閑話休題 一休み
暇。暇。暇。
やる事が特段ない。実際は休む事なんだが、この環境で寝るのはキツイ。だから、小一時間ほどムバーの作業風景を眺めている。
「なぁ、お前の元いた所はどんなだった?」
腰を掛けるのに丁度良い大きさの石に座ってそう言った。先程まで何も喋っていなかったので自分でもいきなりだ、と思った。
しかし飽きるほどの退屈の中、考えてみればコイツらの事も、コイツらの世界の事を知らないなぁ、と気づいてしまえば止まらなかった。
「いきなりだね?」
「いきなりだよ」
「……んーわっちのいた世界かぁ。わっちの中にあるデータは少ないよ?」
「それでも良い、何か歴史とか、文化とか、飯とか、音楽とかでも、とりあえずなんでも」
「ではそうだなー………社会のことでも話そうか」
ムバーがその答えを出すまでの間は妙に長かった。しかし、そんなことは俺の内に膨らんだ期待に比べれば些細な事。気にも留めなかった。
「わっち、いや、我々の世界は君らより100年ほど先の文明レベルさ。この世のあらゆる事をロボが代わりにやる社会なんだ。政治から掃除までありとらゆることにね。もうお金なんて見なくなって久しいし、惑星間旅行が今の流行になってる」
「そりゃすげぇな夢の世界だろ!」
「ははっそうだろう。殆どの人々はその人生の大半を娯楽に耽っているね。人にとって楽な世界な事って事は間違いない。今もなおAIがイノベーションを起こしてるから、これからもっと便利になるだろう」
「もっと便利ってなんなんだろうな。ほぼ問題とかないだろ?」
「さぁ、その時になってみないとね。けれど大きな問題は今もあってね、人口減少さ。恐ろしいスピードで起こっていて、ちょっと大変なんだ」
そう喋るムバーは、やれやれと、ため息の音声を流した。けれどそうか、より進んだ文明でさえ人口減少とは夢もなくなるな。
「あ〜そうか、あるよなそういうの。俺の世界でもそうだし。ま、その調子じゃあ戦争とか起こらないか?いや…SAなんてモノがあるんだしあったのか?」
「……あ、あーーそう、だね……おっと、部品が、出来上がった。ヘルメの所に行こう」カチッ
「……おう」
あまり良くないものを感じて、それ以上の詮索はしなかった。
***
「GOOD!GOOD!パーツはそこに置いていけぇい!」
こちらはいつも元気いっぱいのヘルメだ。今は天井から吊るされた義手を遠隔で操作して、なんだか大きな装置を作っている。その組み立て作業を白色ライトが3方向から照らしていた。
装置を作るための素材はコンテナ内に積まれた義体やら通信機器やらの機械を分解して使っている。まったく、こいつも不思議だ。遠隔通信も、機械の設計も、人体改造も出来る。知識の幅が広く、そして深い。
「なぁ、お前の用途ってなんなんだ?」
「よくぞ聞いた!オレは軍用の装備だな。ただし特別性!戦場で生き残れるよう、医学、工学、情報学の最先端技術の詰め込まれた超高級品!のヘルメットだ」
軍用の……なるほど、だから義体から武器やらドローンやらがぎっしりと詰まったコンテナの中にいたんだな。
だが、アーマーなのは少し驚いた。ギアヘッドみたいな形はしていたが、実はヘルメットだったのか。
「ヘルメを付ける兵士の精神的負担がデカそうだな」
「それはその通りだが、だからこそそれに耐えうる人間が厳選されるわけだな」
「装備となると、君以外の別の部位も存在するのかな?」
「鋭いなムバーよぉ!その通り、存在してる。それぞれ、違う性格をしててなオレ同様かなりキレる。しかも全員装備すれば一個師団並みの力になっちまう!軍事上の理由で分散して運ばれているから、残念ながらこのコンテナにはいないが」
「なんだソレカッコいいな〜!」
すごい、知れば知るほど面白い。映画やアニメでしか見たことのないことが本当に起こっている。
ここに来てから、楽しみが無かったけど、これは良い。これからも細めに聞いてみることにしよう。




