記憶があって、そのあとにセネカと出会った。その出来事──原因と結果のタイムラインが消失してしまったせいで、セネカの存在を疑い始めている。


 観測者であるリンコの記憶の前提が崩れたことで、セネカという少女の存在確率そのものが、世界から消去されようとしている。


(──チッ、胸クソ悪いバグが出やがったな……!)


 状況が掴めず消えかけている少女と、残酷な真実の輪郭に気づき始めて絶望する女の子。こんな最悪な画面、一秒だって見ていたくない。


 何が王宮の最高機密だ。何がSSS級の暗号ロックだ。一人の人間の存在すらまともに定義できないロジックなんて、ただのクソシステムでしかねぇだろ……。


 オレは火花を散らすバールを、指の骨が鳴るほどの力で強く、強く握り直した。


 初めまして。アト転の作者『和子F和夫』と申します。ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございます。初めての『あとがき』はセネカが半透明になったあたりで書こうと思っておりました!


 書き続けた先の展望として、書籍化、コミック化、アニメ化、そしてゆくゆくは映画化……。本気で狙っております!! 

 そのため、まずは『なろう』にてランキング入りが目標です。もし読んでくださって面白いと思った方、アト転がアニメ化してキャラクターたちが動いてるところを見たい! と思った方は迷わずブックマークといいねを付けまくっちゃってください! お願いします(土下座)!!


 アト転がランキングに乗りやすくなります!!


 さて、第一章はこれにて完結でございます。


 次回は、第二章 シュレディンガーのサーベルタイガー編です。


 それでは、アト転を今後ともよろしくお願い致します。

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― 新着の感想 ―
洗脳を解除したことで、リンコ自身の記憶だけでなくセネカの存在まで揺らぎ始める展開に驚きました。単なる洗脳解除では終わらず、「記憶」と「存在」を結びつけた設定がとても印象的です。最後にセネカが消えてしま…
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