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マスター・オブ・ザ・ギア【Ma$ter 0F da GEAR】  作者: ポリニンゲン
未知との遭遇
2/16

ウォーク【WOCK】

 箱が変形……した!


「ちょ待ておい、何なんだアンタ!」ドン


 腰を抜かして一言。

 開いた口が閉じない。

 凄まじい変形を経て今、アームを振っているコイツは...!?


「見ての通りロボットだ。それで、わっち自身はAIというやつ。知ってるだろ?」


「エ、エーアイ? 今こんなに進化してるのか……いや、いや、そんなことないだろ嘘つくな! 第一お前、さっきまで俺のスマホから……そうだ! 分かったぞ、遠隔操縦だな?」


「と言われてもねぇ、わっちはただのAIであるとしか言えないのだ。ま、君のスマホにハッキングした事は謝るけどね。素直にごめんなさい、だよ」


「ハッキングゥ…?」


 ムバーは10本の足をムカデのように小刻みに動かし、俺の周りを徘徊はいかいする。機械の干渉音は小気味良く、一糸乱れぬ規則正しいリズムで足を動かしていた。

 そして、ピタリと止まり、その黒いレンズを俺に向ける。


「まぁまぁまーまー、まずは自己紹介からだ。わっちのことはムバーと呼んでくれ。そして、君のことはテツと呼ばせてもらうよ」


 テツ、テツヤのテツ……か。子供の頃に呼ばれていたあだ名。こんな所で呼ばれるとは。


「クソッ ホントなんなんだよアンタ」


「さっきの説明もう一回するかい、テツ?」


「そういうことじゃ……いいや、もう」


 コイツはあまりに怪しすぎる。やっぱり怪物の一種なのか……? だが、今の状況はとりあえず、コイツとお話しするのが賢明だろう。


「……えとそうだな〜まず、ここが何処か分からないとか言ってたな。どうやって来たのか聞かせてもらおう?」


「それが、道を歩いていたら突然落下してね。一瞬暗くなったと思ったらこの森に居たんだ。つまりなぜここに居るのか、わっちにもさっぱり分からないのだ」


「……俺もいつのまにかここに居たから似たようなもんだな」


「そうさ」パカッ

  

 するとムバーの側面から何かが上空に飛びだした。

 その小さな黒い点にしか見えないものが、真っ直ぐ上に上昇していく。静かに、迅速に。

 

「?」


「小型の偵察機、ドローンってやつさ。ここら辺の地形を見ておきたいんだ。それに、テツもだいぶオツカレだよね?だから、水場も探そう……お、そう遠くない所に川があるじゃないか」


(偵察機……なんて奇妙なんだ。本当にAIなら軍事用か?)


 いや、今は考えるのはよしとこう。ここでは常識は通用しない。


「じゃあ案内してくれ」


「おけぇい!」


「……調子の良いやつだなアンタは」


 こうして一人と一機は歩み始めた訳だ。


 チラチラと木漏れ日が頭を撫でる。どうやら日が昇ってきたようだ。この大地をただ少し暖かくしてくれる。冷たい風は、今は来ないだろう。


 さて、俺は見てきたものを全て洗いざらい吐いた。といっても来たばっかなので言えることは少なかった。


 対してムバーはここに来て3日目だと言う。

 あの箱の状態でずっと居たらしい。


「わっちはAIだよ?指示がなければ動かない」


 などと、言っていた。しかし謎にカメラだけをオンにし化け物の観察、解析もやっていたそう。


 曰く「生物学における重大な発見になるかもしれない」のだと……さっき帰らなくても良いとか言ってたが、思いっきし帰る気満々じゃねぇか、と口から出そうになった。


 途中、例の如く怪物を見かけたが、その時もじーっと様子を眺めていた。


 さてお喋りも疲れてきた時、俺たちはまた奇天烈きてれつなものを見つけた。


 それは地面にポンと乱雑に打ち捨てられていた、黒く光沢があるアタッシュケースだ。中に金でも入ってそうな。長らく置かれてたのか、土や葉におおわれている。


「また変なものが落ちてるな?中に何か良いものが入っていればいいが……?でもおかしいな、留め具がないぞ?」


「…」


 アタッシュケースの口を無理やり開けてみようとするが、残念ながら固く閉ざされていた。ムバーは何も言わない。


「開かないな」


「それは[SW-A(スウィン-エー)]だね。ただの荷物入れじゃない」


「なにそれ」


「武器だよ。電子を亜光速まで加速して打つ銃。光線銃っていうか、そんなもの」


「はぁ……それは……えとなんだったか……いわゆる、荷電粒子砲だろ? フィクションだ。からかってるのか?」


「いや、大真面目さ。確かに、君に馴染なじみはない。だが、これは君とわっちを守ってくれる。信じてくれ」ガチャ


 と言って、アームを器用に扱い、こちらにアタッシュケースを差し出す。


「はぁ……」


 ケースは持ってみたところ、思ったよりも軽かった。これなら持っていけるが……

 レーザービームが出る? いやそんなわけない。せいぜい投げつけておどかすだけだ。


 なにか分からないが、疲れた。とにかく水を飲みたい気分だ。

 

 そこから少し歩いていくと小川に到着した。驚くほど透明な水が、滑らかに流れている。川の匂いが鼻を突き抜け、爽快だ。


 早速さっそく川に口をつけようとした俺を、ムバーが後ろから軽く叩く。


「知らない場所の川水は生で飲んではいけない。腹を壊しては、わっちじゃ治しようがないよ」


「……わかってるって」


 ムバーは何処からか折り畳まれた金属製のチップを取り出した。それは、即座にコップの形へと変形し、そのコップで川水を煮沸しゃふつした。


「冷たい水が飲みたい」ゴクッ


 文句を言いながら飲むも、渇いた喉に水分が染み渡る。極上だ。


「……近くから信号が出されている」


「なに? 信号って、助けが来てくれたのか?」


「さぁね。けど、救助信号というのはマトを射ているかも。ずっと一箇所から動いていないようだし」


「……案外お前みたいな奴かもしれないな。んじゃ後で行ってみるか」


「おけぇ————」


バシャーン!!


 突如、川が破裂したように飛沫しぶきをあげる。急ぎ振り返るとそこには……


ゲ ゲ コ ゲコ


 ナマズ頭でヒトの形、青い肌のナニカ。


 それが、川の中で立ちすくんでいた。

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