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異世界冒険奇譚〜異世界行ったけどイージーじゃなかった〜  作者: ああるぐれい
AIに支配された世界

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第十二話

バイクが完成したということなので、久しぶりにガルに会いに行くことになった。


「お久しぶりです」

「おう、来たか。ついに完成したぞい」

「これですか」


俺の目の前にあるのは銀色に塗装されたバイクだった。先端が少しだけ上に反れている。普通のバイクとは違い、タイヤではなく、反重力機構を利用して走るのだ。エネルギー弾と同じエネルギーが詰まったタンクが積んであり、それを消費して外に噴き出す反動で推進力を得る仕組みだ。

要するにロケットと同じ原理で進むということだ。


「もう量産体制に入ってる。人数分はちと難しいが一応二人乗りはできるからな」

「乗ってみて良いですか?」

「おう」


許可を得てバイクに跨った。まず座り心地が良い。シートのクッション性が高く、長時間運転していても、疲れにくそうだ。シートからハンドルまでの距離が短く、楽な姿勢で乗れる。一家に一台欲しいな。


これに乗って東京セントラルタワーに向かう。そこで『マスターサーバー』を倒す。ワクワクしてきたな。別に俺は戦闘民族じゃないけど。


「進捗はどうなんだ。オレはずっと籠ってっから、外のことなんてわからねえんだ」

「そうですね⋯⋯もうすぐで『マスターサーバー』を倒すことはできそうですよ」

「へえー、やるじゃねえか」

「ふふ、でしょう」


ガルの賞賛の言葉に鼻を高くする。これぐらいなら許されるだろう。なんせ俺は犬頭を倒した実績があるからな。褒められた倒し方ではないけど。相手の弱みにつけ込んで利用しただけだけど。


「お前みたいなチビが何ドヤってんだ」

「一応俺は貢献してますからね」


ガルと軽口を叩き合っていると。


『篠村トウマさん。至急、柊レイさんの元へお越しください』


放送が入った。どうやら俺を読んでいるらしい。しかし、何だろう。何かをやらかした記憶はないのに。



◇◇◇◇◇◇



「君には東京セントラルタワーに潜入してもらう」


開口一番、そう言われた。


「俺だけですか?」

「ああ、そうだ。大人数だと疑われるからね」

「でも、どうして?」

「『マスターサーバー』は東京セントラルタワーにいるとマキナ君は言った。あそこはすでにAIの手に落ちている。要塞化して構造が変わっているかもしれない。最終的には私たちはあそこに攻めるんだ、知っておいて損はないだろう?」


レイは交差した手の甲に顎を乗せながら言った。ほんの少し口角を上げながら。


「もう私たちの武器であるパワードスーツは敵側にバレている。もうスーツを着て潜入はできないから、生身で潜ってもらうよ」

「俺を殺す気ですか?」

「君は強いから、大丈夫だよ。さ、いってらっしゃい」

「今からですか!?」

「AIに変装するための服装は用意してある。頑張ってね」


こんな雑な任務の任せ方は果たして良いのだろうか⋯⋯。

渡された質素な服に着替えた。外に出る前に、自分の部屋へ戻った。


「どうしたんですか。その服装」

「東京セントラルタワーに潜入することになった」

「大丈夫ですか?」

「まぁ、多分大丈夫」


マキナと話しながら潜入の準備をする。ショートソードを腰に下げ、SPF9をホルスターに入れた。替えのマガジンは持っていかない。普通のAIは武器を携帯していないため、最小限の武器で行かないと、俺が人間であるとバレてしまうからだ。


個体識別番号と言う厄介な代物があるが、それはでまかせで良い。バレる前に情報をできるだけ多く持って帰れば良いのだ。


「行ってきまーす」

「気をつけてくださいね」

「おう」


マキナと言葉を交わしてから、外に出た。悲痛のAIに紛れるようにして歩く。

AIたちはどこへ向かっているというわけでもなく、ただ歩いているだけにも見える。


全員が無表情で前だけを見て歩いている。たまに子供を連れたAIに遭遇するが、時折喋るだけで、とても親子には見えなかった。


これが感情を持たないAIの姿。マキナを間近に見てきた俺にとっては信じ難い光景だ。クレルや犬頭は話が通じたが、あれは感情というよりも、狂信的な何かを感じた。これも感情の一つに数えられるのだろうが、俺はそれを感情の一つに数えたくない。

ずいぶん身勝手な考え方だと自分でも思うが。


さりげなく周りを観察しているうちに、東京セントラルタワーに着いた。正面玄関から入ろうとした。すると、門番のAIに止められる。


「一般ノAIが何ノ用ダ」


マズイ。どうやら普通のAIはこんなところには近づかないらしい。おそらく、プログラムが施されているのだろう。


「⋯⋯体が損傷したから、そのために来ました」

「部品ノ取替申請ヲシニ来タとイウコトカ」

「そうそう。それで来ました」


門番がそれっぽいことを言ってくれたので、乗っかることにした。

素直に道を開けてくれた。


中に入ると、何人かのAIがいた。玄関から見て右側には受付があり、小洒落た服を来たAIが立っている。


左側には椅子が設置されており、壁にはテレビが取り付けられていた。画面には今までの歴史についての番組が流れていた。その後には『マスターサーバー』を賞賛する番組に切り替わる。


奥の方にはエレベーターと階段があった。階段に向かって歩き出す。すると、受付に立っていたAIに呼び止められた。


「ドンナ御用デショウカ」

「部品の取替申請に来ました」

「ソレデシタラ、三階ニ向カッテクダサイ」

「はい」


エレベーターには乗らなかった。バレた時に物理的に閉じ込められる可能性があるからだ。階段を登り、三階に着いた。だが、俺の目的はそこじゃない。三階を通り過ぎ、上に上がる。すると、上から巨大なAIが降りてきた。クレルだった。咄嗟に下を向き、目を合わせないようにする。すれ違う。


リネに切り落とされた左手は、元通りになっている。


ふと、クレルがつぶやいた。


「感ジタコトガアル気配ダ⋯⋯」


その言葉に足をとめた。シャツの裾の下に隠してあるSFP9に手を添える。


「オ前、ドコカデ見タコトガアルヨウナ気ガスルゾ」


そう言って振り向いた。クレルは完全に俺の背中をとらえているようだ。右手でショートソードの柄を、左手でSFP9を握り締める。


「顔ヲ見セロ」


息を一つ。ホルスターから、鞘から、俺の武器を抜き取った。振り向きざまにエネルギー弾を二発。

ショートソードで丸太のように太い足を切り付ける。


俺の不意打ちにも、クレルは動じなかった。


「侵入者ダ」


腰に下げていたトランシーバーに言葉を一つ呟いた。それと同時に、俺が入ってきた正面玄関に分厚いシャッターが降りる。


上の階から、AIたちが降りてくる足音が聞こえてくる。下からクレル、上からAIの大群。まさに前門の虎、後門の狼。しかしここは狭い階段。クレルの大きい剣は振り回せない。


俺は上にいく選択をした。


クレルと戦うより、普通のAIの大群と戦った方が勝算があると判断したからだ。


二弾飛ばしで階段を駆け上がる。階段から飛び降りるようにして襲ってくるAIたちを撃ち抜き、切り飛ばしながら、上を目指す。


このタワーにフロアが何個あるのかわからない。が、多分『マスターサーバー』がいるのは最上階だろう。一番世界を見渡せて、一番安心できるからな。ただのメタ読みだが。


倒したAIは階段に放り投げる。数多のAIの亡骸が踊り場に溜まり、即席のバリケードになる。これでクレルの追跡も少しは遅れるだろう。


壁にはここが何階かが示されているプレートがかかっていた。十三階まで上った時、背中に悪寒が走った。曲がり角の死角に、強烈な殺気を放っている誰かがいた。


足が止まる。冷や汗が額から吹き出る。


瞬時に後ろに飛び退った。鈍色の光が一閃、曲がり角をバターのように切り落とす。

切り落とされた曲がり角の後ろには、奇妙なAIがいた。


目、鼻、口、耳、全てがあるべき場所にない。どこにも見当たらない。顔はただのっぺりとしている。そして、六本の腕が生えていた。ひとつの腕には剣が、斧が、槌が、鞭が、槍が、銃が握られていた。


体は細く、揺らめく陽炎のような出立ちだ。ピクリと槍が動いた。俺の顔面を貫き、即死させる軌道だった。


「⋯⋯ッ!!」


当たる寸前でしゃがんでそれを回避した。細い体を両断するために、距離を詰める。距離は五メートルほどで一歩で斬りかかれる距離だ。だが、六本腕はそれを許さなかった。


銃口から放たれる鉛玉が、俺の頬を掠った。剣と斧が両側から振り下ろされる。バックステップで回避する。同じように六本腕も後ろに下がる。距離が開いてしまった。相手は銃を持っている。つまり、銃撃戦になる。


俺が戦っている場所は廊下だ。縦に長いため、避けることができるスペースがない。


だが、横には何個かドアがあった。放たれる銃から逃げるため、そのドアを開けた。中には女性型のAIがいて、椅子に座ってパソコンにむかっていた。

皆が俺を見て、悲鳴をあげて逃げ惑う。


その中の一人を捕まえて、銃で脅した。


「撃ち殺されたくなかったら、大人しくしろ!」

「何モシマセンカラ、殺サナイデ」


ドアから、六本腕が入ってきた。瞬間、捕まえていたAIを投げつける。受け止めるために少しの間は無防備になるだろう。その時に両断する。


腕を伸ばしてAIを受け止めようとする。が、俺の予想は裏切られた。


ハンマーの口の部分で受け止め、壁に叩きつけ、頭を潰した。

流水のような滑らかな動きだった。飛んでいた蝿を潰す時のように、そこには微塵の迷いも感じられない。


コイツは侵入者を殺すためには犠牲を厭わないタイプ。感情を持たず、俺を殺すまで止まらないAIってことか。


俺は部屋に逃げ込んでしまった。六本腕から逃げるためには、六本腕を通り抜けて、ドアから出るか、取り付けられている窓ガラスを突き破って十三階からダイブするか。やるなら圧倒的に前者だ。十三階から飛び降りるのは心底恐ろしい。


どうにかして六本腕の脇を通り抜けて逃げるしかない。


⋯⋯やるしかない。


踏み込もうとした瞬間、部屋の壁が切り取られた。真四角に、綺麗に。そこから現れたのは。


「ココニ居タカ」


クレルだった。


俺の身長とほぼ同じ長さの刀身の剣を担いで、やってきてしまった。

間に合わなかった。


ゆっくりとクレルが口を開く。


「助太刀シマショウカ、マスター」


発せられた言葉は、予想外だった。


『マスター』。地位が高いであろうクレルがそう言った。AIが支配するこの世界で、AIが『マスター』と呼ばれて崇拝されるのは、一人だけだ。この世界で人間が隠れて生きるしかなくなってしまった諸悪の根源。


「お前が『マスターサーバー』か」

「私は人類にそう呼ばれているのか」


どこからともなく声が聞こえてくる。

否定しなかった。つまり、そういうことだ。


「助太刀するかと提案したな、クレル」

「ハッ」

「要らん。ようやく歩くことができたのだ。この戦いは慣らし運転に過ぎん。そこで事を見守っておけ」

「仰セノママニ」


クレルはその言葉に従い、その場に座りこむ。

『マスターサーバー』は俺の方を見た。目があった気がした。


「人間よ。せいぜい恐怖するが良い」


まさかのまさか、敵の大将である『マスターサーバー』がのこのこと顔を出してくれた。ヤツの首を獲る一大チャンス。だが、手数は俺が圧倒的に不利。


ここは引くしかない。どうにかして『マスターサーバー』の横を通り抜けて⋯⋯⋯⋯。


いや、そんな危険なことはしなくて良い。AIたちの『マスターサーバー』に対する忠誠心は本物だ。犬頭も『マスターサーバー』の目的であるマキナを傷付けないために自分の命まで差し出した。


きっと、クレルもそうだろう。だが、今はクレルに攻撃する余裕なんてない。


現に『マスターサーバー』はこちらに歩み寄ってきている。


だが、通り抜けるだけなら?

脱兎の如く逃げることだけに徹したら生き残れるかもしれない。


クレルは、自分に向かってくる俺を攻撃なんてしない。だって、『マスターサーバー』に見守っておけと命令されたから。


俺は数発のエネルギー弾を『マスターサーバー』に向かって撃ち、クレルがいる方へ走った。動きを牽制して、少しでも動きを遅らせる。銃が撃ち込まれる前に、クレルの背後に隠れた。AIの装甲を打ち破るには実銃ではなく、エネルギー弾でなくてはならない。


まんまと逃走に成功する。上ってきた階段を駆け下り、二階まで降りた。正面玄関は封鎖されている。二階の窓を破って逃げるしかない。


窓を蹴破ろうとすると、タワーに激震が走った。何回も世界が揺れた。地震ではなかった。壁や天井にヒビが入る。そして、揺れが大きくなっていく。最高潮まで揺れが達した瞬間。


「見つけたぞ」


上から『マスターサーバー』が降ってきた。俺を殺すそうと最短距離を行くために、全ての天井と床をぶち破ってきたのだ。


六種類の即死が降り注ぐ。しかし、神業に見紛う行動で全て無力化した。剣を横からショートソードで叩き折り、斧をショートソードで受け止め、ハンマーを避け、鞭を右手で掴み、槍を弾き、銃弾を斬った。


「やるな」

「どーも」


一言交わし、俺は窓を蹴破って二階からダイブした。

誤字・脱字報告を受け入れているので送ってくれたら嬉しいです。

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