6 魔法少女、魔法を学ぶ
魔法少女の服を貰ったわたしは、魔法の扱いを覚えることになった。
魔力があっても、なにも知らなければ魔法を使うことはできない。
漫画やアニメだと、魔法少女になった瞬間に魔法を使っていたけど、そんな簡単なわけにはいかないらしい。
勉強も学ばないとできないし、運動だって練習しないと上手にはならない。
「魔法の基本はイメージだよ」
「イメージ? 呪文を唱えたり、詠唱を言ったりしないの?」
アニメや漫画だと呪文を言ったり、詠唱を唱えたりすると魔法が使える作品がある。そして、無詠唱で魔法を使うと尊敬されたりすることが多い。
「呪文も詠唱もないよ。漫画とアニメの見過ぎだよ」
魔法少女の服をアニメから参考した猫に言われたくない。
「心臓近くに魔力のコアがあることを話したよね」
「うん、そこから魔力線を延ばした」
凄く痛かった。
「指先に魔力を集めてみて」
「集めるって、どうやって」
「仕方ないな」
猫神様はベッドの上に座るわたしの膝の上に乗る。
そして、心臓あたりに手を当てる。
「なにかが流れてくる」
「これが僕の魔力。いまから、君の魔力を押し出すから、感じてみて」
猫神様がそういうと心臓あたりから、なにかが流れ出てくる。
「感じたら、それを右手に集めてみて」
わたしは体の中を流れるなにかを右手に移動させる。
なにかが右手に集まってくる。
なにかに右手が覆われている感覚があるけど、なにも見えない。
「なにか右手にあるけど、見えないよ」
「それが魔力だよ」
「魔力……」
「魔力は魔獣、妖怪、幽霊に有効になる」
「見えないよ」
「それは君次第だよ。魔力はイメージで変化する。君が色を付ければ見えるようになるよ」
「……魔力に色を付ける」
わたしは右手を覆っている魔力を青色になるようにイメージする。
すると、わたしの右手を覆っているものが水色になって見えるようになる。
「それが魔力だよ。そのまま魔力を相手にぶつけても効果はあるけど、それぞれの相手には苦手なものがある。それが火だったり水だったりする。魔力を苦手なものに変化させて攻撃すると効果が増えると思ってくれていい」
ゲームでも、弱点属性はある。
火が得意相手に、火を放っても効果がないことは、わたしでも分かる。
「あと、その魔力が君の身を守ってくれるから、魔力が切れると危険だから気を付けてね。一応、魔法少女の服が守ってくれるけど、限界はあるから」
そんな難しいことを。
魔力量の把握なんて分からないよ。
「最初は、その魔力を自由に扱えるように練習をしてみて」
「魔法を使うときに魔法陣とか浮かびあがったりはしないの?」
アニメとか漫画に登場する魔法を見ると、魔法を使うときに魔法陣が現れる。
それは綺麗な円だったりする。
「魔法陣もあるけど、それを覚えるのはまだ先だよ。まずは基本だよ」
わたしは数日間、魔力の扱いの練習をする。
その練習のおかげもあって、魔力を自由に操り、火や水に変化させることができた。
一番嬉しかったのは、空を飛べるようになったことだ。
体が浮かんだときは感動した。
映像でしか見たことがないけど、宇宙飛行士がぷかぷかと浮かんでいる感じと同じだった。
それから、火を強くしたり、水の威力を強くしたり、速く飛ぶ練習をした。
魔法が使えるようになってくると、楽しくなってくる。
わたしは魔法の勉強と同時に魔獣や幽霊、妖怪、瘴気についても学ぶ。
「魔獣や妖怪の数は多くないけど、危険だから倒さないといけないんだよ。それが君たち魔法少女の役目」
「数は少ないの?」
「たくさんいたら、人間は滅んでいるよ」
確かにそうだ。
魔法少女の数は少ない。
そんなに多くの魔獣や妖怪、幽霊がいたら危険だ。
「魔獣についてだけど、生物が瘴気に冒されると魔獣となる」
「瘴気って、悪い気? 悪い空気? ってこと?」
「人、動物の怨念、恨みなども瘴気になることもある。とりあえず、そんな悪いものに動物が取り憑かれた存在を魔獣と呼んでいる。瘴気に冒された魔獣は狂暴になり、人を襲う。その前に倒すのが魔法少女の役目だよ」
「魔獣は瘴気が動物に取り憑いてなるんだよね? 幽霊と瘴気は違うの?」
「瘴気はいろいろな生物の悪の塊。幽霊は個人の悪意かな」
「それじゃ、瘴気のほうが危険ってこと?」
「そうとも言い切れない。人が恨みで死ぬほど怖いものはない」
恨みながら死ぬ。
お父さんの影響で事件のニュースを見ることがあるけど、お金が欲しくて他人の家に入り、殺す事件を聞く。
わたしが、そんな人に殺されたら、恨むかも。
「でも、全ての幽霊が悪とは限らない。未練があり、普通にいる幽霊もいるからね」
「その幽霊も倒すの?」
「放置だよ。何年もかかって、自分で昇華する場合がほとんどだからね。魔法少女も悪意がない幽霊まで構っていられないよ」
わたしも幽霊でも、悪いことをしていないなら、戦いたくない。
「魔獣、瘴気、幽霊はなんとなく分かったけど、妖怪って? 魔獣とは違うの?」
わたしが知っている妖怪だと、カッパとか天狗、雪女、座敷童子とか?
「妖怪は知能を持った魔獣と思ってくれていい」
「知能を持った……」
「妖怪は話をすることができるものが多い。人に紛れ、人を殺すこともある。もちろん、全ての妖怪がそうじゃない。有名どころだと、座敷童子は人に友好的だから、倒すことはない」
座敷童子はその家に幸運をもたらすと聞いたことがある。
でも、座敷童子がいなくなると、家が大変になるとも。
「僕たち神様の役目は悪意があるものたちから人を守ることって、覚えてくれたらいい」
それだったら戦える。
悪いことをしてない相手と戦うことはできない。
お父さんも悪い人と戦っている。
弱い人を守るために戦っている。
わたしも、そんなお父さんみたいになりたい。
「えっと、警察とか自衛隊の人たちは戦えないの?」
お父さんを思い浮かべて、警察が持っている拳銃が気になった。
拳銃やナイフとか武器で倒せないのかな。
「何度も言うけど、まず、普通の人には見えない。だから、攻撃はできない」
「見えたら、攻撃はできるの? 例えば、わたしが拳銃を撃ったりして」
「それは種類によるね。魔獣は瘴気が動物に入り込むことでなる。取り込まれた動物は倒せるけど、動物の中に入り込んだ瘴気は倒せない。また、他の動物に入り込むだけ。瘴気を倒せるのは魔法だけ」
つまり、魔力で攻撃をしないと、ちゃんと倒せないらしい。
もしくは特別の武器が必要とのこと。
「実体がない幽霊も同様。妖怪も近代兵器で倒せるかは、試したことがないから、分からない。そんな不確定なことに頼むなら、魔力を持った少女に頼んだ方がいい」
いきなり、魔獣や妖怪と戦ってほしいと警察に言っても無理かも。
「えっと気になったんだけど。何度も魔法少女って言うけど。男の子はなれないの?」
魔法少年とか?
「なれるよ。陰陽師もそうだと言ったよね。男の人もいたよ。でも、魔法が使える男の子は珍しいんだよ。だから、どうしても女の子のほうが多くなる」
0ではないけど、魔法少年もいるとのことだ。
男の子の魔法服って、どんな服になるのかな?
「それじゃ、大人の人は」
魔法少女と言っている。
少女と言ったら、子供だ。
子供が成長すれば、大人になる。
「いるよ。でも、初めに言ったと思うけど、悪意を持って魔法を使われるのは困るから、大人には頼まない」
「それじゃ、わたしたちが大人になったら、どうなるの?」
「それは……」
猫神様は言い淀む。
「もしかして、殺されるとか」
「僕は神様だよ。そんなことはしないよ。みんな、成長して大人になっていくと、魔法少女の格好をしたくないと言って辞めていくんだよ」
確かに、近所のおばさんが魔法少女の格好をしたら……。
「でも、大人の人でも魔法少女を続ける人もいると思うけど」
魔法少女のコスプレとかしている大人の女性をみたことがある。とても、似合っていた。
「もちろん、いるけど。受験、部活、仕事など、年齢が上がると、忙しくなっていくんだよ」
わたしは塾には行っていないけど、クラスメイトには塾に行っている子は多い。
この夏休みも毎日、塾とか言っていたクラスメイトがいた。
それに大人になれば、お父さんみたいに仕事をしないと暮らしていけない。
「魔法少女の仕事って、お金は」
「無償だよ」
子供のわたしでも分かる。
無償で仕事をする大人はいない。
猫神様には大人の魔法使いについては考えないでいいと言われ、これ以上は尋ねないことにした。
魔法少年の話を書けば、一定数の読者を確保できるかも……。




