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familyーエルドラン編ー  作者: K.Dameo'n'AI


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6/22

散らかしといて何が王よ

医務室の空気が少し落ち着き始めた頃だった。

突然、廊下の向こうから怒鳴り声が響いた。

「どこだ! あの女はどこにいる!」

兵士たちがびくりと肩を震わせる。

扉が乱暴に開かれ、酒臭い男――王がずかずかと入ってきた。

「貴様! 勝手な真似をして……!」

王はトモエを指さし、顔を真っ赤にして怒鳴る。

「牢から勝手に出て、勝手に医務室を荒らし、勝手に兵を動かし……!

この国の秩序を乱す気か!」

「はぁ? あんたがそれを言うの?」

トモエは一歩も引かない。

「病人を放っておいて、酒飲んで暴れてる。あんたの方がよっぽど秩序乱してるわよ!」

「だ、黙れっ! 異人風情が……!」

王が怒鳴り、兵士たちが慌てて武器に手を伸ばす。

「今すぐ、その女を処刑っ――」

「待て」

低い声が医務室に響いた。


騎士団長だった。

王は振り返り、怒りのままに叫ぶ。

「貴様! 命令が聞こえなかったか!」

しかし騎士団長は動かない。

その瞳は静かで、どこか決意を宿していた。

「……この女は、王子の命を救った」

「だからどうした! 異人は異人だ! 処刑しても構わん!」

王の叫びに、兵士たちの顔が一斉に曇る。

騎士団長はゆっくりと王へ歩み寄った。

「……王。あなたは、先代の王を毒殺した疑いがある」

医務室の空気が凍りついた。

「なっ……!」

「王子を幽閉し、国を荒らし、兵を私物化し……

あなたの罪は、もはや隠しきれない」

「黙れ! 証拠はあるのか!」

「ある」

騎士団長は短く答えた。

「兵士たちの証言。医務官の記録。そして……あなた自身の行動が、何よりの証拠だ。貴方の今の姿を民が見て……許すと思うか?」

王は後ずさる。

「お、お前……裏切る気か……?」

「裏切りではない。私は“正しいと思ったこと”をするだけだ」

その言葉に、トモエは小さく頷いた。

「そうよ。やればできるじゃない」

騎士団長は王へ向き直り、静かに命じた。

「こいつを拘束しろ」

兵士たちは一瞬だけ迷ったが、すぐに武器を上げ、王へと歩み寄った。

「や、やめろ! 私は王だぞ! 離せ! 離せぇぇ!」

王の叫びは虚しく響き、兵士たちは淡々と彼を押さえつける。



医務室の空気が、ようやく静かになり、騎士団長は深く息を吐くと、トモエへ視線を向ける。

「……お前の言葉で、気が付けた」

「そう。よかったわ」

トモエはにっこり笑った。

「散らかった部屋を片付けるのと同じよ。汚いものは真っ先に片付けなきゃ」

トモエの言葉に兵士たちは、どこか救われたような顔をする。

それは、騎士団長も例にもれず、トモエに深く頭を下げた。

「……先の無礼、お詫び申し上げる。……誠に、申し訳なかった」

「最初は張り倒してやろかと思ったけど、もう、いいのよ。終わりよければね」

トモエは騎士団長の肩に手を置き微笑む。

「……異人。いや……トモエ殿。あなたには、礼も言わねばならない」

「いやぁ、礼なんていいわよ。私は私で思った事やっただけだし、あんた達が変わらないなら、あの男もろともあんた達を張り倒していたわ」

驚いた顔を上げた騎士団長は苦笑いをすると、まっすぐに彼女を見る。

「……私は、この国の騎士団長。レオン・グラスト という。以後、お見知りおきを頼む」

その声は、これまでより少しだけ柔らかかった。

「レオンね。覚えたわ」

トモエがにっこり笑うと、レオンはわずかに目をそらした。

照れているのか、疲れているのか、判断がつかない。

次にレオンは王子の方へ向き直る。

「王子……これまでの無礼、深くお詫び申し上げます。必要とあれば、私への処遇は王子にお願いしたい」

王子はゆっくりと身を起こし、弱々しいながらも穏やかな声で答えた。

「処遇だなんて、そんな……。あなたのせいではありません。僕への……処刑を延ばしてくれていたりと、陰ながら守ろうとしてくれていたのは、知っています」

レオンは拳を握りしめる。

「いえ……もっと早く動くべきでした。あなたを救う機会はいくらでもあったのに……結局は王の命令に縛られ、見て見ぬふりをしていた」

「それでも、今こうして助けてくれた。それだけで十分です」

王子の言葉に、レオンは更に深く頭を下げた。



そのやり取りを見ていたトモエは、ぽん、と手を叩いた。

「はいはい、そこまで。王子様が処罰はしないって言ってるんだから、しんみりするのはもうおしまい。あんたたち、これからが本番なんだからね」

「……これから?」

頭を上げたレオンは問う。

「そうよ。王がいなくなったんだから、これから大掃除よ」

トモエは王子を指さす。

「そして、あんた。しっかり食べて、元気になったら――」

にっこり笑う。


「正式に“王様”になるのよ」


王子は目を見開いた。

「……私が……?」


「当たり前でしょ。王子のあんたがやらなきゃ誰がやるのよ。この国の人たち、もう限界よ?」

王子はしばらく黙っていたが、やがて小さく頷いた。

「そう、ですね……分かりました。私が……この国を立て直します」

レオンも静かに頭を下げる。

「騎士団は、あなたに従います」

トモエは満足そうに腕を組んだ。

「よし。じゃあまずは――」

医務室を見回し、指を突きつける。

「掃除! 整理整頓! 病人を治すにも、国を正すにも、まずはそこからよ!」

「は、はいっ!」

兵士たちが一斉に返事をする。

王子は苦笑し、レオンは小さくため息をついた。


だがその表情は、どこか晴れやかだった。






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