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マスター・オブ・ザ・ギア【Ma$ter 0F da GEAR】  作者: ポリニンゲン
未知との遭遇
3/17

フラッシュ【HU1ash】

ゲ……ゲコ…コ


 ナマズ頭で青肌人型のナニカが背後で鳴く。その声は極めて蛙のソレと似通っていた。

 

 瞬間、息を呑む。

 距離は2メートルもない。

 ギャロリと目玉が俺を覗く。

 

「なっ!」ダンッ


「テツ!」


 逃げ出そうとしたが、足が上手くうごかずもつれて倒れてしまう——まずい。


 背筋に悪寒が走る。


 今、俺は震えているだろう。畜生——今だけは身体を置き去りにしたい気分だ。


 急いで振り返ると、既に陸にあがったナマズ頭が目に入る。


 いや、それどころではない! 頭から飛び込んできていたのだ!裂けるほど大きく開かれた口の中には鋭い歯がびっしり。


 そしてそれは大きく、確実に迫る。

 ゆっくりに感じる世界の中で思う。

 


 死



————ドドドドドド!


 その時、凄まじい射撃音が聞こえた。

それと共に、ナマズ頭の横っ腹から青い血が噴出する。


「ゲコッ!? ゴッ!」プシュ

 

 ソレはのけぞって数歩後ずさる。あばらが見えるほどガリガリのその胴体に、数個の小さな穴。


 音の方向にはムバー、レンズの上から短く細い筒が突き出ている。


「逃げろテツ! 今のが全弾だ、次は難しい!」


「くっ!」


 ムバーの言葉にハッとし、急いで立ち上がる。ナマズ顔は、体をくねらせ苦しんでいる様子。まだ死んではいない。


 一気に走って、ムバーと共に10メートルほど距離を取った。


「はぁはぁ!今のうちに行くぞ!」


「まて、ここは戦うべきだ」


「何言ってるんだ、お前全弾撃ったんだろ!どうして戦う必要が?!それに、なにがあるんだ!」


「ちょっとした実験だよ。ここで生きていくための。そしてわっちらにはコレがある」カチャ


 と俺に差し出したのは横に置いてあったアタッシュケース。思考がよぎる……俺は頭が湧いているかもしれない。確か、コレに関しておかしな事を言っていた。まさか本当にアレなのか?

 

「…本気か?」


「そうだ。ほら、ぼさっとするなよ。もうアイツが来る」


「ゲェーーーコォォ……ゲーコ」


 ナマズ頭はひどく猫背のままこちら体を向ける。生気なく、焦点もあわない魚の目だが、睨み付けられているように思えた。


 ナマズの口からは青い血の一筋が流れ出てる。だが傷口からの出血は止まり、さらにうねって塞がり始めている。


 恐ろしい程の再生力だ。確かにもう一回突進してきてもおかしくない。勘弁して欲しい。


「なぁお前を信頼していいんだな?さっさとどうすればいいか教えろ」


「おーけぃ。それじゃあアタッシュケースの底面をアレに向けるよう持ち上げてくれ。縦にね」


 言われた通りに腕を動かす。それは軽く、難なく持ち上げられた。


————ペチャ

 

 とナマズ頭が一歩。


「よし。これからソレを“撃てる”ようにするから、驚いて落とさないよう注意してくれ」

「……」


 疑問に思う間も無く【変形】が始まる。


 ケースが真っ二つに割れると中からは複雑な配線と小さな筒、幾つかの機器類が姿を表す。


 それらは直ちに“正しい”位置にギリギリと機械音を立てて配置されていく。小さな筒はたちまち『砲』へと変わった。機器は砲身を滑り上がる。ものの6秒程でその変形は完了した。


 その姿は正に異様。肩から手の甲にかけて、腕の外側に沿うように装着された砲身。砲後方に集中した機器。そこにだらんと垂れ下がった数多くの黒い配線。


「これは……なんだ……っは!」


「ゲコォォォオォオォォォ!」ベチャベチャ!


 しかし驚く俺を気にせず、腕をぶら下げながら突撃してくる。


———チュイン


 その音が鳴ると砲身から赤く細い光が照射される……なるほど照準とみた。


 震える手で光の先をソイツの胴体へと狙いをロック。最後に発射すれば…………


「どうやっt——」

「ボタンだ、取手にボタン!」

「これかっ!」カチッ



——————ヂューン!!



「ゲッ!」


アオき閃光、走る。


ナマズが宙を舞う。

その骨血肉が蒸気と化し、黒い煙を吹く。

風が草を薙ぎ倒し、川を真っ二つに割く。


 目がつぶれるほどの光量の後、焼け焦げた匂いが充満する中で目を開けた。見てみればソレの四肢だと思われる物が辺りに散乱していた。


「は、ははっ!やって、やったぜ!」ドン


 一気に腰が抜ける。信じられないようなまなこで、白煙を排出する武器を見つめた。夢を見ている気分だ。本当に……本当に。


「先に使い方を教えておくべきだったよ。すまない」カシャカシャ

 

 そう言ってムバーは散らばった残骸へと近づくと、何かし始めた。


「な、何してるんだ」


「解析だ」


「それも研究のため?」


「それもある、が、君が食べられるかどうかを見てるんだ」


 俺の思考が停止する。そうか、その、ソレを食べるという選択肢があったのか……もう一度思い出してみようアイツの姿を、案外食える見た目……な訳がない。


そう、そんな選択肢ない!無理だ100%!確かに腹は空いてるが、倫理観がなくなった訳ではない。


「……やめろ!食えたとしても食いたくない!」


「何故だ? 今はサバイバル………これも貴重なタンパク源では? それとも虫を食べたいかい? 虫料理も中々いけるが」


「いや、いるだろ……他に……なんか、動物。とにかく! 俺は食わないからな!

ぜ っ た い に!」


 10分後、そこにはガツガツと手足を食う男の姿があったという。


 その様子を上空から一台のレンズが覗いていることを知らず。

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