ザコはサクッと
明後日から午後10時に投稿します
「……何か、僕に用ですか?」
俺はわざと肩を震わせ、気弱な一般人を装って声を震わせた。
すると、前に立つ大柄なチンピラが、下品な笑みを深めて手を広げた。
「ちょーと、お前さんに頼みがあってさ。話を聞きたいだけだから、こっちに来いよ。なぁに、危害は加えないからよ」
「へへ、大人しく従った方が身のためだぜ? 俺等は街の警吏とも繋がってるからな。声を上げて助けを呼んでも無駄だぜ」
隣の小柄な男が、脅すように懐の短剣をちらつかせながら言った。
――その瞬間。
俺の脳内に、言葉では言い表せない強烈な『ゾワゾワとした違和感』が二重に走った。
【虚偽感知】だ。
ロックオンした目の前の2人の言葉が、揃いも揃って真っ赤な嘘であることを、俺の感覚が強制的に証明していた。
(警吏と繋がっているのは嘘。つまり、こいつらはただのチンピラだ。そして――『危害を加えない』という言葉も嘘……か)
なるほど。つまり、この先に進めば確実に俺を襲うつもりだというわけだ。
だが、あらかじめ相手が嘘をついているならいるのなら、これほど対処しやすいものはない。俺は内心口角を上げながら、表面上は怯えたようにコクコクと何度も頷いてみせた。
「わ、分かりました……。叫んだりしないので、乱暴はしないでください……」
「おうおう、物分かりの良いガキで助かるぜ。さあ、こっちだ」
チンピラどもは、獲物が簡単に罠にかかったと確信して、ニヤニヤと笑いながら路地のさらに奥へと俺を誘導していく。
人目に付かない、薄暗い行き止まり。
そこまでたどり着いた瞬間、2人は素早く振り返り、同時に懐からギラつく短剣を抜いて俺に突きつけてきた。
「へへっ、 命が惜しけりゃ、昨日お前が教会に持ち込んだあの『魔剣』をどこに隠したか吐きな!」
化けの皮を剥いだ男たちの顔を、俺は冷めた目で見つめ返した。
怯える様子すら見せなくなった俺に、チンピラが眉をひそめた瞬間――。
「――お前さっき、言ったよな?」
俺は、低く、はっきりとした声で告げた。
「『危害は加えない』。それに、『俺たちは警吏と繋がっている』って」
「あ? 何をブツブツ言って――」
「【虚偽制裁】――発動」
パチン、と脳内で引き金を引く。
「ぎ、ぎゃあああああああああっ!?」
「がはっ!? あ、頭が、頭が割れるっ、熱いぃぃぃっ!?」
次の瞬間、2人のチンピラは短剣を放り出し、頭を両手で抱えて地面へと転げ回った。
脳を直接炙られるような、未体験の激痛。声にならない悲鳴を上げながら、彼らはのたうち回る。
俺はその無様な姿を冷徹に見下ろしながら、片膝をついて大柄な男の髪を掴み、無理やり顔を上げさせた。
「あ、が……な、何を、何をした……っ!」
「質問に答えろ。誰の指示で動いている? なぜ魔剣の存在を知っている?」
「ど、ドンだ……! 犯罪組織のボスのドンに、魔剣を出品したガキからブツを奪ってこいって、言われ、ただけだ……! 助けてくれ、頭が………死ぬ、死んじまう……っ!」
男は涙と鼻水に塗れながら、必死に真実を吐き出した。
能力が感知する違和感はない。100%真実の情報だ。
(なるほど。犯罪組織のトップ、ドン……か)
敵の正体を完全に把握した俺は、ゆっくりと立ち上がった。
激痛から解放され、ゼェゼェと地面に這いつくばる2人に、俺は冷たい一瞥をくれる。
「もう二度と、俺の前に現れるなよ。……次はどうなるか分からないからな」
自分自身への制約――【因果応報】は発動しない。この脅しは明確な嘘ではないからだ。
恐怖に完全に支配されたチンピラどもは、蜘蛛の子を散らすように路地裏から逃げ去っていった。
俺は衣服の汚れを軽く払い、何事もなかったかのように配達の仕事に戻るべく歩き出す。
――だが、その光景を、路地裏の屋根の上から見下ろしている影があった。
「……まじかよ……能力者だったのか…………」
それは、チンピラたちの成果を確認するために遠巻きに監視していた、犯罪組織の別の男だった。
武器も持たないただのガキが、触れもせずに指先一つで手下を悶絶させ、情報を吐かせた異常な光景。
男は全身に鳥肌を立てながら、冷や汗交じりにその場を後にした――。
評価………。コ、メン…………ト。




