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第14話:無菌室の覚醒、ヨグヤカルタからの凶報

#サイコスリラー #都市伝説 #ネットストーキング #大学の闇 #復讐劇 #国際陰謀 #泣けるホラー #サスペンス

――ピッ、ピッ、ピッ……。


心電図の単調で無機質な電子音が、私の意識をゆっくりと現世へと引き戻した。私は極めて緩慢に目を開けた。視界はまだ白く霞んでおり、清潔な白い天井がぼやけて映る。鼻を突いたのは、病院特有の強烈な消毒液の匂いだった。


全身が硬直したように重く、分厚い白い包帯で固められていた――骨折した左肋骨から、暴漢の刃や斧に抉られた腕、太ももに至るまで。私の腕には点滴の管と、新しい生命を送り込む輸血パックが繋がれている。豊島病院の窓の外では、東京の初雪がなおも激しく降り続いており、街を冷徹な白で埋め尽くしていた。それは、暖房の効いた室内とはあまりにも対照的な極寒の世界だった。


病室の隅に設置されたテレビモニターは、NHKや朝日新聞の緊急報道(ニュース速報)を終日流し続けていた。


画面のテロップには、巨大な文字でこう躍っている。

【池袋の戦慄:キミ旅館で外国人観光客を狙う秘密サークルが摘発】

画面には、雪に覆われ始めた古い宿の前に張られた黄色の規制線が映し出され、続いて、ガジャ・マダ大学(UGM)のアルママテルを身に纏って微笑む、犠牲となったエミの遺影が映し出された。この報道は日本国内に凄まじい衝撃と大衆の怒りを巻き起こしていた。自国の治安と名誉を重んじる東京の市民たちは、街頭で大規模な抗議デモを開始し、この非道な組織を糾弾すると同時に、私たち二人の外国人留学生への正義を求めて声を上げていた。


――ギィィ。


二人の制服警官が厳重に警備する病室の扉が静かに開いた。神葉朱里と鈴木詩織が、幽霊でも見るかのような足取りで入ってきた。医療機器の管に繋がれた私のクリティカルな姿を見るや否や、二人の日本人少女の涙が、この無菌室の中で一気に決壊した。


詩織はその場に崩れ落ち、激しく嗚咽しながら床に何度も頭を擦りつけた(土下座)。あの夜、恐怖から一度は捜査を拒絶し、私を一人にしてしまったという圧倒的な罪悪感に苛まれていたのだ。「ごめんなさい、エドさん……。あの時、私たちがあなたを一人にしなければ、あなたもエミちゃんも、こんな残酷な目に遭わずに済んだのに……」

朱里が掠れた声で 泣きながら、震える手で私の毛布の端を握り締めた。私はただ、力ない視線を彼女たちに送り、二人を責めてなどいないという意思を伝えることしかできなかった。


朱里と詩織が目を腫らしながら退室した後、病室は再び静寂に包まれた。規則的な心電図の音だけが、私に寄り添うように響いている。


しかし、その静寂は長くは続かなかった。先ほどから部屋の隅に直立不動で控えていた、駐日インドネシア共和国大使館(KBRI)の特別参事官が、私のベッドサイドへと歩み寄ってきた。彼の顔は紙のように真っ白だった。参事官は室内の扉を内側から慎重に施錠すると、衣服の内側から暗号化された秘密のタブレット端末を取り出した。


「エドさん」

参事官は、窓の外の吹雪の音に掻き消されそうなほどの低い声で囁いた。「警視庁(けいしちょう)はすでにキミ旅館の全ネットワークを制圧しました。あの夜に関与した富裕層、実業家、高官ら計14名の構成員は、すべて厳重な隔離独房に収監されました。宿の資産は差し押さえられ、日本の裁判所は即座に組織的計画殺人の容疑で極刑(死刑)の求刑準備に入っています。エドさんがクラウドに同期した音声データがある以上、奴らに言い逃れの余地はありません」


私は微かな息を吐き出し、未だに包帯で固められた胸の奥に一縷の安堵を覚えた。妹を殺した猟奇的な狂人たちは、ついに正当な報いを受けるのだ。


しかし、参事官が放った次の一言が、私の体内の残された血液を一瞬にして凍りつかせた。


「ですが……ジャカルタの国家情報庁(BIN)のサイバー部隊が、あなたがホテルの制御室を破壊するちょうど一分前に送信された、ある国際データ通信を傍受したのです」


参事官はタブレットの画面を私の顔の前に突き付けた。モニターに表示されていたのは、あのサークルが使用していた闇サイト(ダークウェブ)の通信ログの書き起こしだった。そこには、すでに「送信完了」のステータスとなった、自動緊急執行命令が刻まれていた。


標的は、もう無作為な外国人観光客ではなかった。そこには、明確に私の「実両親のフルネーム」が記されており、インドネシア・ヨグヤカルタのスレマンにある、私たちの生家の詳細なGPS座標が添付されていた。


逮捕直前、東京のサークルの首領が放った最後の指令書。


【残された医療用液体毒物を使用せよ。もしあの博士課程の男(エド)が東京で生き延びた場合、夜明けが来る前に、ヨグヤカルタの両親を偽装心不全の形で確実に抹殺しろ】


私は腫れ上がった目を限界まで見開いた。心臓が狂ったように激突し、隣の心電図モニターが異常な警告音を乱発し始める。私は無理やり身体を起こそうとしたが、砕けた肋骨からの凄まじい激痛によって、再び枕へと叩きつけられた。点滴の針が皮膚の中でズレ、私の鮮血がプラスチックの管を逆流していく。


東京の太陽は完全に沈んだばかりだが、ヨグヤカルタの現地時間は――今、午前三時。犯行予告の「夜明け」まで、あと数時間しか残されていない。


私は点滴の針から漏れ出た己の血で右手を真っ赤に染めながら、狂ったような力で参事官の胸ぐらを掴み寄せた。そして、怒りで燃え盛る眼差しで、掠れた声を絞り出した。


「スレマン警察署に連絡を……ジョグジャ(Jogja)の誰でもいい、連絡してくれ……! エミを誘拐させた黒幕は、日本人じゃない。奴らに指示を出した大悪党は――私たちの、同じ大学のキャンパスの中にいる!」


その言葉が私の口から放たれた直後、東京の無菌室の照明が不気味に二度、瞬いた。参事官の手の中のタブレット画面が突如として漆黒へと反転し、そこには私とエミが籍を置く、あの大学のロゴマークが浮かび上がった。そしてその紋章は、ゆっくりと、どす黒い赤色(血の色のグラデーション)へと染まって消えていった――。

東京の人間狩りサークルは日本の法律によって壊滅させられましたが、より巨大な陰謀の刃が、インドネシアの地で産声を上げました。スレマンにいるエドの両親に迫る「医療毒物」の暗殺計画。そして、その引き金を引いた黒幕は、同じUGM(ガジャ・マダ大学)の学内に潜んでいるという戦慄の事実!


豊島病院のベッドで瀕死の重傷を負ったエドは、数千キロ離れたヨグヤカルタの両親をどう救い出すのか? そして、キャンパスの闇に隠された裏切り者の正体とは一体。


物語はここから、一秒の猶予も許されない国際サスペンスの最高潮へと突入します!

次回、第15話「ジャワの地に迫る黎明の罠」に続きます。

エドの壮絶なる復讐劇の第ニ章を見届けたい方は、ぜひブックマーク登録と評価(★★★★★)での応援をお願いします!

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