信頼
『虚偽制裁の合計回数が【50回】に到達しました』
『条件を達成しました。固有能力【言霊記録】がレベル3へ移行します――』
――溜まりきった。
自身の内側から、かつてないほど強大で、禍々しいまでの進化の気配が、一気に膨れ上がっていく。
脳内に、新しく覚醒したレベル3の恩恵詳細が容赦なくアップデートされていくのが分かった。
1.【能力拡張】:ロックオンの指定可能人数が最大『5人』に上昇。
2.【虚偽感知・完全常時化】:ロックオンの有無に関わらず、「嘘」を直感的に感知可能。
3.【虚偽制裁・過積載】:ロックオン対象が嘘を重ねるたびにペナルティが乗算で深刻化。1回目で激しい頭痛、2回目で感覚喪失、3回目で部位欠損、4回目以降で魂の消滅(即死)。
(……なるほど、これがレベル3。文字通りの、化け物じみたハメ技の完成だ)
「ひ、ひぃっ!? あ、頭が、頭が割れるぅぅぅっ!」
床でのたうち回る側近っぽい男を前に、ドンの『完璧な考察』を信じていた周囲の部下たちに凄まじい動揺が走る。
「お、おい! 何をしてやがる、お前ら! 構わん、そのガキを殺せ! 早くやれ、やれえええっ!」
ドンが必死に叫び、武器を構えた数人の部下たちが一斉に俺へと飛びかかろうとした、その時だった。
「――おい。俺のダチに、何やってるんだよ」
広間の扉が乱暴に蹴破られ、怒りに満ちた声が響き渡った。
肩で息をしながら足を踏み入れてきたのは、ドンの息子であり、俺の初めての友達――ロイドだった。
「ロ、ロイド様……っ!?」
部下たちの動きが止まる。だが、ドンは実の息子の反逆に怒り狂い、容赦なく冷酷な声を張り上げた。
「何をしている、部下ども! ロイドの話など聞く必要はない! 2人まとめて囲んで捕らえろ!」
ボスの絶対的な命令。チンピラどもが正気を取り戻し、俺とロイドを完全に包囲した。
さすがに総勢十数人の悪党に囲まれれば、多勢に無勢だ。武力のない俺はもちろん、ロイド一人で無双できる数じゃない。
「チッ、おいトキ!」
ロイドが包囲網を睨みつけながら、俺の背負う【人斬りの魔剣】に目を向けた。
「その剣、俺に貸せ! これだけの人数、生身じゃ捌ききれねえ! 俺がこれを使って、お前を守りながら道を切り開く!」
俺の脳内に、レベル3へと進化した【虚偽感知】がノータイムで答えを弾き出す。
――ゾワゾワとした違和感は、微塵もない。つまり、コイツは……ロイドは嘘をついていない。
魔剣の価値を知っていながら、こいつの言葉には「奪い取る」なんて下卑た欲は一切ない。ただ純粋に、友達である俺を守るために剣を貸せと言っているのだ。
日本で親友にすべてを騙し取られた俺の心が、この異世界で初めて、本物の信頼に揺れ動いた。
「……お前に託す。暴れてこい、ロイド」
俺は背中から漆黒の魔剣を抜き、ロイドへと投げ渡した。
「おうッ! 信じてくれてありがとよ、トキ!」
不気味な鈍色の魔剣がロイドの手へと渡った瞬間、破壊不可の身体強化の加護が、彼の肉体を爆発的に跳ね上げる───




