閑話:女神の笑み
今日は2本投稿されています。これは1話目なのでここから見てくださいね
人間たちの住まう下界を見下ろす、白磁の神殿。
そこに佇む美しき女神の耳には、下界から届く【言霊記録】の音が響いていた。
薄汚い質屋のカウンター越しに交わされる、トキとハンスという男の密談。
『……裏オークションとやらに、これを出品してくれ』
『決まりだ。……絶対に油断するなよ』
『言われなくても、他人のことなんて最初から1ミリも信じてないさ』
冷徹さを気取るトキの声を拾い上げ、女神は静かに口元を綻ばせた。
「よくやってくれました、トキ。あの『人斬り』をここで排除できたのは、大きな進歩です。ふふ、全て順調ですね。やはりあなたをあの世界に送り込んで正解でした」
あの辻斬りは、『聖光神』の使徒だった。人を斬るたびに強くなる歪んだ魔剣を与えられ、私たちを倒すために送り込まれた残虐な駒。
聖光神はあまりにも冷酷で、悪い神です。私や、私の使徒であるあなたを邪魔者扱いし、容赦なく排除しようとしてくるのですから。
「ですが、あなたはあの使徒を破滅させ、その力の結晶である魔剣すら奪い取った。……実に素晴らしい」
トキは他人の笑顔の裏にある打算を敏感に察知するが、その本質には、まだ騙されやすいお人好しな部分が残っている。彼が自らの足で歩み、この世界の現実を知れば知るほど、聖光神の敷いた冷酷な秩序に激しい拒絶を覚えるはずだ。
「もっと聖光神の使徒を倒すのです。頑張ってくださいね、私の使徒」
祈るように両手を組んだ女神の顔には笑みが浮かんでいた。




