8 魔法少女、父親を救う
瘴気に侵されたカラスを殺したあと、なんとも言えない気持ちになった。
猫神様は「殺したんじゃなく、倒したと考えてみたら」と言われた。
言葉は似ているけど、殺すと倒すとは違う。
わたしは気持ちを切り替える。
自分は戦えると言い聞かす。
これから、魔法少女として戦わないといけない。
そして、なにより、お父さんを助けないといけない。
徐々に心が落ち着いていくのが分かる。
「普通の女の子は泣いたり、嫌がったりするんだけど、君は違うんだね」
「それで、これでお父さんを助けられるの?」
「まだ、早いと思うけど。止めても無駄そうだね」
お父さんが苦しんでいることを知っている。
少しでも早く助けたい。
「それじゃ、今夜、君のお父さんを助けよう」
やっと、お父さんを助けられる。
そして、夜遅く、時間は23時。あと一時間で日付が変わる。お父さんはまだ帰って来ていない。
「それじゃ、行こうか」
「どこに? お父さんが帰ってくるのを待つんじゃないの?」
最近のお父さんは日付が変わる近くに帰ってくる。だから、先に食事をして、寝るように言われている。
「君のお父さんは、君に体調が悪いところを見せたくないから、近くの公園で時間を潰しているんだよ」
「…………!」
知らなかった。
それじゃ、家にいるときは体調がよかったときってこと?
でも、家にいるときだって、体調が悪いように見えた。
それなら、外にいるときは、わたしが見たときのお父さんより、体調が悪いってことだ。
「どうして、教えてくれなかったの?」
「教えたら、父親のところに行っちゃうでしょう。だから、魔法が扱えるようになるまで、言わなかったんだよ」
反論はできない。お父さんが公園に1人で苦しんでいると知ったら、行ったかもしれない。
ううん、お父さんが1人で苦しんでいると思ったら、間違いなく会いに行った。
魔法少女に変身したわたしは公園に向かう。
少し大きい公園で、散歩コースにもなっている。
「お父さんはどこ?」
「こっちだよ」
猫神様が案内してくれる。
「いた」
お父さんがベンチに座っている。
ベンチの上にある街灯がお父さんを照らしている。
そのお父さんは苦しそうにしている。
「今の君なら見えるはずだよ」
「見えるって?」
「よく見て」
わたしはお父さんを見る。
お父さんの体からカラスと同じ黒いモヤが見える。
「瘴気に侵されているの?」
「あれは君の父親を恨む呪いだね」
「呪い。どうやったら、お父さんを助けられるの? 魔法を放ったら、お父さんが怪我をしちゃうんだよね」
魔法は武器と一緒と言っていた。
「よく見て、瘴気と違い、呪いは人を呪う。父親の周りに人の姿をしたものが見えるはずだよ」
わたしは目を懲らしてお父さんを見る。
すると、お父さんの周りに男の人の姿が見えた。
「見えたよ。3人いる」
「あれを魔力を込めた魔法で撃てばいい」
「あの人の形をしたものを……」
「あれを倒したら、どうなるの?」
「消えるよ。消えて、君の父親は救われる」
お父さんは苦しそうにしている。
お父さんを助けるために猫神様と契約して魔法少女になった。お父さんを苦しますものがいるなら、わたしが守る。
わたしは魔力を作り出す。
そして、お父さんを睨んでいる男に向かって魔力を放つ。
魔力は一直線に男を貫く。すると、拡散して消え去る。
わたしはそのまま、二発の魔力弾を放つ。
二発の魔力弾は残りの男を貫く。
お父さんの傍にいた男たちは消え去る。
「これで終わったの?」
「終わっていないよ。攻撃を仕掛けた君に襲い掛かってくるよ」
拡散したと思った黒いモヤが、わたしに向かってくる。
「あとは倒すだけだよ」
「どうやって」
「何度も攻撃をすればいい。そのうちに消滅するよ」
わたしは飛び周りながら、黒いモヤを攻撃する。
黒いモヤの中に男たちの顔が見える。
気持ち悪い。
わたしは何発も魔力弾を放つ。
モヤは避ける。
「当たって!」
無数の魔力を作り、モヤに向けて放つ。
モヤに無数の魔力弾が命中して、拡散する。
その拡散する瞬間、男たちの顔が歪んでいた。
「うぅ」
人じゃないのに、嫌な気持ちになる。
「もう嫌だ」
戦いたくない。
「君の父親を見てごらん」
わたしは言われるままにお父さんを見る。
お父さんは不思議そうに自分の体を見ている。
「いきなり、体調がよくなって、不思議に思っているみたいだね」
「お父さん、もう大丈夫なの?」
「君が救ったんだよ」
「わたしが……」
「ほら、帰らないと、君が家にいないことに気付かれるよ」
お父さんは立ち上がり、歩き出している。
早く家に帰らないと。
わたしは急いで家に帰る。
2階の窓から真っ暗な部屋に戻ると、一瞬でパジャマに着替える。
間に合った。
空を飛ぶわたしのほうが早く帰って来られた。
しばらくすると、玄関のドアが開く音がする。
わたしは部屋から出ると1階に下りる。
「お父さん?」
「ユナ、まだ起きていたのかい?」
「ううん、水を飲みに来たら、玄関の開く音がしたから」
お父さんが心配しないように誤魔化す。
「お父さん、体調は?」
「ああ、しばらく体調が悪かったけど、もう大丈夫だよ」
お父さんはニコッと笑い、わたしの頭に手を置く。
「もう遅いから、早く寝なさい」
「うん、お父さん、お休み」
わたしは階段を上がり、自分の部屋に戻ってくる。
「本当に、お父さんは大丈夫なんだよね」
「今はね」
「今はねって、どういうこと」
「今回の件は大丈夫だけど、今後、また呪われることもあるってことだよ。君の父親は恨まれる仕事をしているからね」
「それじゃ、また、呪われるかもしれないの?」
「強く呪うのは滅多にないから大丈夫と思うけど、絶対はないからね。まあ、そのときは君が魔法少女になって助ければいい。そのために僕と契約して魔法少女になったんだから」
猫神様の言うとおりだ。
お父さんを助けるために魔法少女になった。
今後もわたしがお父さんを助ける。
お父さんを救うために魔法少女になりましたが、無事に救うことができました。
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