部下?使い捨てる駒だろ?
「――何だと? 触れもせずに指先一つで、手下どもを悶絶させただと?」
犯罪組織のボス――ドンの低く冷酷な声が、薄暗い地下室に響き渡った。
玉座の前で平伏しているのは、先ほど路地裏の光景を屋根の上から監視していた男だ。男は未だに恐怖が抜けない様子で、声を小刻みに震わせながら報告を続ける。
「は、はい……! 間違いありません、ボス。例の黒髪黒目のガキは、ただの一般人ではなく、何らかの強力な恩恵持ちです。ガキが何かを口にした途端、手下どもは叫び出し、地面を転げ回っておりました……!」
「……ふむ。ガキは何と言ったのだ?」
「それが……少し距離があったため、詳しい言葉までは聞き取れませんでした。ですが、ガキの問いかけに手下どもが恐れをなして、ボスの名前と『魔剣を奪えと言われた』という情報をすべて吐き出しておりました……」
男の報告を聞いたドンは、不気味に目を細め、静かに背もたれに体を預けた。
驚愕に慌てる様子はなく、むしろ合点がいったとばかりに、唇の端を吊り上げる。
「ククク……なるほどな。あの街を恐怖に陥れていた『人斬り』を倒した奴のだ。ただの無力なガキであるはずがなかったな。教会に国宝を持ち込むだけのことはある、そりゃあ強力な能力の持ち主だろうよ」
「では、あのガキからの魔剣の強奪は、一度諦めますか……?」
恐る恐る尋ねる部下に対し、ドンはフッと鼻で笑い、冷酷な眼差しを向けた。
「馬鹿を言え。あの魔剣の価値は、そんなことで諦めるには惜しすぎる。それに、どれほど強力な能力であろうと、必ず発動の条件や弱点が存在するはずだ。正体さえ分かれば対策などいくらでも立てられる」
ドンは玉座の肘掛けを指先でトントンと叩きながら、命令を下した。
「おい。今度はもっと手数を増やせ。あのガキの元へ、さらにチンピラどもを仕向けろ。一度に複数人で襲わせ、様々な状況を試すのだ。命を惜しむな、どんなに犠牲を出しても構わん。あのガキが『どんな条件で、どうやって能力を使っているのか』、その正体を徹底的に探り裏をかけ」
「――ッ! 御意に、ボス……!」
部下はボスの容赦のない冷酷さに背筋を凍らせながら、再び深く頭を下げた。
ドンにとって、部下の命など単なる消耗品の駒に過ぎない。
絶対的な強欲と冷徹さを持つ悪党の包囲網が、再びトキの日常へと忍び寄ろうとしていた――。
今回はちょっと短めですね、ドン達の話でした。




