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異世界冒険奇譚〜異世界行ったけどイージーじゃなかった〜  作者: ああるぐれい


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第七話

放送された内容通りに、訓練場に集まった。ここで作戦内容が伝えられるらしい。


「再び、AIを集めることにした。大まかな作戦は前の調査と同じだ」


その言葉に集まった人々がざわついている。


「理由はパワードスーツが今後必要になるため、より多くのAIの素材を獲得したいからだ」


また材料集めをするのか。


「今回は今現在生産されているパワードスーツの合計の459人で調査をする。参加する者は各自のスマートフォンを通じてメールを送る。決行は三日後。以上、解散!」


今回も淡白な説明だ。メールがくるのは戦闘員に支給されているスマートフォンに通知がくらしい。


「今回は私も参加しますかね」

「さぁ、マキナも戦力になるわけだし、参加するんじゃないか?」


雑談しながら廊下で話す。


ふと、レオがトイレに入ったのを見た。それを見て尿意を催した。


「ごめん、先にトイレに行くから先に帰っといてくれ」

「待ちますよ」

「恥ずかしいから良い」


マキナの提案を突っぱねて、レオが入ったトイレに向かった。入り口の前に立つ。すると、声が聞こえてきた。


「計画は順調だ⋯⋯」

「そうだな、今回のことでわかるかもしれない」


レオは誰かと電話していた。一体、誰と話しているんだ。レオの話す言葉しか聞こえないが、レジスタンスの誰かと話しているわけじゃなさそうだ。レオは何かを隠している。それが分かれば⋯⋯。


電話が終わり、レオがコツコツと入り口に向かってきた。慌ててトイレに入り、気取られないように個室に入る。ホッと安堵していると。


「トウマ」

「はい⋯⋯?」

「何か聞いたか」

「⋯⋯いえ、どうしたんですか?」

「なんでもない。悪かったな」


レオは去っていった。足音が聞こえなくなるまで、個室に篭った。たまらず胸を抑える。心臓が叫んでいた。その叫びがレオに聞こえそうで怖い。今の聴き方は完全にクロだ。レオは俺たちに隠れて何かをしている。


誰かに言わなきゃ。


できるだけ平静を保ちながら、トイレを出る。レイに聞いてみるか。レイがいつもいる部屋に来た。緊張しながらドアをノックした。


「どうぞ」

「失礼します」


言ってドアを開ける。


「少し聞きたいことがあるのですが」

「なんだい」

「レイさんは五分前ぐらい前に電話しましたか?」

「いや、してないな。それが?」

「あぁ、いや、なんでもないです。ただ気になっただけなので」


濁しながらドアを開ける。


「失礼しました」


ドアを閉め、足早に去った。レイがドアから顔を覗かせて呼び止めてくるが聞こえないフリをした。レイは否定した。嘘かもしれないけど、疑ってかかるとキリがない。そもそも、レオは誰と電話していたのか、もしかしたら⋯⋯⋯⋯。


「トウマさん」

「⋯⋯マキナ、どうしたんだ?」

「トイレというには遅すぎたので、もしかしていかがわしいことでも」

「してない。してないから」


何を言うかは予想がついたため、前もって否定する。


どうする、マキナに打ち明けるか?

ただ、そうすると、マキナを巻き込んでしまうかもしれない。それは避けたい。ならば、俺一人でレオの秘密を暴くしかない。


「どうしました、そんな深刻そうな顔をして」

「いや、なんでもない。安心しろ」


突然、スマートフォンが震えた。レイから通知が来ていた。


『あなたは今回の調査の隊員として選ばれました』


詐欺メールのような文面が添付されている。それはマキナも同じだった。二人とも、今回の調査に参加することがわかった。


「頑張りましょうね」

「おう」



◇◇◇◇◇◇



メールが送信されてから三日経った。今、俺たちは開発されたパワードスーツを装着している最中だ。俺は一度着たことがあるため、スムーズに着ることができた。しかし、マキナは受け付けないらしい。

なんか気持ち悪いとのこと。まぁ当然だ。なんせ材料はAIだ。人間に置き換えると人間の皮を人間が着るようなもの。当然気持ち悪いだろう。


「マキナ、着ないと怪しまれるぞ」

「でも、さすがにこれは⋯⋯いや、そうですね」


渋々といった感じで装着する。感触が気持ち悪いのか、口をもごもごさせている。すごく申し訳ない。


「俺らはリネさんと行動だってよ」

「トウマさんは一度行動したことがあるんですよね」

「あぁ。ただ、グループで分かれるのは随分後らしい。多分、材料を集める他に何か目的がある」

「言われたんですか」

「いや、ただの予想」


しかし、ただの予想ではない。レオが怪しすぎるのだ。もしかしたら今回の調査で何かアクションを起こすかもしれない。今はグループに分かれる前で、団体で行動しているため、目立った動きはない。突然、マキナが肩を叩いて来た。


「トウマさん、近づいて来てます」

「バレてないはずだぞ」

「何故でしょうね」


いや⋯⋯これがレオのアクションか!


空高くそびえるビルから数多のAIが降り注ぐ。


「くるぞ!」


電力を消費しないために、電源を切っていたが、AIの奇襲に対応するためにスイッチを入れた。SPF9を構え、引き金を引いた。皆が一斉に発砲する。星のように光りながらAIに向かっていくエネルギー弾が煌めいた。しかし、降って来るAIの方が多い。


「開けた場所に移動しろ!」


インカムから怒号が聞こえて来た。AIを撃ち落としながら走った。少し行くと広場に出た。しかしそこには。


「嘘だろ⋯⋯」


インカムから絶望に染まった声が聞こえる。


目の前には大量のAIがいた。先頭には犬の頭をしたAIが立っている。


「「「「人類ヲ排除シマス」」」」



◇◇◇◇◇◇



AIたちがエネルギーを放出しながらこちらに飛んできた。次々と叩き落とし、トドメを刺していく。このまま行くと押し切れる。そう思っていると、前線にいた人たちが吹き飛んだ。多くの人が空を舞い、悲鳴をあげながら地面に落下し、絶命していく。その犯人は犬頭のAIだった。手をかざしただけで、人が浮き、吹き飛ばされている。目を凝らしてみると、体の色は灰色なのに、手のひらは黒ずんでいた。手のひらに人が吹き飛んだ仕掛けがあるのかもしれない。


あいつを倒せば、あとは消化試合だ。


「皆殺シダ」


犬頭の口がかぽっと開いたかと思えば、カタコトの日本語をしゃべっていた。クレルと同じ類のAIだ。意思の疎通ができるかもしれない。話をして時間を稼ぐか。


AIの包囲を掻い潜り、犬頭へと近づいた。犬頭の目はAIと同じ赤い光に包まれている。


「おい!」


犬頭に向かって叫んだ。


「邪魔ダ」


手を向けられた。瞬間、犬頭と自分の間に透明な壁が現れた。体の中が掻き回されたような感覚がして、吹き飛ばされる。軌道上にいたAIや仲間を薙ぎ倒しながら、地面にぶつかった。


「がっ⋯⋯」


パワードスーツがなければ、体中の骨が折れ、地面に体が削られていただろう。


「トウマさん、大丈夫ですか」

「危ないから来るな」

「私の方が強いですよ」

「はっ、確かにな」


あたりではレイやリネが戦っている。だが、レオが見つからない。やっぱり、これはレオが仕組んだことか?


「マキナ、あいつを倒さないとこのままじゃ負ける。俺と一緒にあいつを倒そう」

「もちろんですよ」


ともに駆け出し、犬頭に近づいた。再び手のひらを向ける。しかし、発動しなかった。


殺せる──────


だが、犬頭は予想外の行動をとった。


「アオオオ──────ンッ」

「なんだ!?」


犬頭は痙攣していた。顔を覆い、今にも崩れ落ちそうだった。


「遂二見ツケマシタ、マスター。アナタノ『探し物』ヲ⋯⋯」


何故感傷に浸っているのかは知らないが好機。今攻めるしかない。短剣を取り出し、スイッチを押す。首に向かって振り抜いた。


「私ノ感動的ナ心ヲ邪魔シナイデクダサイ」


切り落とす直前、犬頭が呟いた。手のひらの奥が動いたように見えた。見えない壁が眼前に広がり、俺を弾き飛ばす。しかし、持っていた短剣は手のひらに吸い込まれるようにして離れていく。どうして短剣だけ引っ張られていくんだ。いや、よく見ると、地面から黒い粉が吸い上げられていっている。あれは一体⋯⋯?


犬頭の手は有機物だけを弾くのか?

いや、それだったら炭素が含まれている短剣も弾き飛ばされていなければおかしい。

もっと他に、短剣と俺で決定的に違うことがあるはずだ。それがなんなのか。あの手のカラクリを解明しなければ負ける。


それに犬頭は向こう側から攻撃はしてこない。


「トウマ君」

「レイさん⋯⋯」

「大丈夫かい?」

「まあまあです」

「レオを見なかったかい」

「いや、見てません。それより、あの犬頭が『探し物』って言いました」

「探し物?」


話しながら近寄ってくるAIを破壊する。


「まだ何かはわかりませんけど」

「あいつは君に任せる。私はレオを探すよ」

「了解です」


レイと別れ、マキナを探した。マキナは顔を覆ってうずくまっていた。


「大丈夫か、マキナ」

「放っておいてください」

「どうした?」

「目が、赤く光ってしまって⋯⋯」

「⋯⋯わかった。ここに居ろ。俺が犬頭を倒す」


犬頭の手のひらのカラクリはまだわからない。これから模索していって、倒さなければならない。


「おい、犬頭」

「ナンデスカ」

「お前らの言う、『探し物』ってなんだ?」

「マダワカラナイノデスカ⋯⋯」


俺の質問に呆れたように呟く。まだわからない?

まるでずっと一緒にいたような口ぶりで話している。いや、今はこいつを倒すことが優先。


ホルスターからSPF9を抜き、エネルギー弾を放った。透明な壁で止めずに、体を逸らすことで避けた。エネルギー弾には透明な壁を使わない。実体があるものだけを弾くのか?


だとしても、短剣が吸い込まれたことに説明はつかない。それに、黒い粉が吸い上げられたことにも説明がつかない。


今は短剣は地面に落ちている。手のひらは常時発動ではなくて任意で発動するものだと推測できる。


「早ク退イテクダサイ。マスターガ喜コバレルオ顔ガ見タイノデ」

「その探し物が欲しいなら、俺を殺してから行きな」

「初メカラソノツモリデスヨ」


エネルギー弾に透明な壁が通じないなら、エネルギー弾を囮にして、俺が突っ込むか。


時間をおいて、四発撃ち、猛ダッシュした。このまま距離を詰めて殺す!


しかし、犬頭は手のひらをかざした。エネルギー弾を器用に避けながら、透明な壁が構築された。俺はそれ以上進むことができず、弾き飛ばされる。


だが、短剣や黒い粉が浮き上がり、犬頭の手のひらに向かって飛んでいった。


───────今ので分かった。あと少し頭を捻ればすぐに答えは出たはずだったのに。


「間抜けだな」


呟いて、近くに落ちている歪んだ鉄パイプを拾った。一発勝負だ。


「ソノヨウナ棒で私を倒セルトオオモイデ」

「黙れ犬頭」


パワードスーツの機能を利用して、五メートルはジャンプし、頭を串刺しにしようとした。が、それを見越した犬頭は透明な壁を展開した。しかし、今度は弾き飛ばされなかった。鉄パイプの先が手のひらにくっついていた。俺はそれにしがみつくことで、弾き飛ばされることを回避したのだ。


「ぐっ」


握力を全開にし、少しづつ前に進んでいく。一センチでも進む度に、強烈な眩暈にさらされる。近づけば近づくほど、壁がより強固になっていく。これがあいつの攻略法。


あいつの手のひらのカラクリは磁石だ。磁石は鉄などを引き寄せる物。だから、短剣や鉄パイプが手のひらに向かって飛んでいったのだ。地面から吸い上げられていた黒い粉は地面に含まれていた砂鉄だ。


しかし、何故俺が弾き飛ばされたのかまでは説明できない。しかし、磁石だとわかればその現象の説明も簡単だ。

磁石は微弱ながら水を弾く性質がある。人間の体内にある水分は60から70%だ。超強力な磁石を使えば、人間を吹き飛ばすほどの威力が発揮される。元の世界では人間を弾き飛ばすほどの磁石など開発されていない。だが、この世界だと存在しているのだ。


また一歩、一歩ずつ前に進む。


「ヨウヤクワカリマシタカ」

「だいぶ簡単だったぜ」

「減ラズ口ヲ」


不意に、犬頭が磁石の機能を停止した。当然、今まで宙に浮いていた俺は地面に落下する。落下の衝撃に思わず鉄パイプを取り落とした。


「しまっ⋯⋯」


透明な壁が俺を包み込んだ。距離が犬頭と近かったため、体内が揺らされるような感覚に陥り、より強く弾き飛ばされた。軌道上のAIを薙ぎ倒しながらうずくまっているマキナの横まで吹っ飛ばされる。


犬頭から遠ざかってしまった。だが、これで良い。


「コレデモウ、近ヅケマセンネ」

「俺が攻略するだけだと思ったか?」

「ナンダト」


俺はゆっくりと立ち上がった。俺の手には落ちてあった短剣がある。


「ソレヲ奪取スルタメダケニ⋯⋯」

「違ぇよばか⋯⋯こうするためだよ!」


叫ぶと同時、横にうずくまっていたマキナの首を引っ掴んで立たせた。そのまま、短剣のスイッチを押し、マキナの露わになった首すじに当てがう。


「どうしたんですか、トウマさん。離してください」

「ヤメロ」

「やめねぇよ。お前の言うマスターの『探し物』はこいつだろ?」


マキナが手を離そうとするが、がっちりとホールドする。


「取引だ。犬頭」

誤字・脱字報告を受け入れているので送ってくれたら嬉しいです。

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