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familyーエルドラン編ー  作者: K.Dameo'n'AI


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2/22

なんなのあんた達

牢屋に放り込まれた瞬間、トモエは思わず鼻をつまんだ。

「くっさ……なにこれ、下水?」

湿った石壁。

床には黒ずんだ水たまり。

鼻を刺すような悪臭が漂っている。

「ちょっと! 人を入れる場所じゃないでしょここ!」

怒鳴ったところで返事はない。

兵士たちは乱暴に扉を閉め、鍵をかけると足早に去っていった。

トモエはため息をつきながら牢の中を見回す。

すると、奥の暗がりで何かが動いた。

「……え?」

目を凝らすと、そこには痩せた青年が座り込んでいた。

髪は伸び放題で、服はボロボロ。

だが、その瞳だけはどこか気品を残している。

「ねぇ……あんた、大丈夫?」

声をかけると、青年はゆっくり顔を上げた。

「あぁ……あなたも、捕まったのですか」

「どうも、そうみたい。スーパーで、大根選んでただけなんだけどね……」

「すーぱー……?」

青年は首をかしげたが、すぐに小さく息を吐いた。

「僕は……エルディオ。先代の息子です」

「……は? 先代? 前の王様ってこと?」

唐突な名乗りに、トモエは聞き返す。

「はい。父が……亡くなったあと、城内ではすぐ、権力争いが起きました。私は方々から邪魔な存在だったんでしょう。……身に覚えのない“謀反の疑い”をかけられ、何年もここに……」

「なんだか、よくありそうな話ね……」

「現王……モルフ。奴が国王に就いてから、国は見ての通り……」

青年は苦笑した。その笑みは弱々しく、どこか諦めが滲んでいる。

「……荒廃の一途って感じね」

「あなたは……見るからにこの国の人間ではなさそうですが、どこからお越しになったんですか?」

「わからないのよ。スーパー……って言っても通じないんだったわね。なんて言ったらいいのかしら……あの、まあ、お店? で、買い物してたら急にこの近くに来ちゃったみたいで」

「転移した、と?」

「そんな感じかしらね。なんかこう、ハッと気が付いたら来ちゃった感じ……」

トモエは腰に手を当ててため息をつく。

「しっかし、帰るにしても、まずここから出ないとねぇ……。」

牢の鉄格子を軽く叩くがびくともしない。

「残念ですが、無理です……。次に出る時は僕らに命はない……」

青年は静かに目を閉じる。

「物騒なこと言うんじゃないわよ。私は簡単には死んでやらないからね」

言いながらも、トモエも分っていた。ボロボロで汚く腐っている城とはいえ、この牢は強固で、脱出できるとしたら入り口のみ。そして、入り口扉が開く=死となるんだろう、と。












そして、数日が過ぎた。

牢屋の中は相変わらず臭い。

だが、トモエは妙に元気だった。

「あんた、最近顔色いいじゃないの?」

「そうですかっ? いやぁ、トモエさんのアドバイス通りしたら、ちょっと疲れ取れた気がしたんですよ」

「それはよかったわ。続けなさいよ。……で、隣のあんたは、ちゃんと告白できたの?」

「はい。彼女も俺の事良いと思ってたみたいで……」

牢の前には数人の兵士が集まり、トモエの人生相談を受けていた。

「よかったじゃないのぉ。前も言ったけど、男だ女だなんて関係ないわよ。同じ人間と考えて、自分がされて嫌な事、されて嬉しい事を考えて動けば何も難しくないわ」

「トモエさん!次、俺っ!俺の話聞いてよ!」

「いや、待てっ!次は俺だ!」

「はいはい。騒がないの。時間は腐るほどあるんだから。順番に聞くわ」

暗いはずの牢屋。そこには場違いな明るい空気が漂っていた。


「おい……」

そこへ、重い足音が近づいてくる。

「……何の騒ぎだ」

低くよく通る声。

兵士たちはハッと振り返り、慌てて敬礼した。

「き、騎士団長殿!」

「お前たち、警備はどうした。……なぜ、ここに集まっている」

「そ、それは……」

兵士たちは互いに目を合わせ、焦ったように口を開く。

「い、異人殿に……話を聞いてもらっておりました!」

「相談に乗ってもらって……」

「なんか……元気が出ると言いますか……」

騎士団長は無言でトモエを見る。

トモエは牢の中から手を振った。

「この子たち、色々溜め込んでるみたいだし、話聞いてあげるくらい、いいでしょ」

「……お前は、牢に入れられている自覚はあるのか」

「あるわよ。でも、暇じゃない。私なにも悪いことしてないし。思い返すことなんてないもの」

トモエは肩をすくめた。

「それにね、こんな城で働いてるあんた達の方が、余程疲れてる様に見えるわよ」

兵士たちは気まずそうに俯く。

騎士団長はしばらく黙っていたが、やがて小さく息を吐いた。

「……異人。お前の扱いについて、再度王に進言する」

「え、ほんと?」

「このままでは……色々と問題が起きそうだ」

騎士団長が去っていくと、兵士たちはほっと息をついた。

「い、異人殿……ありがとうございました……」

「お礼言われるようなことはしてないわよ。それより、あんたち、自分の身体を第一に考えなさい」

「は、はい!」

兵士たちが散っていく中、

牢の奥で青年が小さく笑った。

「あなたは……不思議な人ですね」

「そう? 至って普通じゃない?」

トモエは笑い返し、少し和やかな時間は過ぎていくのだった。






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