そんなの、ないわっ……!
首輪に飛びついたトモエは、両手で黒い輪を掴みしめた。
「かったいわねこれっ……!」
全身の力を込めて引きちぎろうとする。
「恐らく黒曜石だ! 素手でちぎれるわけないだろ―――」
レオンが叫んだ、その瞬間。
「ぅぅぅりゃあっ!!」
トモエが天を仰ぎ、黒い破片が四方に飛び散った。
「ぇぇぇええええええっ!?」
レオンとフェルナンは目が飛び出そうなほど見開いた。
首輪を砕いたトモエは、笑顔で天を仰いでいた。
その姿はスローモーションで、“女神”という言葉が自然と浮かぶほど綺麗に見えていた。
「っ……ぐっ……!」
突然、レオンが脇腹を押さえて前のめりになる。
激痛が走り、膝が崩れそうになるのをなんとか踏ん張って耐える。
視線を向けると――血濡れた黒曜石の長剣を持つグランドがいた。
「…………」
その目は冷たく、まるで別人のようだった。
「……何故……だ」
苦痛に顔を歪めながら問うレオン。
グランドは淡々と答えた。
「油断は禁物だ」
そして――。
「…………」
長剣を両手で握り、振り上げる。
「ちょっと!なにやってるのよあんた!!」
トモエの叫びが響く。
だがグランドは剣を振り上げたまま、静かに言った。
「言っただろ、トモエ殿。剣を握る道を選んだなら立場は関係ない。死ぬときは……死ぬっ!」
剣が振り下ろされ、鮮血が飛び散った。
「レオオオオオオオン!!」
山頂に、トモエの絶叫が響き渡る。




