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異世界冒険奇譚〜異世界行ったけどイージーじゃなかった〜  作者: ああるぐれい
AIに支配された世界

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第十四話

俺たちは自衛隊なため、快く迎え入れられた。自衛隊にとっては仲間が増え、戦力が増える。避難してきた住民は守ってくれる人が増えるのだから、当たり前だった。


「君たちはどこからきたんだ?」


休憩していると、ここを守っていた自衛隊の一人に声をかけられた。


「隣町からですよ」

「あの最前線からか。大変だったろう。ここは近いけど、あまりAIはいない。ゆっくりして行けよ」

「はい、ありがとうございます」


四十代ぐらいの男性だった。おそらくここを指揮している立場だろう。



◇◇◇◇◇◇



次の日、避難所のラジオから『マスターサーバー』と名乗る者が、とある宣言をした。


「この国の政府機関を掌握した。今から! 私たちAIが、全てのことを進める!

何もかもが、AIの思うがままである!」


それだけを言い残し、ラジオ放送は切れてしまった。予想外だ。こんなに早くAIが行動を移すとは考えられなかった。避難所にいる住民体たちが、ラジオ放送の内容を聞き、阿鼻叫喚の声を上げる。それが伝播していき、次第に声が大きくなっていく。


「どうする」

「どうするって⋯⋯」


元々ここにいた自衛隊の人たちも、混乱しているようだった。だが、持っていたトランシーバーから一つの声が出た。


『誰かいるか!? いたら聞いていてほしい。我々は、国会議事堂に巣食うAIどもを攻め滅ぼす。今ある全てを使って攻める。自衛隊がいるならば、きてほしい。今から⋯⋯』


とても大事なことを伝えようとしていたようだが、途中で切れてしまった。だが。


「兄貴!」

「あぁ、いくぞ」


二つ返事で通じ合い、すぐさま出かける準備をする。


「待て、行くのか?」


レオが呼び止める。

俺は、カバンに食料や弾薬を詰め込みながら。


「当たり前だ。国のためなら、俺は戦うよ。君たちはここに残って、住民を守ってくれ」

「⋯⋯お、おう」


カバンを背負い、先に出て行った兄を追いかける。


兄はひと足先に、車両に乗り込んでいた。自分も乗り込む。


「交戦に間に合うか?」

「いや、それは厳しいが、できるだけ早く行く!」


兄はエンジンを全開にして、荒れた道路をかっ飛ばした。



◇◇◇◇◇◇



国会議事堂に到着したのは、あの無線が入ってから三日後だった。

既に国会議事堂の周りの地形はクレーターが何個もできてあり、歪みに歪んでいた。


「二人だけか?」


車両から降りると、声をかけられた。


「はい。俺ら二人だけです」

「よく来てくれた。感謝するよ」


そう言って、俺と兄の方をポンと叩いた。

連れて行かれたのは、近くのビルだった。ここを拠点としているらしい。今いるのは、三百人ほど。


対して、AIは既に五千体を超えているそうだ。眩暈がするほどの戦力差。これをひっくり返すのは至難の技だ。


だが、作戦はあるという。


自分たちが国会議事堂に近づくと、中からAIが湧き出てくるため、それを一斉掃射で片付け中に突入する。そして、『マスターサーバー』を打ち取るという作戦だ。成功する確率はまあまあだ。AIの供給が追いつかなくなったタイミングがあれば、その時がベストだが。


今ある武器は89式5.56mm小銃と、12.7mm重機関銃 M2とパンツァーファウスト、手榴弾だ。これだけで戦わなければならない。


「これで勝てなかったら⋯⋯⋯⋯」


俺の口からこぼれた呟きは、最後まで言い切ることはなかった。言葉にしてしまうと、本当になってしまうと思ったからだ。頭を振り、ネガティブな考えを忘れる。


二時間後に作戦を実行しているという。今までに何回かこの作戦を実行していて、国会議事堂に侵入したことはないが、AIの数は減らしてきているらしい。


作戦が実行される間にも、少しづつ人数は増えていきてる。ごくわずかだが、一般人もやってくるのだ。


その時がくるのを、じっと待った。



◇◇◇◇◇◇



「今から作戦を実行する!」


この場で指揮をとっているであろう人物が号令を出した。それに従い、拠点から国会議事堂に向かって進軍した。


拠点から国会議事堂まではおよそ三百メートル。縦隊二列が五セット。俺はその真ん中だった。横には兄もいる。


「兄貴、気をつけてくれよ」

「俺のことは心配せずに、自分のことを心配しろ」

「そこ、喋るな」


お叱りを食らい、口を閉じる。


やがて、国会議事堂が見えてきた。それと同時に、AIが湧き出してきた。


「「「人類ヲ排除シマス」」」


呪いのようにAIから吐き出される言葉を銃声でかき消していく。用途とは違う使い方がなされるパンツァーファウストが飛んでいく。命中率は低いが、宇治のように湧いて出てくるAIを前にすると、関係なかった。


重戦車の装甲をもぶち抜く威力があるため、直撃しなくても多くのAIに被害を与えられた。


「前進だ!」


俺の役割はパンツァーファウストの弾幕から抜け出したAIを撃ち殺すことだ。だが、俺以外にも同じ役割の人がいるため、それすらもすることがなかった。


蜂の巣にされていくAIを眺めていると、湧き出てくるAIの風貌が変わっていった。ただ突っ込んでくるAIとは違い、国会議事堂の近くにとどまり、こちらを見続けていた。


「とうとう学習したか?」

「今がチャンスなんじゃないのか?」

「⋯⋯進むぞ」


突撃してこなくなったが、数は少ない。このまま──────


「危ない!」


突然兄が叫び、俺の服を引っ張り転ばせた。直後、黄色く光るビームが俺の頭があった場所を通過していく。


視界が赤に染まっていく。背中に生暖かい感触を感じた。

縦隊はAIと衝突してから崩れていたが、俺は列の真ん中にいた。俺の後ろには人がいたということだ。


「嘘だろ⋯⋯」


俺の横にいた兄が絶句する。

鳥肌が立つのを感じながら、後ろを振り返る。急に人が体を預けてきた。しゃがんでいる俺に覆い被さってきた。その人の首から上、頭は無くなっていた。


噴水のように断面から鮮血が噴き出る。


「ぐっ⋯⋯」


吐きそうになるのをなんとか堪え、死体を退かせた。


なんで──────

いや、原因はあの黄色い光だ。あれがAIの武器だっていうのか。銃弾より大きく、破壊力がある。そんなものを撃つAIが少ないとはいえ、何十体も。こんなのどうやって勝てば⋯⋯。


「撃てえ!」


男の号令が響いた。それと同時に、銃声が鳴り響く。


「レイ、立て! こんなところで放心してんじゃねえ!」


肩を揺さぶられ、ハッとした。すぐに立ち上がり、銃を持つ。


「兄貴⋯⋯」

「ショックなのは分かるが、後にしろ! 今は、AIを倒すことだけを考えるんだ!」


次々とAIから放たれるビームが、仲間を撃ち抜いていく。


「どうやって進めばいいんだよおおお」


誰かの悲痛な声が聞こえてきた。

乗ってきた車両で突っ込むか。いや、この戦場からは遠すぎる。何かないかと視線をめぐらせる。そこには、先ほどの死体があった。


ごくりと息を呑む。死体に手を伸ばす。その手は、かすかに震えていた。力強く手を握った。手のひらが白くなるほどに。


「ごめん」


死体を掴み、引き上げ、俺の前に掲げた。勢い良く走り出す。


「進めえええぇええ!!」


仲間の士気を上げるため、自分を鼓舞するため、喉が張り裂けるほどに声を張り上げる。


国会議事堂までおよそ五十メートル。駆け抜ける。ビームが俺を貫かんと集中砲火を浴びせてくる。俺にビームのリソースが割かれたため、後ろにいる仲間が自由になる。後ろからパンツァーファウスト、12.7mmの鉛玉が飛んでくる。俺の横をすり抜け、AIに巣込まれる。


残り十メートル。



ボロボロになった死体を打ち捨て、背中に担いでいた89式5.56mm小銃を手に持つ。


残り一人となったAIと対峙する。銃底でAIの顎を打ち据え、転倒させる。無防備になった脳天に一発。


「突っ込め!」


その場を制圧した俺の叫びに、追従してきた仲間が次々と国会議事堂になだれ込む。

俺もそれに続いた。


国会議事堂の中には、AIがちらほらいるだけだった。それもただ突っ込んでくるAIだ。淡々と処理しながら、奥へ進んでいく。


進んでいると、突然、兄が俺を引き留めた。


「動くな」

「どうして?」


兄の方を振り向く直前、右側の壁から一瞬、ほんの一瞬だが、鈍色の一筋の光が見えた。

直後、前にいた仲間の上半身が空を舞った。スプリンクラーのように血を吹き散らしながら、あちこちに飛んでいく。動力を失った下半身が、剣が薙いだ衝撃で揺れ、嫌な音を立てて崩れ落ちる。


壁の真ん中が切り取られ、バラバラになって崩れ落ちる。中から出てきたのは、六本の腕をもち、顔がないAIだった。それぞれの腕に、武器を持っていた。


俯いていた首を持ち上げ、天井を見上げる。


「難しいな⋯⋯」


どこからか声を出した。ゆっくりと、顔を正面に向ける。


怖気が走った。全身が粟立ち、息が詰まる。直感で分かった。これが、『マスターサーバー』だと。


「撃て!!」


弾かれたように銃を構える。直後、鉛玉が流星群のように飛んでいく。だが、効果はなかった。銃声が飛び交う中、兄の声が聞こえた。襟を掴まれ、後ろに引きずられる。


「逃げるぞ!」


二人で国会議事堂を抜け出し、乗っていた車両に乗り込む。


「ありゃ敵わねえ」

「銃が効かないなんて⋯⋯」


兄がエンジンをかけ、背を向け走り出す。背後で、国会議事堂で爆発が起こった。

黒煙と砂煙が立ち上る中、姿を現したのは『マスターサーバー』だった。


ミラー越しに、目が合ったような気がした。



◇◇◇◇◇◇



リネとレオがいる避難所に帰ってきた。とっくに夜になっていた。


「どうでしたか?」


待ってましたとばかりにレオが俺に詰め寄った。


「負けたよ。俺らには敵わなかった」

「⋯⋯そうですか」


汗を拭いてから布団に潜る。とにかく、今は寝たかった。ただ、どうしても寝付けない。心の中がモヤモヤする。あの戦場から逃げてからずっと何かがモヤモヤする。『マスターサーバー』に勝てないから逃げ出した。そうだ。逃げたのだ。俺は逃げた。兄と一緒に。あんなのと戦うのは二度とごめんだ。


だが、俺は逃げるのはなんか違う。元々、この街は、国は俺たち人間のものだ。人間がAIを作った。そんなAIに俺たち人間が勝てないはずがない。自衛隊は潰された。新しい何かが必要だ。人間の希望の光となるものが。


誰もそれを作ろうとも、なろうともしない。なら、俺がなろうじゃないか。俺が作ってやる。


既に周りからは寝息が聞こえている。俺は周りを起こさないようにして、兄を起こし、リネ、レオも起こした。


「俺は、ここを出て、AIと戦おうと思う」

「は⋯⋯?」

「何言ってるんだ」

「寝ぼけてんの?」


三人が俺の正気を疑うような発言をする。


「AIと戦うための組織を作るんだ。みんなはそれについてきてほしいと思ってる。もちろん強制じゃない。残りたい人はここに残ってくれれば良い」


俺の言葉に、三人が黙る。一番最初に口を開いたのは兄だった。


「弟がそう言ってんなら、ついていかないとな。兄貴として。⋯⋯良いぜ、やってやるよ」


次に話したのはレオだった。


「俺はレイさんとケンジさんに恩があるので、どこまでもついていきますよ」


兄とレオは覚悟が決まったようだ。皆してリネを見る。リネは俯いたままだった。

やがて、ポツリと呟いた。


「行くよ。あたしも行く。これでも自衛隊の人間だ! 死ぬまでAIと戦ってやるよ!」

「よし。じゃあ、今からここを出よう。皆が寝てるから混乱を招かないからね」


立ちあがろうとする俺を、リネが呼び止めた。


「ところで、組織名って何にするんだ?」


顎に手を当てる。少しの間、思考を巡らせた。だが、すぐに思いついた。俺の好きな映画のフレーズを思いついたからだ。


「⋯⋯『レジスタンス』⋯⋯かな」


──────荷物をまとめ、出て行こうとすると、巡回中だった自衛隊の一人に話しかけられた。


「あ、あの俺も仲間に入れてください!」


そう言われ、頭を下げられた。


「聞いてたの?」

「あっ、すみません。聞こえちゃってて⋯⋯。でも、俺もその仲間に入って、AIと戦いたいです!」


暗くてよくわからないが、好青年だということはわかる。


「名前は?」

「自分は後藤ルカって言います!」


ついてこいとジャスチャーし、皆が乗っている車両につく。簡単な紹介をし、避難所を離れた。



◇◇◇◇◇◇



『レジスタンス』を結成してから三年経った。初めは五人だけだったが、同じ自衛隊の人たちや、同じ思いを持った民間人なども仲間にしていき、数百人に膨れあがった。


深夜だった。アイスコーヒーを飲み、一服していた頃だった。『レジスタンス』は地下で生活していた。急に地震のような揺れがアジトを襲った。


武装してすぐに地上に飛び出す。


そこには、『マスターサーバー』がいた。どうやら単独で乗り込んできたようだ。


「止まれ!」


銃を『マスターサーバー』に向けて言い放つ。ここで時間を稼いで、皆の到着を待つ。


「⋯⋯それで⋯⋯私が止まるとでも?」


跳躍し、上から襲いかかってきた。六本のうちの一本に握られている剣を振り下ろしてきた。持っていた銃で受け止めようとした瞬間、兄が割り込んできた。


「お前は民間人の避難を誘導しろ! ここは俺が食い止める!」

「俺も戦うよ!」

「邪魔だ」

「なっ⋯⋯」


兄は見向きもせず俺の体を押し除けた。


俺は、背を向けて駆け出した。俺が向かう先には民間人たちが車に乗せられていた。


「なるべく早く終わらせるぞ!」


避難誘導中に、何回も進撃が走った。だが、決して振り返らなかった。兄に言われたことを全力で遂行するつもりだからだ。


やがて、数分ほどで全員の避難が終わった。あとは兄と共にここを去るだけだ。


「兄貴!」


後ろを振り向いた。兄は動いていなかった。なぜか、背中から剣が飛び出ていた。それは血濡れていて、赤黒い光沢に包まれていた。立っていたが、崩れ落ちる。


『マスターサーバー』は最後まで立っていた。しかし、左膝がボロボロになっていて、満足に動けないようだった。だが、笑っているように見えた。


「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯殺す」


駆け出す寸前、ルカに飛びつかれた。


「待ってください!」

「どけ! 離せ!」


銃底で何度もルカを殴りつける。口と鼻から血が出るが、俺から離れなかった。


「あいつが逃げるだろうが!」


俺はルカを引き剥がすことを諦め、引きずっていくことにする。だが、左から強烈なパンチが飛んできた。ルカがしがみついているせいで避けられず、モロにくらってしまう。


倒れそうになる俺を巨大な手が襟を掴むことでそれを許さなかった。


「ケンジさんが時間を稼いだのは、レイさんに、オレたちに逃げてほしいからだ! 確かに殺されたのは悔しいし、怒る気持ちもわかる! だが、今は、ケンジさんの思いを優先しろ!」


レオに諭され、ささくれ立っていた気持ちが凪いだ。その隙に、俺を車両に詰め込んだ。


だんだん兄から遠ざかっていく。『マスターサーバー』は、兄の遺体の髪を引っ掴み、引き上げる。兄の顔を覗き込んだ。そして、投げ捨てた。


逃げる俺たちに背を向け、ゆっくりと帰っていった。


「殺してやる。絶対に⋯⋯!」



◇◇◇◇◇◇



目が覚めた。どうやら、私は寝てしまっていたようだ。既に夜になっていて、ほぼ一日を寝て過ごしていたようだ。食堂の方から皆の叫び声が聞こえる。寝癖を整え、食堂へ向かった。

誤字・脱字報告を受け入れているので送ってくれたら嬉しいです。

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