武器持ってる子たちはなんで素直じゃないのよ
トモエとフードの男の間に割って入った女性は、しなやかな動きで男の腕を弾く。
「ぐっ……!」
ナイフが宙を舞い、石畳に転がる。
「王国を再び落とそうなんて、させはしない……」
その声は冷たく、しかしどこか品があった。
「ちっ……邪魔が入ったか!」
フードの男が叫ぶと、周囲の残党たちが一斉に武器を構える。
「女二人に、男が大勢なんて……カッコ悪いと思わないのかしらね」
トモエが呆れて口にした次の瞬間、女性の姿が、ふっと消えた。
「……え?」
トモエが瞬きをした時には、すでに残党の一人が地面に倒れていた。
「なっ……!?」
別の男が振り向くより早く、女性の足がその顎を蹴り上げる。
「がっ……!」
さらにもう一人が背後から斬りかかるが、女性は振り返りもせず、手首を掴んで地面に叩きつけた。
動きは静かで、無駄がなく、実力の差は圧倒的だった。
「ひ、ひぃっ……!」
残った数人は恐怖に駆られ、逃げ出していく。
「……“逃げ足だけ”は速いわね」
女性の背を見つめながら、トモエはぽかんと口を開けた。
「す、すごいわね……。ありがとう。助かったわ」
女性はトモエの方へ向き直ると、すっと片膝をついた。
「……名乗りが遅れて申し訳ありません。私は、王国を陰から支える影守……フェルナンと申します」
「あ、ああ。それはどうも……かげもりって、陰から……守ってるってこと、なのかしらね? それは大変そう」
フェルナンは深く頭を下げ、静かに言った。
「あの、女神様」
「は……? 女神? 私、が?」
トモエは完全に固まった。フェルナンは真剣そのものの表情で続ける。
「私は、王国を取り返す為、準備をしておりました。しかし……あなたは、たった数日で国を変えてしまった。そんな貴女に、私は……敬意を抱いていますっ!」
「敬意っ!? というか、ちょっと待って。女神って何よっ。私、柄じゃないわよっ」
「しかし、私は……影守として、王国に居る資格を失いました。出遅れ、何もできず……」
フェルナンは立ち上がり、背を向ける。
「ですから……私は去ります。最後に貴女を救えてよかった――」
「ちょ、ちょっと、待ちなさい!」
トモエはフェルナンの腕を掴んだ。
「なに勝手に話進めてるのよ。資格がないなんて、誰が言ったの?」
「え……?」
「良くしたいなら、今から手伝えばいいじゃない。一番いけないのは、勝手に思い込んで逃げることよ」
「で、ですが……女神様、私は――」
「女神じゃないって言ってるでしょ! いいから、ほらっ……行くわよ!」
「えっ、ちょ、ちょっと……!」
フェルナンが説明しようとするのを完全に無視し、トモエはその腕をぐいっと引っ張った。
「あんたも、かげ、もり?だか、何だか知らないけど、城の人間なんでしょ! なら働きなさい!」
「え、いや、それはっ…ですから説明したようにっ…! ちょっと、離してくださーーい!」
フェルナンは引きずられるようにして、トモエに連れて行かれたのだった。




