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初見殺し

こいつは強い。おそらくルナでは勝てない。

なら、ここからは俺の戦いだ。


「犯罪者、だぁ……?」


人斬りの引きつった笑みから、完全に余裕が消え失せる。

だが、激昂して飛びかかってこようとする男の前に、ルナがすかさず割り込み、大剣を構えて鋭く睨みつけた。


「トキさんには、近づかせません……!」


ルナの【慈愛献身】が放つ圧力に気圧され、人斬りの足がピタリと止まる。

ルナが作ってくれた、手出しできない安全な距離。その背後から、俺は冷徹に言葉の銃口を向けた。


「自覚がないなら教えてやるよ。お前が元の世界でどれだけ惨めな負け組だったかは知らないが、ここでいくら人を斬ったところで、お前の本質は変わらない。中身が空っぽのまま強大な力を振り回す奴を、世間では『通り魔』って呼ぶんだよ」


「……黙れ」


人斬りの喉から、地を這うような低い声が漏れる。

『元の世界』という単語に、明らかに過剰な反応を示した。やはり図星だ。


「ゲームのレベルアップみたいに、100人斬れば自分が特別な存在になれると本気で信じていたのか? 哀れだな。お前が必死に築き上げたその『100人斬りの主人公様』っていう設定、今ここで俺が全部否定してやるよ」


「黙れって言ってんだろ、クソモブがァ!!」


人斬りが吠える。ルナを警戒して突っ込めない苛立ちをぶつけるように、男は自身の魔剣を大げさに掲げて見せた。


()()()()()()()()()|!この世界に来て、こんな最強の力を貰ったんだ! 元の世界の奴らも、この街のクズどもも、俺を馬鹿にした奴らは全員俺の足元に転がることになる! ()()()()()()()()()()()()()()し、これから先、()()()()()()()()()()()()()()()()!!」


――ゾワゾワゾワッ!!!

その瞬間、俺の脳内に、頭をかきむしりたくなるほどの強烈な違和感が駆け巡った。

【言霊記録】レベル2の【虚偽感知】。


(……一気に盛ったな。やっぱり【言霊記録】の初見殺し性能は高いな)


ルナの怪力に焦っていたくせに吐いた「誰にも負けない」という嘘。そして、死への恐怖を隠すために吐いた「絶対に死なない」という明確な嘘。

肥大化したプライドを維持するため、俺にマウントを取るためにこいつが重ねた言葉は、能力によって完全な『虚偽』だと証明された。


「誰にも負けない、絶対に死なない、か。……ずいぶんと大きな嘘を吐くんだな」


「あ? 嘘なわけねぇだろ! 俺様が最強で、無敵なんだよ!!」


――ゾワッ!

重なる嘘。

相手の頭上にある【言霊記録】のマークが、まるで獲物を捉えたかのように妖しく明滅した。

トリガーは完全に満たされている。


「お前さっき、言ったよな。自分が『最強』で『何があっても死なない』って」


俺は冷酷に口元を歪め、胸の中で冷たく命じた。


(――【虚偽制裁】発動)


「……へ? あ、ぎ、がはぁっ!?!?!?」


次の瞬間、勝ち誇った顔をしていた人斬りが、突如として手にした魔剣を取り落とし、両手で頭を抱えて石畳へと激しく転がった。


「ルナ!」 

「はい!」


トキの声に反応し、ルナは大剣の刃を寝かせ、強烈な『峰打ち』を、人斬りの胴体へ向けて叩き込んだ−−−

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