恥ずかしいじゃないの
街の掃除が終わってから数週間後。
街は依然と見違えるほど綺麗になり、人々の表情も明るくなっていた。
「トモエさん! 買い物ならうちも寄っててよ!サービスするからさ!」
「トモエさん!こっちも!」
「私の店も! もうタダでいいからさ!」
買い物に出るたび、トモエはあちこちで声をかけられる。
「活気が出てきていいことだけど……ちょっと恥ずかしいわね」
トモエは手を振ってごまかすが、街の人々は本気で感謝している。
そして更に、数週間後―――。
「……ちょっと、なにこれ」
城の前に建てられた巨大な布の覆い。
その下には、どう見ても“人型の何か”がある。
「トモエ様の銅像でございます!」
「やだっ! 銅像なんてそんなっ……!」
トモエは顔を真っ赤にして叫んだが、周囲の兵士も街の人々も満面の笑みだ。
「あなたのおかげで国が変わったんです!」
「感謝の気持ちを形にしたくて……!」
「だからって銅像はやりすぎよ!」
トモエが頭を抱える中、
少し離れた建物の影で、フードを被った男たちがその様子を睨んでいた。
「……あの女が、異人……」
「けっ、すっかり国を変えた英雄気取りか……」
「許せん……必ず始末する」
不穏な視線が、トモエへ向けられていた。
その日の午後。
トモエはいつものように街へ買い物に出ていた。
掃除が日課になった街は、以前よりずっと歩きやすい。
「今日は何作ろうかしらねぇ……」
トモエが献立を考えながら歩いていた時。
「……お前だな。異人と言うのは」
低い声が背後からかかった。
振り返ると、フードを深く被った男が立っている。
「異人じゃなくてトモエよ。それより、なんなのあんたは。怪しい格好して」
トモエが眉をひそめると、
男は無言で腰からナイフを抜き取った。
「……っ!」
その瞬間、トモエは気づいた。
いつの間にか、周囲を同じようなフードの男たちに囲まれている。
「な、なに……またこうなるのっ!?」
「覚悟しろ」
フードの男がナイフを構え、トモエへ向かって飛びかかる。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよぉぉ!?」
トモエが後ずさる――その瞬間。
「っ……!」
風を切る音がした。
トモエと男の間に、ひらりと影が割って入る。
長い髪が揺れ、鋭い眼差しがフードの男を射抜いた。
「……このお方は、殺らせない」
現れたのは――凛とした雰囲気を纏う、一人の女性だった。




