第1話 異世界さん、こんにちは
連続投稿となります!
宜しくお願いします!
「お兄ちゃん!お兄ちゃん!」
そんな声に呼ばれ、意識を取り戻すと、そこには心配そうな澪の顔があった。
「あれ?俺、どうしたんだ?」
なんかスゲー揺れたと思ったら頭が痛くなって・・・。
そんな風に考えていると澪から答えが返ってきた。
「お兄ちゃん、リビングで倒れてから今まで、ずーっと気を失っていたんだよ」
その答えを聞いて俺の頭の中は、少しずつ落ち着いていった。
そうか、とりあえず頭の痛いのも治まっているし、大丈夫そうだな。
「そうか、教えてくれてありがとな。とりあえずお水でも飲んでくるよ」
そう答えて立ち上がり、キッチンに向かおうとしたが、周囲を見渡した瞬間、俺は思わず叫んでしまった。
「よいしょっ・・・と、なんじゃこりゃーー!!?」
そこにあったのは見渡すばかりの平原だった。有るのは、草と青い空、そして遥か彼方に薄っすらと見える街・・・のような何かのみである。
確かにさっきまでリビングにいたはずなのに!
「ちょちょちょっ!?え、なにこれ?どうなってんの!?ていうか、他のみんなは!?え?え?」
混乱の極致に達し、一人であたふたとしていると、澪から再び声が掛かった。
「落ち着いてよ、お兄ちゃん!大丈夫、みんな無事だよ。というか気を失ったのが、お兄ちゃんだけだったから、お父さんお母さんは先に偵察に行ったんだよ。充は、お兄ちゃんが起きた時の為にってお水を探しに行ったよ」
まずは全員が無事だという事実が分かり、俺はホッと安堵のため息を吐いた。良かった!みんな無事なんだな!それにしても澪のヤツ、冷静過ぎないか?父さん母さん、それに充も気を失わなかったとはいえ、行動が迅速すぎるような・・・。
確かにこんな平原にいきなり来てしまったら、周りを確認したりすることはとても重要だし、お水を取りに行ったのも、自分の為にしてくれていると思えば有難いことだけど、それでも普通、こんな理解できないような現象が起これば自分と同じようにパニックになっても決しておかしくはない筈なのに、自分以外の全員が何かしらの行動を起こしているって・・・。我が家は、こんなにアウトドア大得意だったか?というかアウトドア大得意なだけじゃこんなに的確な行動が取れるとは思えないけど・・・。
とはいえ、その答えがすぐに見つかるわけもなく、自問自答しているとまたしても澪から声が掛かった。
「・・・お兄ちゃん、多分・・・ううん、絶対混乱していると思うんだけど、落ち着いて聞いて欲しいの」
そんな声に振り向き、澪の顔を見ると、今までに見たことがないくらい真面目な顔をしていた。その雰囲気にゴクリと喉を鳴らし、次の言葉を待っていると、衝撃の発言が飛び込んできた。
「あのね、まずここなんだけど、・・・異世界なの・・・」
「・・・は?」
あまりにも突飛な発言に、思わず生返事を返してしまったが、何か返事をする前に、さらに衝撃の発言が飛び込んでくる。
「それでね、私が落ち着いてるのが不思議みたいだけど、それも当たり前のことなの。だって、私はこの世界に来たことがあるから・・・。それにね、今までお兄ちゃんには言ってなかったけど、お父さんとお母さん、それに充もこの世界に来たことがあるの・・・ううん、何回も来ていると言った方がいいのかな・・・?」
・・・混乱の極致、再び!だ。澪の冗談かとも思ったが、澪の雰囲気、そして現在の状況が澪の語った話に真実味を与えていた。
いやいやいや!おかしいでしょ!?いや、百歩譲って異世界なのは認めるとしてだよ!?自分以外の家族全員が、異世界に転移経験有りって、これなんてラノベ!?って感じなんだけど!?・・・って百歩譲っちゃダメだろ!?異世界だぞ?そんなこと有り得るか!?
あまりの混乱の為、脳内で自問自答をしていると、少しずつだが冷静になっていった。
いや、確かに異世界だと言われれば、いきなり平原にいることにも納得、は出来なくても説明はつくし、本当に異世界なのか?
実は、俺はラノベやアニメの大ファンだ。異世界転生ものの小説やアニメも当然のように嗜んでいる。実際に異世界に行ってみたいと思ったこともある。しかし、実際にそんなことがあるわけがないとも考えていた。しかし、実際に異世界転移をしたのではないかと、頭のどこかが理解した時、俺の中には、言いようのない高揚感が湧き出していた。行きたいと思っていた異世界に本当に来ることが出来た!そんな想いが俺の中に満ちていくのを感じる。
これから何をしようか!?冒険者?商人になって商売をするのもいいな!知識チートみたいな!
そんな妄想に浸かっていると、後ろから声が掛かり、現実に戻される。
「お兄ちゃん、信じてくれたみたいだね。みんな帰ってきたみたいだから、続きはみんな集まってからにしよう?」
そんな澪の声を聞いて、もう一つの事実が思い起こされる。
そうだ、さっき澪が話していた、みんなこの世界に来たことがあるって、どういうことなんだ?
そんなことを考えていると、ちょうど帰ってきたのか、少し離れた場所から父である達也の声が聞こえた。
「おーい、帰ってきたぞー」
そんな声を聞いて振り向いた俺は、再び衝撃を受けることになった。
・・・空に浮いていた。・・・大事なことなので、もう一度言う。空に浮いていた。・・・浮いていた!?あっ、三回言っちゃった、などとそんな細かいことも気にならないほど、ビックリだ!しかも父と母と弟がどこかで合流したのか三人とも同時に浮いていた。
「はひっ!?」
俺は、そんな言葉にもならない声を出しながら、三人が合流するまで呆然と立ち尽くすことになったのであった。




