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慈愛献身

戦闘描写ムズイ

「あ゛?」


鋭い風切り音と共に飛来した石に対し、人斬りは一切動じることなく、手にした魔剣を無造作に一閃させた。

キィン、と軽い音が響き、俺が投げた拳大の石は空中で綺麗に真っ二つに両断される。


「おいおい、なんだよそのショボい攻撃は。モブが俺様の邪魔すんじゃねえよ」


人斬りが鬱陶しそうに、冷ややかな眼をこちらに向ける。

だが――その一瞬の隙を、あの少女が見逃すはずがなかった。


「――はあああぁぁ!!」


ルナが地を蹴った。


弾き飛ばされていた大剣を瞬時に拾い上げ、凄まじい速度で突進する。その一歩ごとに石畳が砕け、凄まじい風圧が路地裏を吹き抜けた。


「なっ、速――っ!?」


人斬りが慌てて魔剣を戻し、ルナの一撃をガードする。−−−だが、その一撃の重さは凄まじかった。

正面からルナの力に押し負け、人斬りの身体が虚空へと跳ね飛ばされる。壁に背中を猛然と打ち付け、地面に転がった。


「トキさん……!? なんで、なんでここにいるんですか!?」


ルナが驚愕に目を見開きながら、俺の方を振り返る。その表情には、助かった安堵よりも、一般人である俺がこの危険な場所にいることへの純粋な戸惑いと焦りが滲んでいた。


「……気にするな。大丈夫か?」


俺の言葉に、ルナは真剣な表情で小さく頷き、大剣を構え直した。


「はい……! 大丈夫です、私の加護は『誰かを守るために戦うとき』に一番力が引き出される【慈愛献身】です。今、後ろにトキさんがいてくれるから……私、さっきよりずっと強いです。絶対に守ります!」


(なるほど、誰かを守るのが条件の加護か。だからさっきの一撃があれだけ重かったのか。……いや、なら始めから誰かを連れてこいよ、バカなのかこいつは)


「……チッ、ナメてんじゃねえぞ!クソアマッ!!もう許さねぇ、ぶっ殺す!!!」


壁際で吐血しながらも、人斬りが凄まじい執念で立ち上がった。その身体から禍々しい紫色のオーラが再び吹き上がり、手にした魔剣を狂ったように振り回しながらルナへと肉薄する。


「死ねよ、モブどもがぁぁぁ!!」


「――させません!」


キィィィィィンッ!! と、先ほどまでとは比べ物にならない重低音の金属音が路地裏に轟いた。

正面からの真っ向勝負。だが、今度は違った。

ルナの大剣が、人斬りの魔剣を完全に力でねじ伏せ、押し込んでいる。

人斬りの変幻自在な剣筋に対し、ルナは鋭い踏み込みと圧倒的なパワーの力押しだけで、すべての軌道を強引に弾き飛ばしていく。


「が、あぁっ!? クソ、なんなんだよこのクソ火力は……っ!」


人斬りの顔から余裕が消え、明らかな焦りが生じ始める。ルナの猛攻に防戦一方となり、ジリジリと後ろへステップを踏まわされている。

ルナの剣が振るわれるたび、人斬りの肉体には小さな裂傷が増え、その動きが確実に鈍っていく。

このままルナが押し切る――。


人斬りの敗色が濃厚になり、そう確信した、その時だった。

「おい! そこで何をしている!!」


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