ダメージ【D∀Meg】
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無機質な駆動音が真っ暗な洞窟内に響く。
それは緑と青の光の点を点滅させて、何かを運んでいる。
やがて来るであろう客人へのもてなし。
それを前もって準備しているのだ。
***
「で、お前は結局何なんんだよ? 流石にあんな武器現代の技術力じゃ再現不可能だ。なんで知ってるし、なぜ使える?」
「まぁ、そうだね」
川沿いでの一幕。仕留めた化け物を貪り食い、煮沸された微妙な味の水を飲みながら問う。
この場所やこのナマズも不可思議だが、ムバーもそうだ……先ほどはコイツの正体を探るのはやめようとした。だがあんなもの見せられたら流石に聞かざるおえない。
「……わっちがAIでこの森に迷い込んだ事は本当。けど、スマホのデータを探っていた時、気付いたんだ。わっち"ら"と君"ら"は全く違う。ほんと言語も文面も“色々”……わっちからしたら、君の方が不思議さ」
「どういうことだ?」
そう言うと、ムバーは足をわしゃわしゃ動かしながら喋る。どこか落ち着きのない様子だ。
「これは、フィクションみたいな話だけれも、わっちは君とは別の文明みたいなんだ」
「は?」
突飛なことを言われて、脳が停止する。別文明?なんだ?いきなりバグったのか?
「じゃあなんだ? アンタ、宇宙から来たエイリアンってことか?」
「さてね。わっち自身、いきなりここに来たし。もしかしたら平行世界という可能性もある。どちらにしても、正しくはエイリアン"ズ"だろう。君の地球には今まで見てきた生き物はいたかな?」
「いや………いるわけない。ここがもう現世じゃない所って事は分かるよ」
「だろう?つまり分かりやすく言えば、二つの地球……二つの世界から一人と一機、この《《異世界》》に迷い込んだんだ。何故かは、分からない」
話は少し複雑気味だが、俺は妙に納得した。
そんなことあるかよ……と平時なら言うところだが今は別。今さっき打ったレーザー、、、完全なるオーバーテクノロジー。秘密裏に開発されていた、なんてのより別文明の未知の技術の賜物と言われた方が分かる。
まぁそれに、ムバーが別世界の住人というならあの不可思議な機能も多少は理解できる。しかし一番気になるのは……
「……アンタ、目的はなんだ?」
「テツを守って生きて帰らせること。それ以外ないよ。再三言うけどわっちAI、感情なし」
「そうか……」
どうも信じがたい。だが今知る事は不可能か……
「大体わかった。再度確認だが、あの武器はアンタの文明の武器なんだな?」
「そうその通り、あれは軍用の武器SW-A、通称SA。本来厳重に保管されている代物さ。わっちと同様に、ここに来たんだろうね」
「そうか...他の武器が落ちてる可能性は?」
「大いにあるだろう」
「そいつらも拾って使えれば生存確率はぐんと上がる。その……信号だったかを辿ればあるかもしれないな」
「それに、さっき君が言ったように、わっちみたいな有能ロボットがまたいるかもしれない。さぁ行こう、テツ」ガチャ
「自分で言うのか……」
と、俺らは再び森の中へ機械音を鳴らしながら進んでいった。片手にはアタッシュケースに戻ったSAを握って。
***
前をムバーが歩いていて、俺はその後ろをついていく。森の中の気温が高くなってきた。湿度もそこそこ。額に汗が浮かび始める。
気は抜けない。ここでは虫さえおかしい。さっきなんか髑髏のてんとう虫を見た。なにをされるか分からない。
「止まって、敵だ」
「……」
俺たちは身を屈め、茂みに隠れる。30メートルほど先には、木彫りのクマが歩いている。口の周りには血肉がベッタリ。鮭を食ってきた訳じゃなさそうだ。
幸いこちらには気付いていない様子。いつでも撃てるよう、SAの取手を強く握りしめる。
しかし、そのまま待っていると熊は4本の足で立ちながらその場で動かなくなった。まるで本物の木の彫刻のようにピクリとも動かない。
辺りの虫の音、風の音も、その時止んだ。
あんな風に身体が固まるとは。睡眠とかか?となると、これは通過するチャンス?いや、、、だが、もしかしたら?
「……」
俺はおもむろに、静かに、ゆっくりと構える。
「何をしてる? 下手に刺激をしては——」
「いや、展開してくれ。別に撃つわけじゃないが少し不安でな。あの熊もしかしたら【警戒】してるんじゃないかなと」
「バレてる様子はなかったけど」
「そう……だから、俺たちじゃない、違うものに対して……だと思う。勘だがな」
「そうか。人間の勘は割と鋭め、というデータがある。なるべく、静かに展開させよう」
ゆっくりと、SAが変形する。
————ゴゴゴゴゴ
その時、地面が少し揺れた。そして、【それ】に熊も、俺らも気づいた。それは地面から顔を出した。目の焦点が合っておらず眉がない、天を仰ぐ巨大なヒトの顔を。
ギロリ
デカい顔の眼が動き熊を捉える。木彫りの熊は、身体を瞬時に動かし、こっちへと走ってきた。その後ろを埋まった顔が地面を裂きながら追う。
両方ともかなり速い。判断する時間はなかった。
「っ!」
照準を合わせようとする。だが二体、それも走っている。これは難しい!
でも……もう距離的にやるしかない。
——————ヂューン!!
蒼い閃光が走る。
しかしそれは…………
「外れた!」
ここで外すか! 宇野哲也!
そう、ビームは側の森を焼き切るのみだった。
「テツ!」
自罰の時間もなく、迫り来る脅威に全身の細胞がうそぶく。
—————ハシレ!
「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「テツゥ!」
走る走る走る。
走り始めて少し経てば後ろから、血飛沫が飛ぶ。俺を抜き去るように、前方に熊の首が飛んでいく!来てるのか!?
————ダッダッダッダ!
後ろなんか見るな! 走り続けろ! まだ死にたくない!
「はぁはぁっ!」
息が切れる。体力も切れる。全力疾走には慣れていない。一体この足場の悪い場所で何メートル走った?
「あっ」スカッ
地面を踏もうとする足が、地を捉えていない。下を見るともう既に俺は、大きく開かれた口の真上に………
——グシャッ
目の前が暗い。体が寒い。肌の感覚がほぼ無い。一体俺はどうなったのか。だが、何かに揺られているのが分かる。それは激しくて……早い。
その時、微かに誰かの声が聞こえた。
………たす……つうしん……つな……
そ…………だれ……あ……わ……た
……よう………ぎたい………そ………
………しゅじゅつ………




