第3話:交錯する手がかりと、闇からの警告
#サイコスリラー #都市伝説 #ネットストーキング #大学の闇 #復讐劇 #国際陰謀 #泣けるホラー #サスペンス
「ただの迷子扱いだと!? ふざけるな!」
浅草寺近くの交番の中で、私の怒号が響いた。目の前にいる中年警察官はため息をつき、パニックになった外国人観光客をあしらうような冷めた目を向けている。流暢な日本語で、クロロホルムの匂いや落ちていたキーホルダーのことを何度説明しても、彼らは「妹さんはただの家出か、どこかで遊んでいるだけでしょう」と取り合わない。この官僚的な遅さが、私の血を沸騰させる。
警察を待っていては、エミは二度と戻らない。
その瞬間、重い罪悪感が私の胸を押し潰した。エミはガジャ・マダ大学(UGM)の医学生だ。我が家の自慢であり、将来の医師として輝かしい未来が約束された宝物だった。インドネシアの両親は、この旅行の間、エミの安全を兄である私に託したのだ。もし彼女の身に何かが起きれば、私は一生自分を許せない。
今の私に残された唯一の希望は、東京大学(東大)への留学時代に築いた、かつての仲間たちのネットワークだけだった。
一時間後、私は凍えるような冬の夜風を切り裂き、池袋にある閑静な地下カフェへと向かった。薄暗い店の隅で、二人の少女が不安そうな顔で私を待っていた。
かつて私の地方方言や古典研究を手伝ってくれた文学部の琴葉朱里と、コンピューターの天才である情報理工学部の鈴木詩織だ。
「エドさん! エミちゃんに一体何があったの!?」
朱里が震える声で私を迎えた。
私は一刻を争う状況を説明した。詩織は多くを語らず、すぐにノートPCを開くと、その指を恐るべき速度でキーボードの上で走らせた。彼女が狙ったのは、突破不可能な警察のメインシステムではなく、浅草寺の脇道にある古い雑居ビルやコンビニのクラウド型防犯カメラの脆弱性だった。
「見つけた」
地獄のような十分間の後、詩織が短く呟いた。
彼女が再生したのは、わずか10秒の動画だった。詩織自作の画像鮮明化プログラムによって、画面を覆っていた線香の煙が徐々に薄れていく。そこに映し出されていたのは、意識が朦朧とし、頭を垂れ下げたエミの姿だった。黒い帽子を被りマスクをした男が、彼女を支えるようにして黒いワンボックスカーへと連れ込んでいく。
詩織がいくつかのキーを叩くと、その車のナンバープレートが鮮明に浮かび上がった。
――『練馬 300 〇 〇-〇〇』。
「これだよ、エドさん! これを警察に届ければ――」
朱里の言葉が遮られた。
――ブツッ!
詩織のPC画面が突然赤く点滅した。彼女の追跡プログラムが完全にロックされる。そして、画面中央に不自然で無機質な文字列が浮かび上がった。
『これ以上踏み込むな。死にたくなければ。』
詩織の顔から血の気が引いていく。「エドさん……逆探知された。誰かが……誰かが今、私たちを見てる。IPアドレスを特定されたわ」
朱里の身体が恐怖で激しく震え出した。二人の目に宿るリアルなパニックが、私にも伝わってくる。彼女たちは、これから長い学問の未来がある日本の一般市民だ。こんな危険な犯罪組織に関われば、一瞬でその人生が崩壊してしまう。
「朱里、詩織……パソコンを閉じろ。家に帰るんだ」私は無理に声を絞り出した。「ナンバーを教えてくれてありがとう。あとは、私がやる」
二人は申し訳なさそうな、それでいて圧倒的な恐怖に支配された目で私を見つめた。何度も謝罪の言葉を口にしながら、彼女たちは私を一人残して、足早にカフェを去っていった。
池袋の華やかな夜景の中、私は本当の「孤独」に取り残されていた。警察もいない、仲間もいない、異国の地でただ一人。手元にあるのは、犯人の車のナンバーが書かれた一枚のメモと、胸を焦がすような罪悪感だけ。
例えそこが怪物の巣窟であろうとも、私はあの一台のワゴン車を這ってでも追い詰める。
詩織のサイバー支援によって黒いワゴン車のナンバープレートを特定したものの、謎の警告によって朱里と詩織は安全のために手を引かざるを得なくなりました。これでエドは、本当に東京で一人きりの戦いを強いられることになります。
あのナンバープレートは、エドをどこへ導くのか?
妹を救うため、素人探偵(アンプロ探偵)が下す決死の決断とは。
次回、第4話「深夜の追跡、あるいは忌まわしき宿へ」に続きます。
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