間話3
「トウマ、あんた、運動してるの?」
「⋯⋯いや、あんまり」
「外、歩いて来なさい」
「⋯⋯ん」
慣れない運動靴を履き、外に出た。今は昼時。俺と同年代の人はおらず、年配の人や、子供連れの家族が歩いている。近くの公園に行き、景色を見ながらぶらぶらと歩く。
季節は十月。まだ暑さが残る。
母親は、俺が異世界転移してることを知らないため、俺がグータラしていると思っているのだろう。実際は動きまくっているのだが。
ベンチに座り、小鳥の世間話に耳を傾ける。
たまには、こうして外を出歩くのも悪くないかもしれない。
◇◇◇◇◇◇
いつまでこうしていただろうか。
俺の前に、二人の男女が現れた。男は髪を染めており、チャラい印象を抱く。女も髪を染めているのか、やたらと発色のいい茶髪の髪を揺らしていた。
俺の心臓が大きく跳ねる。息が詰まった。
その二人が来ていたもの。制服だ。色からして、俺と同じ高校の制服。
「⋯⋯ぁ」
服を鷲掴んだ。汗がぽたりと流れ落ちる。
あの時の情景がリフレインする。蹴られた腹。大きな青アザ。酸っぱい口の中。
俺は異世界を旅して来たことで、強くなっていると思っていた。それは体だけだった。
心の方は、未だ震えているらしい。
俺は逃げるように家に帰った。
◇◇◇◇◇◇
家に帰るなり、布団の中に潜り込んだ。忘れたくても忘れられない光景が頭の中に広がる。
母親の心配する声が聞こえるが、返事をする余裕はない。
そういえば、今日は転移する日だ。大体、同じような感覚で転移することがわかっている。
転移してもいい。だから、この光景を忘れたい──────
すると、俺の体の中から、淡い光が漏れ出した。




