離婚より簡単よこんなの!
トモエが無事だと分かった瞬間、レオンとフェルナンの動きは再び鋭さを取り戻し、私兵たちを次々と斬り伏せていく。
「ふっ……では、私もやらねばなるまい」
グランドは静かに呟き、ドラゴンの隣へと歩み出した。
「ん~~~っ……っしょっ!」
トモエは驚くほど俊敏に、ドラゴンの背へ上半身を引っかけると、下半身をぐいっと持ち上げてよじ登る。
「はぁ~……ボルダリング。ボルダリングよ、これは」
ドラゴンの背に跨ったトモエは、気合を入れて深呼吸した。
そして――。
首輪へ向かうかと思いきや、逆方向へ進み始める。
「はぁ~……いくわよっ。って、ああっ――!」
腹部あたりに差し掛かった瞬間、ドラゴンは“何かが乗っている”不快感に暴れ出した。
巨体が揺れ、風圧が吹き荒れる。
「ったく! ちょっとはジッとしなさい!!」
トモエの本気ビンタがドラゴンの背に響いた。
「ごぉおおおっ……!!」
驚きと衝撃で、ドラゴンの動きが一瞬止まる。
「今ね!」
トモエはポケットを漁り、丸い容器を取り出すと、身を乗り出して逆さにぶら下がる。
「でりゃ!……よし! 最後!」
フェルナンは最後の私兵を倒し、ドラゴンへ視線を向けた。
そこで――。
「えっ……えぇええええええええええ!!」
フェルナンの目に映ったのは、ドラゴンの腹部で逆さにぶら下がるトモエだった。
「いやぁーーーー! お母さんが落ちるーーーー!!」
「落ちないわよ!!」
トモエは叫び返しながら、容器の蓋を開け、中の緑色のペーストを指ですくい取ると、ドラゴンの腹部の赤黒くなった部分へ塗り込んだ。
「足りないわね。やっぱ大きいわ、あんた」
トモエはぶら下がったまま作業を何度もペーストを塗り込んでいく。
「はぁ……これでいいわね。……守護神様なんだから、化膿なんかしたら大変だものね」
満足したトモエは、ようやく体勢を戻し、頭を振る。
「……あー、血が上っちゃった」
そして首輪へ視線を向ける。
「いい? もう少しジッとしなさい、よっ!!」
再びドラゴンの背にビンタを食らわせると、トモエは立ち上がった。
「もう、走った方が早いわ!」
ドラゴンの背を一直線に駆け、首輪へ向かって爆走する。
「せいっ……!」
レオンも最後の敵を倒し、ドラゴンへ視線を向けた瞬間――。
「えっ……」
ドラゴンの背を爆走して首輪へダイブするトモエの姿が。
「えぇええええええええええ!!」
レオンの叫びが山頂に響く。
その時だった、背後から、着実に忍び寄る影が。




