オークション会場はまさかの……
「おいおい、マジかよオヤジ……。裏オークションの会場が、あの『教会』の地下だって?」
翌日、ハンスの店で出発の準備をしていた俺は、耳を疑うようなオヤジの言葉に眉をひそめた。
この世界で最も広く、そして熱狂的に信仰されている『聖光真教』。男の神である聖光神を崇拝するその組織は、表向きは民を救う聖域であり、正義の象徴のはずだ。
「クハッ、驚くのも無理はねえ。だがな、トキ。綺麗事の裏にこそ、一番深い泥が溜まるもんなのさ」
ハンスは荷物をまとめながら、いかにも裏社会の人間らしい歪んだ笑みを浮かべた。
「聖光真教の教皇を含めた上層部どもが、こっそり私腹を肥やすために運営してるのさ。表の市場じゃ絶対に流通させられねえ呪物、禁忌の魔導書、果ては他国の奴隷……。そんな曰く付きの品を、国の汚職貴族や、強力な能力を持ったイカれた金持ちどもに競らせる闇の競売会。それが、あの神聖な大聖堂の地下深くで行われてる【裏オークション】の正体だ」
神に祈りを捧げる教会の真下で、悪党どもが金と欲望を貪り合っている。他人の善意や綺麗事をこれっぽっちも信じていない俺にとって、それはむしろ酷く腑に落ちる話だった。
「灯台下暗し、か。確かにそこなら、衛兵もおいそれとガサ入れはできないな」
「そういうこった。それに、そこを仕切ってる連中は本物の大物だ。今回のお前の魔剣にふさわしい、最高にイカれた買い手が見つかるはずだぜ。……よし、顔繋ぎの予約は取ってある。さっそく行くぞ、トキ」
俺たちは厳重に梱包した魔剣を抱え、昼間の喧騒に紛れて街の中央にそびえ立つ大大聖堂へと向かった。
白亜の壁に囲まれた神聖な聖堂。その裏口から、ハンスは慣れた手つきで衛兵にいくつかの金貨を握らせ、地下へと続く隠し階段を下りていく。
ひんやりとした地下通路の奥にあったのは、まるで高級ホテルのサロンのような、大理石で造られた不気味なほど豪華な一室だった。
そこで待っていたのは、上質な神官服に身を包んだ、いかにも計算高そうな教会の幹部だった。
「お久しぶりですね、ハンス。そちらの少年が、例の『極上品』の持ち主ですか?」
幹部は値踏みするような視線を俺に向けてくる。俺は小さく会釈した。
ハンスが迷いなく、カウンターの上に梱包された魔剣を差し出す。
幹部がそれを解き、漆黒の刀身が姿を現した瞬間、男の目がギラリと欲望に濁った。
「……素晴らしい。【魔剣創出】の現物。しかも呪念が消えて純粋な身体強化だけが残っている……。間違いありません、これは歴史に残る至高の業物だ」
幹部は陶酔したように剣を眺め、それからハンスと俺を見て、満足そうに頷いた。
「分かりました。この【人斬りの魔剣】、我がオークションでの出品を正式に確定させましょう」
「ありがたいねぇ。で、開催はいつ頃になる?」
ハンスが尋ねると、幹部は魔剣を丁寧に片付けながら答えた。
「これほどの大物です。相応の準備と、世界中の大富豪や有力な貴族たちへ招待状を送る時間が必要です。開催は今から【1ヶ月後】になります。それまで我が教会の宝物庫にて、厳重に保管しておきましょう」
「1ヶ月後、か。分かった。楽しみに待たせてもらうぜ」
出品の手続きが確定し、俺とハンスは幹部に別れを告げて、地下の部屋を後にした。
大金が手に入るのは1ヶ月後。それまでの間、どうやってこの街で立ち回るべきか――俺がそんな思考を巡らせながら、ハンスと共に歩いていた、その時だった。
コツ、と。
地下通路の曲がり角。明かりの届かない深い、深い物陰の奥。
そこから、俺たちの去り行く背中を、じっと見つめる視線があった。
暗闇に潜むその男は、俺たちが持ち込んだ魔剣の価値、そして教会の幹部とのやり取りを、息を潜めてすべて盗み聞きしていた。
(……人斬りの魔剣、だと? 面白いものが転がり込んできたな……)
男の唇が、暗闇の中で獰猛に吊り上がる。
トキたちがまだ知る由もない、新たな因縁の影が、静かに蠢き始めていた――。
最近de版龍クエ5で仲間モンスター全コンプを目指してるのですがやっと爆弾岩が仲間になりました(約300体倒しました)
こっちもできるだけ頑張りますのでコメント、評価よろしくおねがいします




