犯罪組織の不穏な会話
2章完結までは隔日投稿しますね
教会地下のオークション会場から遠く離れた、街の治安が最も悪いスラム街の奥深く。
薄暗くカビ臭い地下室の玉座に、その男は深く腰掛けていた。
この街の裏社会を牛耳る犯罪組織のボス――『ドン』と呼ばれる男だ。
「――ほう。教会が仕切る1ヶ月後の裏オークションに、あの『人斬り』が使っていた魔剣が出品される、だと?」
ボスの低く冷酷な声が室内に響く。その視線の先で、先ほどまで教会の地下通路の物陰に潜んでいた部下の男が、深く頭を下げていた。
「はっ。間違いありません、ボス。ハンスという老いぼれ質屋と、黒髪黒目の、見慣れぬ服を着たガキが持ち込んでおりました。教会側も本物だと鑑定し、出品される予定です。持ち主の身体能力を大幅に強化する本物の業物です」
「ククク……身体強化の魔剣、か。実に素晴らしい。我が組織にふさわしい逸品だな」
ボスは満足そうに顎をなで、ギラリと強欲な目を光らせた。
「オークションが始まる前に出品者のガキの身元を特定し、脅し取るか殺して奪え。大金を払って競り落とすなど馬鹿げているからな。あの剣は、我が組織のものとするぞ……」
「御意。さっそく使い捨てのチンピラどもを動かし、ガキの足取りを追わせます」
悪党たちの純粋な強欲の牙が、静かにトキへと向けられていた。
♢♢♢
教会に行った翌日、俺はいつものように雑用ギルドの仕事をこなしていた。
元の世界から着てきた学生服は、ハンスのオヤジに高く買い取ってもらった。そのおかげでハンスの店の家賃は5年間無料になり、手元にはまだまとまった金が残っている。黒髪黒目の、この世界の一般的な服に着替えた俺は、当面の間は働かなくても十分に生きていける身だ。
だが、無職のまま貯金が目減りしていくのを見守るほど恐ろしいことはない。資産を守り、不測の事態に備えるため、俺はギルドで日銭を稼ぎ続けていた。
「はい、これが次の配達物ね。商業区の仕立て屋までお願い」
「分かりました」
俺は受付嬢から一通の手紙を受け取り、ペコリと頭を下げた。
「ふぅ……」
街の喧騒の中、手紙を懐にしまって歩く。
誰とも深く関わらず、ただ淡々とタスクをこなすこの仕事は、人間不信の俺にはちょうどいい。
――だが、そんな平穏は一瞬でぶち壊される。
商業区へと続く少し薄暗い路地裏に入った、その時だった。
「おい、そこのガキ。ちょっと面貸せや」
背後から、泥を擦りつけたような下品な声がかけられた。
振り返ると、そこにはいかにもこの街の底辺に生息していそうな、人相の悪い2人のチンピラが、ニヤニヤと品性のない笑みを浮かべて路地の出口を塞いでいた。
衣服の裏には粗末な短剣が仕込まれているのが見える。
昨日の今日だ。ただの路地裏の身ぐるみ剥ぎにしては、タイミングが良すぎる。
「……何か、僕に用ですか?」
頑張って書いてるので評価ぜひ。
短編もいっぱい書いてるのでよろしく




