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異世界冒険奇譚〜異世界行ったけどイージーじゃなかった〜  作者: ああるぐれい
AIに支配された世界

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第十六話

(篠村トウマ視点)



リネとレイを残して、マキナと階段を駆け上がる。今いるのは十三階だ。


足をとめ、周辺を見渡す。

前はここに『マスターサーバー』がいた。曲がり角は無くなっていた。俺と戦った戦跡が今も残っている。ここにはあの時の嫌な気配はしなかった。


「どうしたんですか?」

「いや、ここで『マスターサーバー』と戦ったなって⋯⋯」


俺が言い淀むも、マキナは先を急いでいた。


「トウマさん?」

「ごめん、行こうか」


再び階段を駆け上がる。六十階、七十階と登っていくが、一向にAIは出てこなかった。


「不気味だな。どこにもAIがいないなんて」

「そうですね。でも、こっちの方が楽ですよ」

「はは、確かに」


休憩がてら歩いて階段を登り、八十階についた。そこは、二階や三階の間取りとは違っていた。普通は、部屋が壁で遮られており、オフィスのような感じだった。


だが、八十階は壁は無く、ただの一部屋になっていた。階段はずっと遠くにあった。七十九階までは、非常階段のように繋がっていたのに。


階段の近くまで行くと、一人のAIが立っていた。鳥の頭をしたAIだ。手には六尺棒が握られている。


鳥が俯いていた顔を上げると、マキナと俺をまっすぐ見据えた。猛禽類を思わせるような見た目をした頭だった。鋭く刻まれた目付きには一筋の光があった。直後、腰を落として足を開き、持っていた六尺棒を一回転させ、後ろに流した。


完全に戦闘体勢だ。俺も銃を抜き、ショートソードを構える。

マキナも右手をドリルに変形させ、背中から何本もの触手を顕現させる。


「ココマデクルトハ⋯⋯」


鳥は驚いているようだった。下でクレルと猿が防衛していることを知っての発言だろう。


「ビビったか?」

「アァ、ソウダ。ダガ、貴様ラガコレヨリ先ニ足ヲ踏ミ入レルコトハナイ」

「なら、ボコボコに⋯⋯」

「行きますよ!」

「あちょ⋯⋯!」


マキナがフライングして鳥に突っ込んでいく。ドリルと化した右腕を鳥の顔面に突き出す。六尺棒で受け流し、手首を返してマキナの顔面を殴打した。その攻撃の後隙に俺がショートソードで攻撃を差し込む。これも防がれ、腹に重い前蹴りを喰らい、後ろに吹き飛ばされた。


手強いな。


「マキナは右から攻めてくれ!」

「はい!」


左右に分かれ、挟撃した。しかし、AIの標準装備であろう反重力機構が鳥の足から起動し、避けられる。鳥は俺ら二人の頭上を通り様に俺の脳天を強打した。


脳みそが揺れ、壁に体をもたれる。ダウンしている間にマキナが仕掛けた。


鳥頭が着地する隙を狙って触手を伸ばし、体を巻き取ろうとした。


が、鳥頭は六尺棒を囮にして触手から逃れる。巻き取った六尺棒の真ん中に力をこめ、二つにへし折った。


「くっ⋯⋯」


マキナが辛そうな表情を見せた後、背中から蒸気が漏れる。どうやら体が熱を持ったようだ。鳥頭は排熱する隙は与えないようだ。連続で動くと体に負担がかかるだろう。


ここからは──────


「俺が相手だ!」


動きが鈍くなるマキナに折れた棒で攻撃を加えようとする鳥頭にタックルした。



◇◇◇◇◇◇



(柊レイ視点)



「終わったね⋯⋯」

「⋯⋯あぁ」


私がかけた声に、リネは数秒遅れてから返事を返した。


「どんな気持ちだい?」

「まぁ、なんというか、スッキリしたよ」


リネは床に転がるクレルの首から肩時も目を離さなかった。表情もどこか暗い。鞘に納めたサーベルの柄には、未だ手をかけている。


そんなリネに声をかけようとした。その時だった。


自分たちが入ってきた扉の方から異音がした。そちらを見ると、扉がひび割れようとしていた。戦う前に配置しておいた隊員を呼び戻す。


四人で扉を睨み続ける。異音が止んだ。瞬間、扉が崩壊した。濁流のようにAIが流れ込む。即座に武器を抜き、向かってくるAIを叩き切った。正確に、一撃で。


「あたしが前に出る! レイは休んで!」


言いながら飛び出したリネは、まっすぐにAIに突っ込んでいった。持っていたのは、サーベルでは無かった。私の短剣でも無かった。


持っていたのは、クレルの大剣だった。歯を食いしばりながら、両手でしかと握りしめ、刀身が床と水平になるようにし、横薙ぎを繰り出そうとしていた。


「無理をするな!」

「あたしの方がアンタより力持ちだろ!?」


リネの腕が動いた。横に腕を振り抜く。それにゆっくりと、だが確実に大剣の切先が呼応する。遠心力の力で、力と速度が上乗せされ、AIと刀身がぶつかった頃には、凄まじい破壊力を秘めていた。一薙ぎで十体以上のAIを両断した。


弾けるスパークが明滅し、目の前で雷が落ちたようだ。


二太刀目を繰り出そうと余った勢いを殺そうとして踏ん張った。だが、勢いに負け、たたらを踏んだ。剣先が床に着き、無防備になった。


すぐさまリネに駆け寄り、体を支え、前線から引かせようとする。


引きずる手をリネが掴んだ。


「ダメだ! ここを通したら『マスターサーバー』の戦力を増やすことになるだろ!」

「そうだ。リネは休んでいてくれ。私が前に出る」


私は再び短剣を抜き、AIに向かって飛び出した。



◇◇◇◇◇◇



(篠村トウマ視点)



俺と対峙している鳥頭は二つに分たれた六尺棒を、太鼓のバチのようにして持っていた。


俺もショートソードを抜き、いつでも反応できるようにしている。鳥頭の目はどこを見ているか見当もつかない。黒に覆われているため、俺のどこを狙っているかもわからない。


なら、こっちから仕掛けるしかない。ショートーソードを逆手に持ち、胸部を突き刺す。その直前、棒で刺突のピンポイントを防いで見せた。そのままもう片方の手に持っていた棒で俺の側頭部に叩きつける。


視界がぐらつくが、なんとか堪え、俺を打ち据えた棒をしかと掴み固定した。ショートソードを捨て顔面を殴りつける。ショートソードが地面につく直前、サッカーのトラップの要領で足の甲に乗せ、浮き上がらせ、再び手にした。順手に持ったまま、柄の根元にあるスイッチを押す。握る手に微細動が伝わる。


煌めく速さで振り抜き、二つの棒を両断した。手に残った棒を使えないものと判断したのか、鳥頭は投げ捨て、拳を固めた。それを見た俺もショートソードを仕舞った。


俺はどちらかと言えば、武器を使うより、素手で戦う方が得意だ。相手が武器を持っていたらこっちも武器を使うが。


先に仕掛けたのは鳥頭からだった。右ストレートを放ってきた。それを極小の動きで避ける。瞬間、完全に理解した。


徒手格闘は、俺の方が強いと。


鳥頭は芸もなくもう一度右ストレートを放つ。俺はそれを体を捻って回避し、左脇で挟んで腕を固定した。そのまま体重を掛け、肘を反対側にへし折る。怯む鳥頭に間髪入れず、右腕で振り向きざまに肘うちを顔面にかます。


折った腕を引っ掴み、左ストレートを顔面に叩き込む。


「グウウ⋯⋯」


苦痛の声を出しながらも、鳥頭はまだ諦めていなかった。


折れた腕を取り外し、俺と距離をとる。片腕だけになった鳥頭は、隙だらけだ。


「逃げないのか?」

「ココデ逃ゲルワケガナイダロウ」


鳥頭はどこか疲れているようだ。


こいつをどうやって殺すか。一番楽な方法は頭と胴体を切り離すこと。なら⋯⋯。


俺がとどめを刺しに距離を詰めると、鳥頭はハイキックを浴びせかけてきた。流れ星のように飛んでくる蹴りを、手で軌道ををずらすことで避けていく。


懐に潜り込んだ瞬間、残った左腕を掴んだ。


すぐさま腕を下に引いた。同時にジャンプ。強制的に屈ませ、低い位置にきた首を両足で挟み込んだ。腕から手を離し、体を大きく投げ出して自分の体を回転させた。


勢いよく体を振り、投げる瞬間、足に全力を注ぎ込む。挟んでいる首がメキリと音を立てて凹む。


「ヤメロ⋯⋯」


瞬間、素早く足を振り抜いた。


結果、鳥頭の頭と胴体をつなぐ部分が耐えきれず、耳を劈くような悲鳴を上げながらちぎれた。


断面から配線が飛び出し、目まぐるしく輝いていた。


鳥頭の目は光らなかった。


「大丈夫か、マキナ」

「はい。私は大丈夫です。それより、トウマさんは?」

「俺も大丈夫だよ。⋯⋯次で、『マスターサーバー』が相手だな」


俺の言葉にマキナが神妙に頷く。


「これで終わるんですね。私の⋯⋯」


そこまで言いかけたマキナは、数迅動きを止めると、何事もなかったかのように頭を振った。


「トウマさん。行きましょう」



◇◇◇◇◇◇



閑静な階段をマキナと二人で上がる。マキナは何かを言いかけた後から終始無言だ。


今から『マスターサーバー』と戦う。負けることはない。きっと勝てるから。


だが。


俺の先を行くマキナの背中を見る。


『マスターサーバー』を倒したら、マキナは死んでしまう。そう考えると、今すぐに手を伸ばしてマキナを引き留めたかった。だが、それは決してしてはいけない。俺はマキナと誓ったからだ。約束したから。絶対に『マスターサーバー』を倒すと。


頂上である九十階に着いた。そこは広い部屋だった。どこまでも白く、壁は全て窓ガラスになっていた。


しかし、部屋の中央には黒い立方体が置いてあった。


「マキナ」

「わかってます」


黒い立方体に警戒しながら、それに近づいた。あと五メートルという場所で。


「ここまで来たか」


立方体から声が聞こえた。


「なんだ。お前」

「私が『マスターサーバー』だ」

「お前が?」


こいつが『マスターサーバー』⋯⋯。なら、俺が戦ったあの六本腕のAIは一体⋯⋯?


「驚いたかい。あれは私の体だよ。それに、待っていたよ。ずっと」

「待ってた?」

「そうだ。君を殺し、マキナからメモリを奪うんだ」


マキナからメモリを奪う?


「トウマさん。取り合っても無駄です。早くコイツを殺しましょう」

「⋯⋯そうだな」


マキナの言葉にショートソードを抜いた。マキナも臨戦体勢にはいる。

駆け出す瞬間、『マスターサーバー』が口を開いた。


「実の父に向かって酷いことを言うね、君は⋯⋯」


その言葉に足が止まる。


今、あいつはなんて言った?

『マスターサーバー』がマキナの父親?

嘘をついたのか。いや、メリットがない。それより、マキナが動揺していないか⋯⋯。


横にいるマキナを見る。マキナは動揺などしていなかった。それどころか、今まで見たことがない表情だった。人間でも再現し得ないような、そんな顔だ。


だが、俺にはその意図が読み取れた。


「マキナ、言ってやれ」


マキナは俺の言葉に口を開いた。


「あなたは私の生みの親なのかもしれません。ですが、私の親はあの二人です。空っぽだった私を愛情で満たしてくれたあの二人です。あなたなんかは、親失格です!」


声を張り上げるマキナ。言い切ると同時、『マスターサーバー』につっこんでいった。俺もそれに続く。


しかし、後ろの窓を突き破り、夥しい数のAIと銃を搭載したドローンが飛び出してきた。

それらがマキナに向かって飛んでいく。


俺の方には何一つ妨害を加えてこない。AIはもちろんのこと、ドローンもAIを搭載しているはず。つまり、『マスターサーバー』を殺せば取り巻きたちも動かなくなる。


今はマキナを放って『マスターサーバー』を殺すべき!


ショートソードのスイッチを押し、切れ味を増幅させる。

切り掛かる寸前、何者かが割って入り、ショートソードを受け止めた。


「お前⋯⋯」


目の前にいたのは、かつて俺と戦った六本腕のAIだった。


「お前も『マスターサーバー』なのか?」


すると、どこからともなく声が聞こえてきた。


「私は体担当だ。そして、立方体が本体だ。私は動けないからな、遠隔操作可能な体を作ったのだ」


言い終え、手に持っているハンマーで俺を殴りつけた。当たるギリギリで腕で頭を守る。衝撃がパワードスーツを突き抜け、腕にも伝わってきた。


「ぐっ⋯⋯」


衝撃で痺れた腕を庇いながら、バックステップで距離をとる。


だが、マスターサーバーは銃を持っている。つまり。


「蜂の巣になれ」


引き金をひき、鉛玉が飛び出しきた。避けるのが間に合わず、当たってしまった。貫通こそしないものの、着弾の衝撃が全身を叩く。


「痛ってぇ⋯⋯!」


体を投げ出し、射線から大きく外れる。すぐさま立ち上がり、SFP9で応戦する。だが、こっちは拳銃で、相手はサブマシンガン。いくらフルオートでも連射力では負けてしまう。


ダメージ覚悟で距離を詰め、切り掛かる。

ショートソードの切れ味を増幅させ、右側の一番上にある腕を切り飛ばした。ハンマーを持っていた腕だった。切り取られた腕が宙を舞い、床に落ちて無機質な音を立てる。


瞬間、マキナを攻撃していたドローンやAIの全てがこちらを向いた。ドローンが新幹線のような速度でこちらに向かってきて、ぶつかった。


直後、AIが俺にタックルをかまし、窓際まで押し込む。そのAIの首を掻っ切り、前線に戻ろうとするが、次のAIがタックルをかまし、再び窓際に叩きつけられた。窓ガラスが悲鳴を上げながら、ヒビ割れる。


別のAIがぶつかり、さらにヒビが大きくなる。


コイツらの狙いは──────


わかった刹那、ドローンが窓ガラスに突っ込んで行き、完全に割った。支えを失った俺は地上二百四十メートルから落下した。

誤字・脱字報告を受け入れているので送ってくれたら嬉しいです。

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