女神との対峙
『』→女神の発言
「」→トキの発言
() →心の声
気づいたら真っ白な空間にいた。
体に痛みはなく。状況も相まってあの世にいるとしか思えない。
『哀れな魂よ』
突然、頭上から鈴を転がすような、透き通った声が響いた。
闇の奥から、眩い光を絶世の美女が現れる。慈愛に満ちたような瞳でこちらを見つめるその存在を、本能が「神」だと理解した。
『私は女神。あなたが余りにも哀れだったので、傷を癒し、異世界に送ってあげましょう。異世界転移と言うやつです。また、二度と騙されて悲しい思いをしないための力を与えましょう』
普通なら異世界転移だ、チートだと喜ぶところだろう。
だが、今のトキの心は、二人の裏切りによって凍りついていた。
(……怪しいな)
トキは冷え切った、探るような目で女神を見た。
親切な顔。優しい声。
−−あの2人と同じだ。騙そうとしようとしているとしか思えない。
「なぜ、お前はそこまで親切にする?」
トキの声は低く、警戒心に満ちていた。
「見ず知らずの俺をわざわざ生き返らせて、能力までくれる。お前の目的はなんだ?」
女神は一瞬、キョトンとした。だが次の瞬間、その美しい唇を妖艶に歪め、楽しげに微笑んだ。
『ふふ。やはり、あなたを選んで正解でした。ええ、もちろんありますよ。目的も裏も。でも、今のあなたには言いません』
あっさりと認めた女神の言葉に、トキは目を細める。
「言わない、だと?」
『ええ。私がここで何かを命じてもあなたは絶対に拒否するでしょう?だから、なにも命じません。』
女神は一歩、トキの方へ近づき、耳元でつぶやくように言葉を紡いだ。
『あなたは思うがまま、誰も信じず生きればいいのです。……それだけで、私の目的は必ず叶う』
(俺が生きているだけで、こいつの目的が叶う?)
不気味な予言だ。だが、トキには闘志が静かに燃えた。
「……面白いな。お前が何を考えてるかは知らんが俺はもう誰にも利用されるつもりはない。」
『嘘ではありませんよ?私は真実しか言っていませんよ?さあ、そろそろ言ってもらいましょうか。能力については向こうにいけば頭のなかにインストールされることでしょう。では、新しい生活を楽しんでね』
女神が細い指をパチンと鳴らした瞬間、空間が眩い光に包まれる。
そこで再びトキは意識を失った。
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