負けることはユルサナイ
短めです。許して
ルナは大剣の刃を寝かせ、殺さず、戦闘不能にするためだけの強烈な『峰打ち』を、人斬りの胴体へ向けて叩き込む。
凄まじい衝撃波と共に、人斬りの身体が路地裏の壁へと吹き飛んだ。
「が、はぁっ……!?」
壁に激突し、完全に骨を砕かれて崩れ落ちる人斬り。
手から離れた魔剣は、カランと虚しい音を立てて石畳を転がり、トキの足元へと滑ってきた。
「これで、もう戦えませんね。大人しくお縄についてください」
ルナが息を切らせながらも、大剣を引いて人斬りに告げる。ルナとしては、これで生け捕りにして衛兵に引き渡すつもりだった。
だが――魔剣を生み出す恩恵にもデメリットがあった。トキが嘘をつくことが許されぬように人斬りは敗北することが許されていなかった
激痛とルナの一撃によって人斬りの意識(精神力)が完全に途切れかけた瞬間、100人の命を吸ってどす黒く肥大化していた魔剣の呪いが、制御を失って一気に持ち主へと逆流し始める。
「あ、あ、熱い、熱い熱い熱い!!! なんだこれ、俺の力が、俺の体がぁぁぁっ!?」
人斬りの身体から、禍々しい紫色のドス黒いオーラがボコボコと噴き出し、彼自身の肉体を内側から侵食し始めた。
「トキさん、これは……っ!?」
「下がるんだ、ルナ! 近付くな!」
俺は咄嗟にルナの前に出て、彼女を下がらせる。
「助けて、助けてくれ聖光神様! 俺は主人公だろぉぉぉっ!?」
と、夜の闇に哀れな絶叫を響かせながら、人斬りの身体は自らが放った呪いのオーラに呑まれ、やがて炭化するように崩れ落ち、最後には文字通り『塵』となって夜風に消えていった。
あいつが死んでも、その力の源だったと思われる魔剣だけは、呪いをすべて吐ききって静まり返った状態で、俺の足元に転がっている。
(……なんとか、生き残ったな)
こうして、俺たちの夜の戦いは終わりを迎えた。
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