第2話 俺の両親は、勇者・魔王・・・っておかしいだろ!?
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衝撃の光景(両親と弟が空に浮いている、しかも満面の笑顔でこちらに向かって結構な速さで飛んでくる)を目の当たりにして、俺は、異世界に来てからの度重なる衝撃(精神的な)により少しは耐性がついていたのか、比較的早くに落ち着きを取り戻すことが出来た。
そして現在、家族全員が輪になって家族会議の最中なんだが・・・。
「父さん、母さん、それに充、さっき起きた後に澪から聞いたんだが・・・、ここって異世界なんだよな?それで、みんなこの世界に来たことがあるって聞いたんだけど・・・」
そんな疑問を全員にぶつけてみると、父さんが代表して質問に答えた。
「ああ、間違いない。ここは異世界だよ。あと、すまなかったな。隠してたわけじゃないんだが、いきなり俺たちは異世界に行ったことがあるぞ、なんて言っても絶対に信じてもらえないと思ってたから、何かキッカケがあれば話をしようと思ってたんだ。今回は丁度良い機会だから、この際、仁にも全部話そうと思う。」
父さんの口調が軽い!異世界って俺にとっては超重要な問題なんだけど!まあ、父さんの言ってること自体は分かるけど。いきなり、「俺たち異世界に行ったことあるんだぜ!」と言われても絶対信じないもんな。
「まず、俺のことを話そうか。俺はな、この世界で勇者をやってたんだ。いや、正確にいうと、今も職業は勇者だな」
「へえ、そうなんだ・・・って、ハァッッッ!?」
父さんの口から衝撃の発言が飛び出して思わず大声が出てしまった。いや、出るだろ?自分の親が「勇者だったんだぜ!」とか言い出したら。普通は、「大丈夫か?」と声を掛けたくなるレベルだ。異世界に転移したのは百歩譲って認めるとしても、それはないだろ?いや、異世界転移自体がとんでもないことだから、逆に、勇者だってのもありえるのか?そんな風に頭の中で自問自答する。そんな中、父さんと母さんから更に衝撃的な言葉が出てきた。
「それで、母さんは魔王な。昔は母さんと殺し合いをしたこともあるんだぜ?」
「あらあら、懐かしいですね。でも達也さん、それは言わないでください。恥ずかしいですよ」
「へえ、そうなんだ・・・って、ハァッッッ!?」
あれ、この台詞、さっきも言ったような・・・?って、それどころじゃねえよ!いや、おかしい!何がおかしいって全部おかしい!母さんが魔王って何!殺し合いって何だよ!これ夢なのか?夢だよな夢?誰か夢だと言ってくれー!「夢だよ(自分の声)」よし、夢だ!って、ちげーよ!!
ハァハァ・・・。いかん、少し落ち着こう。・・・よし、落ち着いた。もう少し詳しく聞かないとな、冗談かもしれないし。
「ゴメンな。でも仁に説明するには、避けては通れない話だからなー。でも、許してくれよ、今晩は一緒に寝てやるからさ」
「もう、達也さんたら!でも期待してますね?ウフフ・・・」
「ああ、今夜は寝かさないぞ有里・・・」
「達也さん・・・」
そう思って父さんたちの方を見てみると、・・・なんか、意味不明なイチャイチャを始めたぞ?
あれぇ?今って俺への説明中だよね?というかサラリと魔王とか殺し合いとか話をしておいて、そこで説明終了なの!?いや、それダメじゃない?このままだと母さんが人類の敵になっちゃうみたいな・・・。でも、魔王って言っても「あの」母さんなんだよね・・・。争いごとが好きじゃなくて、いつもニコニコしている母さん・・・、あれぇ?そんな風に軽いパニックになっていると、横から充が苦笑いしながら声を発した。
「兄貴、あの二人はああなると長いから、この先は僕が説明するよ」
ここで充について改めて説明しておこう。一言で言えば、出来た弟である。落ち着きがあり、兄を常に立て、いつも困ったことがあると俺を助けてくれる、しかも、美少年ときている。もし、充が家族ではなく、しかも女性であったならば、俺は充に対して、「彼女になってください!」とお願いをしたことだろう。それくらい、俺にとっては素晴らしい弟である。
さすが、充。どんな時でも落ち着いてるなぁ。俺も見習いたいくらいだ。
「悪いな充、頼むよ」
「うん。まずは、さっきの話の続きからだね。今から言うのは、全て事実だから、そんな馬鹿なって感じても受け入れてほしいんだ。」
ははは、充の言うことなら、全部信じるさ!・・・多分。信じれる範囲の内容だと良いなぁ・・・。
「えっと、分かりやすく話をする為には、父さんと母さんの馴れ初めから話をした方が分かりやすいと思うから、そっちから先に説明するね。さっき、父さんと母さんの話が出たけど、あれは事実なんだ。父さんは、勇者、もっと正確に言えば、魔王を倒す為に異世界召喚された勇者だったんだ。それで母さんは、その時の魔王・・・つまり父さんの敵だったらしいよ。あっ、ちなみにこの話は二人から聞いた話だから、細かいところが違っていたらごめんね?それで、話の続きだけど、父さんは、魔王を倒す為にパーティを組んで冒険をして、魔物を討伐したりしてレベルを上げていたらしいんだ。結構時間が掛かったらしいよ?5年だったかな?それである時、召喚をした国の王様から『魔王を倒す為の連合軍を組むことになったから、わが国の代表者の一人として会議に出席してほしい』って連絡が来たらしくて、それでその会議に出席することになったらしいんだよね。それでその時に乗り込んできて、勇者・・・つまり父さんと一騎打ちを望んだのが当時の魔王・・・母さんだったっていう話だよ。ここまでは良いかな?」
ツッコミたいところは山ほどある。だが、まずは全ての話を聞いてからだと思い、頷いて続きを促した。
「じゃあ、続けるね。実は、人類から見た敵というのは、魔王率いる魔族じゃなくて、魔物のことだったんだ。兄貴もよくラノベとか見てるでしょ。物語の中に色々なタイプがあるけど、魔族が魔物を使役しているんじゃなくて、魔族と魔物は全く別物っていう物語もあるんじゃない?この世界では、まさにそのパターンで、むしろ魔族にとっても魔物は討伐対象だったんだ。だけど、普段から人類と魔族は交流があるわけじゃないからね。人類は魔族が魔物をけしかけていると思っているし、魔族は、人類に対して何かしたわけでもないのに、目の敵にされて不愉快に感じたり、そんなこんなで完全に敵対することになりかけていたみたいだね。よく考えればおかしいのはすぐに分かるんだけどね。だって父さんが召喚されてレベルを上げている5年の間、一回も魔族が攻撃してきたなんてことはなかったらしいからね。魔物が村や町を襲うことはあっても魔族は攻めてこない。それに勇者が召喚されたのは、大々的に宣伝されたから、もし、村や町を襲う魔物を魔族が使役していたんだとしたら、どこかで勇者の話は耳に入るはずだし、そうなれば、勇者が成長する前に、大量の魔物を向かわせて、勇者を殺してしまう・・・なんて考えると思うんだけどね。そういうことも一切なかったみたいだから、その時点でおかしいとは思うよね。まあ、父さんも何かおかしいなとは感じていたみたいだけど、魔物に襲われた村や町を助けるのに忙しくて、ゆっくりと考えるような時間はなかったのかもしれないね」
ここまで聞いた俺は、父さんに対して、ある想いを抱いていた。
父さんスゲーーーーー!!ていうか、村や町を守るってマジで勇者じゃん!
そう、尊敬の念だ。勿論、今までも真面目に働く父さんや、専業主婦として家族を支えてくれている母さんに対して、尊敬はしていたよ?だけど、この話を聞いては、改めて父さんの凄さに尊敬の念を送らずにはいられなかった。ちなみに、現在、ピンク色の謎空間にてイチャイチャしている父さんの姿については・・・見なかったことにした。
うん、あの勇者の話を聞いてから母さんとイチャイチャしている父さんを見ていると、何かすごく変な気分になるな。いや、別に悪くはないんだけどね、夫婦なんだし仲が良いのはいいことなんだけど、なんかギャップが凄くて・・・。とりあえず今は、話の続きだな。
「なるほどな。それでどうなったんだ?」
「うん、まあそれで戦争一歩手前までいったみたいなんだけど、その戦争について話し合う会議に現れたのが母さんだったらしい。これは母さんから聞いた話なんだけど、元々母さんは、人類と和平を結びたかったみたいなんだ。だけど、元々交流がない人類に対して、中々、交渉することができなくて、その間に魔族の幹部の一部の人たちの我慢が限界にきたみたいでね。戦争をしようという話が出てきたみたいなんだよ。そんな時だよ、本当に偶然だったらしいんだけど、人間の商人が魔族領の近くで魔物に襲われていたらしくてね。それを偶然見つけた魔族の人が、・・・っと、ちなみに魔族の人が全員、人族を嫌っているわけじゃないからね。本当にその商人の人は運が良かったよ。助けられた最初の内は、怯えていたみたいだけど、言葉が通じて、相手が自分を助けてくれたのが分かったんだろうね。助けてくれた魔族の人の家に、数日泊まらせてもらったみたいなんだけど、その時に、勇者の話と近々、諸国が集まって会議が開かれるという話をしたらしくてね、それを聞いた魔族の人が、『これは陛下にお知らせせねば!』と陛下・・・つまり母さんに伝えて、そこに直接行って話をしよう、ということになったらしいんだ」
母さんなら、やりそうだなぁという感想が頭の中に浮かんでくる。母さん、穏やかで優しいのだが、こうと決めたら一直線なところがあるからなぁ。
やっぱり母さんは昔から変わらないんだなぁ。
と思うと同時に、平和な世の中にしたいと努力する母さんの話に、父さんに対するものと同じように母さんへの尊敬の念が改めて高まり、また、武力ではなく、話し合いで解決しようとする姿勢に対して頭が下がる思いだった。いや、マジでカッコいいよな、うちの両親。形は違えど、平和を目指す心に違いはないってことだな。それで、出会って恋に落ちたのか・・・。
「それでね、話し合いをするつもりで、会議に乗り込んだ母さんなんだけど、そこでひと悶着あったらしくてね・・・、一騎打ちをすることになったんだ」
「何故に!?」
いや、おかしいだろ!?平和的な話し合いどこ行った!?
いきなりの急展開にびっくりだよ!・・・いや待てよ?そういえば、父さんがさっき、殺し合いだとかなんとか言ってたな。あれがここで来るのか。
「いや、それがね、招待状もないのにいきなり来るし、しかも魔王だし、屈強な側近を連れてくるしで、人類としては、魔族が攻めてきた!ってパニックになったみたいだよ?」
それを話す充も少し呆れた様子だ。
そりゃそうか。いきなり敵だと思っている相手のトップが来たら、そりゃ混乱するわな・・・。
「まあ、それで各国の主要人物と魔族の幹部連中が口論になった結果、魔族と人類のお互いの武力のトップ同時で一騎打ちをして決着をつけようという話になったらしくてね。戦争を起こして被害を拡大させたくない父さんと、交渉を半分諦めた母さんの一騎打ちがここに実現したんだ。二人の実力は拮抗していたらしくて、どっちが勝つかわからないぐらいの実力差だったんだけど、ここで一つ面白いことが起きてね・・・。二人は恋に落ちたらしい」
はい、全く意味不明です!そりゃ、今結婚しているんだからどこかで恋には落ちるんだろうけどさ・・・。
どうしたら、勇者と魔王の一騎打ちで恋に落ちるの?と頭の中で考えていると、さらに充が、
「なんか、お互いの思想を叫びながら戦っていたらしいよ?そうやって相手の話を聞いているうちに、お互いが同じ方向を向いて進んでいるんだということが分かって、それからはあっという間に恋に落ちたらしいんだ。それから今やっているように散々イチャイチャした後、国王様たちそっちのけで、平和宣言と結婚宣言をしたって話だよ」
と、これまた呆れたように話す。
・・・何やってんだよ、うちの両親は・・・。
半分呆れると共に、両親がこの世界を平和にしたという事実が、俺を誇らしい気持ちにさせた。それにしても、一つ気になることがある。
「ところで、その時に現場にいた各国のお偉いさんはどうしたんだ?まさかそのまま平和宣言やら結婚宣言を見守っていたのか?」
その場にいたのは、各国を治める国王たちをはじめとする重鎮の面々だろう。そのまま空気のように、そこにいただけとは考えづらいのだが・・・。
「ああ、そこは話してなかったね。結果を先に言うと、みんな二つ返事で了承したらしいよ。実は、その一騎打ちの際に、見届け人がいるだろうということで、強制的にその場にいた人たちにお願いしたみたいなんだ。国を治める人たちには、見届ける責任があるってね。その代わり絶対に怪我をしないように勇者と魔王の二人がかりで結界を張ったらしいよ。凄いよね、勇者と魔王の結界って。多分、世界で一番安全な場所なんじゃないかな?だけど、国王様たちは、そう感じなかったみたいでね。勇者と魔王が繰り出す超上級魔法や聖剣と魔剣が繰り広げる斬撃の応酬。それを超至近距離で見せられた国王様たちは、半分失神していたらしいよ。そりゃそうだよね。実際に喰らったら直撃どころか、かすっただけでも消し飛んでしまうような攻撃が目の前を飛び交っているんだから。それでその後、二人がイチャイチャしているのを半分失神した状態で見届けて、いざ宣言がされたという頃に、ようやく意識がはっきりしたみたいなんだけど、その時には、各国の国王様と重鎮の方々はこう思ったみたいだよ。『うん、世界平和とても大事!みんな友達!』ってね。よっぽど怖い思いをしたんだろうね。元々、戦争には反対の立場だった人はともかく、戦争肯定派の人たちまで、一人残らず、平和宣言に賛成したらしいからね」
「・・・マジで?」
「うん、マジで。見届け人を頼んだのは父さんらしいけど、本当は国王様たちに怒ってたんじゃないかな?国王様たちの中には、この機に乗じて他国に戦争を仕掛けて、領地を広げようとしていた人もいたみたいだし。確かに見届ける人は必要だろうけど、少しは現地で戦う兵士の人たちの身になって、体験してほしかったのかもね。それに、母さんは母さんで、全く話を聞かない人たちに怒っていたのかも知れないね」
そんな充の言葉を聞いて、俺は思った。
よし、父さんを・・・いや、父さんと母さんを絶対に怒らせないようにしよう!!!
今日はこれで終了となります。
明日の夜、二話分を投稿する予定です。
(そちらで、現在のストックが切れます。)




