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ゼロヒーロー  作者: シュレディンガー


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第二話

あの日から、零は変わった。


いや。


変わろうとした。


部屋の隅で鳴り続けていた怪人探知機。


それを手に取ると、迷うことなく押し入れの奥へしまい込む。


変身ベルトも、その隣へ。


「もう……いい。」


誰に言うでもなく、小さく呟いた。


その日から、警報音が鳴ることはなくなった。


いや、自分から聞こえないようにしたのだ。


怪人が現れたというニュースも見ない。


ヒーロー部隊の活躍も知らない。


街でサイレンが鳴っても、耳を塞ぐように歩き去る。


そうして少しずつ、


"神代零"はヒーローではなくなっていった。


「おはよう。」


朝になれば、美月がコーヒーを淹れてくれる。


「今日は面接だったよね?」


「うん。行ってくる。」


「頑張って。」


その笑顔を見るだけで、一日が始まる。


やがて零は、小さな配送会社へ就職した。


毎朝決まった時間に起き、


仕事へ行き、


夕方になれば帰宅する。


玄関を開けると、


「おかえり。」


美月が笑って迎えてくれる。


一緒に夕食を食べ、


他愛もない話をして、


ソファで寄り添いながら映画を見る。


そんな、ごく普通の日々。


かつて命を懸けて戦っていた男とは思えないほど、穏やかな毎日だった。


「……これで良かったんだ。」


そう思うたび、胸の奥で小さな痛みが走る。


だが、その痛みさえ、美月の笑顔が薄れさせてくれた。


零は自分に言い聞かせる。


俺はもうヒーローじゃない。


ただの一般人だ。


その言葉を、何度も、何度も繰り返しながら。


しかし、押し入れの奥には、埃をかぶった探知機と変身ベルトが静かに眠っている。


まるで持ち主が再び手に取る日を、じっと待ち続けるかのように。

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