無双と迷い
ここからの戦闘は、文字通りの蹂躙だった。 驚異的なスピードで踏み込んだロイドが、魔剣の腹でチンピラどもの武器を叩き折り、次々と石床へと叩き伏せていく。
一歩も動けない部下たちの無様な制圧劇を前に、最奥の玉座にいたドンが、信じられないものを見るかのように目を見開いた。
「な……な、何という威力だ……! 素晴らしい、やはりあの魔剣こそ、我が組織にふさわしい!」
部下たちが全滅したというのに、ドンは恐怖するどころか、狂ったように拍手をしながら立ち上がった。
そして、ロイドが持つ魔剣を見つめながら、陶酔したような、醜悪極まりない笑顔を浮かべてこちらへと歩み寄ってくる。
「ククク……よくやったぞ、ロイド! よくぞそのガキから魔剣を奪い取ってくれた! さすがは俺の息子だ、俺は最初からお前に期待していたんだ!」
ドンの言葉が、静まり返った広間に響く。
――その瞬間、進化した俺の【虚偽感知】が、脳内でかつてないほど激しいアラートを鳴らし響かせた。
真っ赤な嘘だ。実の息子すら痛めつけろと言っていた男の、吐き気のするようなハッタリ。
だが、ドンは「質問に答えなければセーフ」という自らの誤解に完全に溺れたまま、勝ち誇って一方的に言葉を重ねていく。息を吐くように、さらなる嘘を積み重ねていく。
「安心しろ、ロイド。魔剣を大人しくこちらに渡すのであれば、もちろん、そこのボウズ(トキ)に手を出したりはしない。命だけは助けて、無傷でここから帰してやる。だからさあ、その剣を俺に寄こしなさい」
――嘘。嘘。すべてが真っ赤な嘘。
俺を殺して魔剣を奪う気満々の、醜い悪党のハッタリの連発。
俺はただ、何も言わずに沈黙を守ったまま、静かに、冷徹に、レベル3へと覚醒した【言霊記録】の照準を、目の前で自ら破滅へのカウントダウンを進めているドンへと合わせた。
(勝手に話し続けてくれて、助かるよ……。一歩も動かず、質問もせず、沈黙のまま――お前を完全に終わらせてやる……いや、あいつはロイドの父親だぞ本当にやってもいいのか?)
引き金に指をかけた俺は発動させるかどうか迷っていた────。




