雑用ギルド
一章完結までは毎日投稿できそう
翌朝、ハンスの店の2階で目覚めた。早々に街へと繰り出していった。当然、ハンスに対するロックオンは解除していない。同時に二人までしか指定できない貴重な枠を一つ潰すことにはなってしまうが、同じ家で生活することになるのだ。完全に信頼できるはずがないからだ。
俺が向かったのは、ビリーから吐かせた場所にある【仕事斡旋所】−−通称【雑用ギルド】だ。
小説にあるような【冒険者ギルド】ではない。食い詰めた底辺労働者が日銭を稼ぐために仕事を探す場所だ。
「……トキです。仕事の斡旋をお願いします」
俺は窓口で、そう声をかけた。
♢♢♢
それから、1ヶ月が経過した。
俺は雑用ギルドを通じて、ひたすら肉体労働をこなす日々を送っていた。
下水溝の泥さらい、荷馬車からの荷降ろし、建築資材の運搬など。キツかったが日本でバイトを3つ掛け持ちして、死ぬほど働いたときに培ったガッツでなんとか頑張った。筋肉がちょっとついたのは嬉しかった。
もちろん働いていただけではない【言霊記録】の実験・検証も行った。
【虚偽感知】は相手が嘘をついているとゾワゾワした感覚が襲ってくる。【虚偽制裁】はどこが嘘か意識しないと発動できないので自力で何が嘘かを見極めなければいけないところがネックだ。
ちなみに、この1ヶ月間、ハンスから1度も嘘をついている感覚がしなかった。
(気味が悪い。嘘をこれっぽちもつかない人間など居るわけがないのに…)
そう思ったが実際、嘘はついていないのでハンスになにかすることはできない。
真面目に働き続けていたからか、ギルドの職員にも顔を覚えられ、すっかり馴染んでいた。
そんなある日、ギルドの窓口で職員の男が一枚の依頼書を差し出してきた。
「おい、トキ。お前にぴったりの仕事があるんだが受けてくれないか?貧民街にある孤児院の修繕だ。お前この前他の所で修繕の手伝いしてたからできるだろう?道具は支給するからよ」
「……わかりました。やらせてもらいます」
雑用ギルドで貰った道具袋を肩に担ぎ、地図を頼りに孤児院に到着した。
孤児院は壁のあちこちがひび割れ、屋根の瓦が何枚か剥がれ落ちている。
(……想像以上にボロいな。)
作業を始める前に、先ずは敷地にいる人間に挨拶をしようと思っていると−−
「あ、修繕の依頼を受けてくれた方ですね!ありがとうございます!」
不意に、透明感のある、明るい声が聞こえてきた。地図から顔を上げると、孤児院の玄関から一人の少女が小走りでこちらに向かってくるところだった。
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