7 魔法少女、初めての戦い
一週間ほど魔法の扱いを教わり、その間に魔獣や妖怪などの勉強もした。
わたしの夏休みが1週間消えた。
「そろそろ実戦を行おうか」
「それじゃお父さんを助けられるの?」
そのために魔法少女になった。
それに、最近のお父さんはもの凄く疲れた顔をしている。
猫神様は呪われているためと言っていた。
すぐに助けたかったけど、まだ大丈夫と言って、なにもしてくれなかった。
「でも、その前に低級魔獣と戦ってからにしたほうがいい」
「低級魔獣? まだ、お父さんを助けられないの?」
「物事には順番があるんだよ。初めて呪いと戦って、負けたらどうするんだい。他の魔獣とかなら、負けても逃げればいい。でも、君のお父さんの場合は逃げたら、悪化する可能性がある。だから、失敗は許されない。だから、実戦を経験してからのほうがいい。なにより、失敗して、君に恨まれたら、僕が困るからね」
失敗はできない。
もし、お父さんを救うことができなかったら、猫神様を恨むかもしれない。魔法少女も続けられないかもしれない。
「……分かった。それで、低級魔獣って、なに?」
「凶暴化した犬の予定だったけど、その前に討伐する相手が来たようだ」
猫神様は部屋の窓枠に飛び移り、空を見上げる。
「来たって、なにが?」
凶暴化した犬も気になるけど、なにかが近づいているみたいだ。
「魔法少女に変身して、空で待ち構えるよ」
わたしは言われるままに魔法少女に変身する。
わたしは黒い魔法少女の服を纏う。
何度もしていることだけど、一瞬で着替えられるのは不思議だ。
アニメみたいに変身シーンはない。
まあ、実際に変身シーンなんてあったら恥ずかしいから、なくていいけど。
魔法少女になったわたしは部屋の窓から飛ぶ。
「なにが来るの?」
「瘴気に侵されたカラスだ」
「カラス?」
猫神様が見ているほうを眺めていると、黒い点が徐々に近づいてくる。
「戦闘態勢を」
カラスが近づいてくる。
わたしは構える。
「……あれが瘴気に侵されたカラス」
魔法少女になったせいか、普通のカラスではないことが分かる。
禍々しい。
そのカラスが迫ってきたと思ったら速度を上げて、わたしの横を通り抜けていった。
「!?」
速くて動けなった。
もし、わたしに向けて来られていたら……。
「しっかり、見て」
振り返ると、瘴気に侵されたカラスが戻ってくる。カラスはわたしの周りを飛び回る。
カラスが禍々しい黒いモヤを纏っている。
赤い目が光る。
カラスが翼を広げると羽を飛ばしてくる。
とっさに魔力で防護壁を作る。
防護壁にカラスの羽が突き刺さる。
わたしはすかさず魔法を放つけど、避けられる。
「速い」
「よく見るんだ。魔法少女になったことで、動体視力は上がっているから、動きは見えるはずだ」
カラスの動きは速い。
でも、徐々に動きが見えてくる。
速いけど、目で追える。
「これなら」
魔力を集め、カラスに向けて放つ。
「当たって!」
ダメ。当たらない。
簡単に避けられる。
動きが見えても、実際は速い。
魔法がカラスに追いついていない。
魔法が遅いんだ。
「魔力は君の一部。自由に動かせる。速度も形も君の想像しだいで変化させることができる」
魔力はわたしの一部。
魔力の形は変わる。
わたしはイメージする。
細く、速く。
わたしの前に矢のようなものが出来上がる。
わたしは腕を振るう。
「いけーーーーーーーーー!」
わたしの手から放たれた魔力の矢はカラスに向かって飛んでいく。
カラスは加速する。でも、魔法の矢も加速してカラスを追う。
映画で見たようにミサイルが追尾するように魔法の矢がカラスを追う。
カラスはさらに加速する。
「逃がさない」
矢は加速し、カラスに命中する。
矢が命中したカラスは落ちていく。
「やった!」
「初めてにしては上出来だよ」
猫神様は褒めてくれる。
「でも、一撃で?」
「瘴気が少なかったから、魔法が命中すれば、一発で終わったみたいだね」
あれで瘴気が少ないの?
猫神様も言っていたけど、低級と言っていた。
確かに、速かったけど、一撃でも与えれば倒せるなら、弱い部類に入るんだと思う。
しかも、初めての戦いで倒せる相手だ。
徐々に興奮が収まってくる。
「あのカラスは?」
カラスが落ちて行った先に目を向ける。
「瘴気に侵されたものは死体になるか、消えるかの二択」
「元に戻らないの?」
「瘴気に侵されたばかりなら元に戻る可能性があるけど、基本的に発見したときには手遅れだよ」
アニメや漫画みたいに、元には戻ったりはできないみたいだ。
つまり、殺すことでしか、救えないってことだ。
あのカラスは、わたしが殺した。
生物を殺したのは初めてのことだ。
少し手が震えている。
「君の今の気持ちは正しいよ。だから、君を選んだ。殺戮を楽しむ子は魔法少女にはなる資格はないからね。だから、その気持ちは忘れないでほしい」
「そんなに殺戮を楽しむ子なんているの?」
「いるよ。蝶々の羽をむしり取る子がいる。その子が成長して動物を殺すことを楽しむ子もいる」
想像したけでも、気持ち悪くなる。
「そんな子は魔法少女の才能があっても、魔法少女にはさせない。だから、君のその心は正しい」
「……正しい」
「辛いことも分かっている。でも、これからは君には鳥だけでなく、あらゆる瘴気に侵された動物と戦うことになる」
動物……犬や猫とも。
犬も猫も大好きだ。
カラスはどちらかというと、嫌いな鳥だ。
だから、戦えた。
でも、可愛い犬とか猫と戦えるかと聞かれたら、分からない。
わたしは魔法少女のことを簡単に考えていたのかもしれない。
初めての戦い。
無事に勝利しました。
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