無名の秤
ご都合主義は嫌い…でも避けられないジレンマ
扉を開けるとカランコロンと安っぽい鈴の音が響く。店内の空気はカビと古い鉄の匂いが混ざり合っていた。
薄暗いカウンターの奥から現れたのは、熊のような体躯の、片目に眼帯をつけた厳ついオヤジだった。こいつがビリーの言っていた店主のハンスだろう。盗品とかでも買い取る店にふさわしい、裏社会の人間と言う感じだ。
「あの……この服を買い取ってほしいのですが」
そう言いながら俺はハンスをロックオンした。
(よし、これでこいつが嘘をつけば罰を与えられるな)
俺が学生服を指さすと、ハンスが鋭い目をさらに細め、じっと俺を睨みつけてきた。その瞬間、肌がヒリつくようなプレッシャーが店内に満ちる。
「おい、その服、異世界の品だな?どこで手に入れた?」
地響きのような低い声。異世界の品だと見破られた驚き、目の前の強者への恐怖。パニックになった俺は最悪の方法を取ってしまう。
「いや、これは…違う……」
焦ったせいで咄嗟に言い訳を口にしてしまった……
その瞬間、俺の頭が内側から爆ぜたような痛みが生じる
『嘘を検知しました。【因果応報】を発動します』
「あ、が、あァァァァァァァッ!」
視界が真っ赤に染まる。頭を激しい業火で焼かれるような、のたうち回るほどの激痛。
自分のついた、ついてしまった嘘に対するペナルティ。
俺は床に倒れ込んだ。そんな俺の脳内に無機質なシステ厶音が響渡った。
『条件を達成しましたので言霊記録のレベルが上昇します。現在レベル2』
【条件:ロックオン、虚偽制裁、因果応報を1回以上発動する】
『ロックオン上限人数が2人になりました。【虚偽感知】を習得しました』
【虚偽感知】ロックオンしている相手が嘘をついたときなんとなく嘘をついたとわかる
涙とあ冷や汗で床を濡らしながら、俺は魂に深く刻み込んだ。
二度と、絶対に、どんな状況でも、嘘をつかないと。
(まあ、禍転じて福となす、だな。条件達成でレベルアップか)
痛みが引き、そんなことを思った俺の視界に、ドタドタと慌ててカウンターから飛び出してくるハンスの巨体が見えた。
「おい、ボウズ、大丈夫か!?しっかりしろ!」
その顔には、先程の威圧感は一切なく、本気で心配しているように見える。
「ちょっと、脅しすぎたな……すまなかった。とりあえず、水でも飲んで落ち着け。ああ、安心しろよ毒は入れねぇからな」
そういってハンスはカウンターの奥から水をもってきて俺に手渡した。
お読みいただきありがとうございます。
ご都合主義は嫌い…でも避けられないジレンマ




