5 魔法少女、変身する
翌日から、魔法少女になるための練習をする。
「魔法少女になってくれたお礼として、これをプレゼントするよ」
猫神様がどこからともなく黒い布を取り出した。
「これは?」
「魔法少女の服だよ」
わたしは受け取った服を広げる。
確かに魔法少女みたいな服だ。
「着てみて」
「魔法少女の服なのに黒なの?」
漫画やアニメだと魔法少女の服は明るい色の白とかピンクが多いのに黒だ。
「君の父親は警察官でしょう。だから、黒が似合うかなと思って用意したんだよ」
お父さんは黒っぽいスーツを着て仕事をしている。
確かに、お父さんっぽいかも。
「それに、他の色は他の魔法少女が着ているから、被らないようにしないといけないからね」
漫画やアニメでも違う色の魔法少女の服を着ている。同じ魔法少女の服を着ている作品は見たことがない。
「でも、それは漫画やアニメの中の話だよね。別に色違いにしなくても」
「戦闘中、服の色が同じだと困るんだよ。誰が誰か分からなくなるから。昔、それで困ったことがあったから。それで、アニメや漫画の魔法少女の服を参考にしたんだよ」
神様でもアニメを見たり、漫画を読むんだ。
「でも、黒って、悪の魔法少女って感じだと思うんだけど」
「ピンクや白は人気があるんだよ。それから青や赤、緑、黄色もね」
「つまり、黒は人気がないと」
「君が言った通りに、悪の魔法少女に見えるからね」
「もういいよ。黒でも」
明るい色も好きだけど、黒も嫌いじゃない。
「一応、白もあるよ」
「白?」
「着ることはないと思うけど、一応渡しておくよ」
猫神様は白い魔法少女の服も渡してくれる。
「白はダメなの?」
「メインは黒にしてほしいかな」
わたしは仕方なく黒の魔法少女の服を着ることにする。
「でも、この服に着替えないとダメなの?」
服を広げると、服はひらひらしている。
可愛らしいけど、少し恥ずかしい。
「普通の服と違って破れにくい。別に普通の服で戦ってもいいけど、破れたりしたら大変じゃない?」
確かに、破れた服をお父さんに説明ができない。
服が破れたら、新しい服を買わないといけない。
「しかも、破れても時間が経てば自動修復もする」
自動修復は便利だ。
「あと、なにより阻害機能付き。空を飛んでいるところや戦っているところを見られない」
阻害認識。
そんな機能まで付いているんだ。
確かに、それは重要だ。
「もちろん、他の魔法少女には見えるから安心してね。あと、聞きたいことはある?」
「……」
「わたしにできるかな」
「それは君自身の心に聞くしかないよ。神様の僕でも分からないよ。行動や信念は、人によって違う。でも、僕は君ならできると思ったから、声をかけたんだよ」
認められているようで嬉しい。
「なにより、魔力量は多いから、強い魔法少女になれると思うよ」
まだ。自分の中にある魔力が分からないので、魔力量については分からない。
とりあえず、わたしは言われるままに魔法少女の服に着替える。
フリルが付いた黒いドレス風の魔法少女の服だ。
少し、可愛い。
「でも、毎回、この服に着替えるのは面倒だね。変身するみたいに着れたらいいのに」
漫画やアニメだと、変身シーンがある。
パッと魔法少女の服に着替えることができる。
でも、現実は違う。着ている服を脱いでから、魔法少女の服を着ることになる。
「それなら大丈夫だよ。異空間ボックスに仕舞っておけば、簡単に着られるよ」
「異空間ボックス?」
初めて聞く言葉だけど、言葉からして、なんとなく分かる。
物が仕舞える空間だ。
「そうだね。今度は異空間ボックスの話をしよう。異空間ボックスは魔力で作られた場所って言うのかな。君が魔法少女になったことで、作られているはずだよ。試しに、さっき脱いだ、その服を異空間ボックスに仕舞ってみて」
猫神様はベッドの上に置かれている先ほどまで着ていた服を見る。
「どうやって仕舞うの?」
「魔法はイメージ。自由なんだ。だから、君のイメージで別の空間があるイメージをしてみて」
言われるままにしてみる。
なにかそれっぽい空間を感じる。
「なにか空間があるよ」
「服を手にして、その空間に服を仕舞うイメージをして」
言われるままに手に持った服を異空間に仕舞うイメージをする。
すると手に持っていた服が消えた。
「消えた」
「異空間ボックスの中に入ったんだよ。今度は異空間ボックスから取り出すイメージをしてみて」
同じようにしてみる。
すると、わたしの手には服があった。
不思議だ。
まるで手品みたいだ。
「簡単でしょう」
わたしは面白くて、何度もしてしまう。
「それじゃ、その服を入れたままにして」
言われるままに服は異空間ボックスに入れたままにする。
「君の要望どおりに変身してみようか。魔法はイメージ。さっき、異空間ボックスに仕舞った服を着たイメージをしてみて」
言われるままに服を着たイメージをする。
すると、パッと初めに着ていた服に変わる。
「凄い」
魔法少女の服を着る前の服だ。
「魔法少女の服は?」
「入れ替わるように異空間ボックスの中だよ。それじゃ、今度は魔法少女の服を着たイメージをして」
わたしは同じように魔法少女の服をイメージする。
すると、パッと魔法少女の服を着る。
わたしは魔法少女の服を着ていた。
「着替えることができるのは、異空間ボックスの中に入れている服だけだから、魔法少女の服を入れておけばいつでも変身ができるよ」
アニメや漫画に出てくる魔法少女みたいだ。
「本当に魔法少女になったみたい」
「魔法少女になったみたいじゃなくて、魔法少女になったんだよ」
その日の夜、わたしはパジャマと下着を亜空間ボックスに入れてお風呂に入り、お風呂から出るとパッとパジャマに着替えてみた。
便利だ。
一瞬で着替えることができる。試しに帽子やリボンなども入れて確かめて見ると、イメージどおりの帽子やリボンが付けられていた。
しかも、髪型も一瞬で変わる。
ツインテールになったり、ポニーテール、お団子、自由に変わる。
凄い。
便利すぎる。
わたしは普段着ている服や下着、靴下や小物類から、あまり着ていない服なども全てを亜空間ボックスに仕舞う。
お母さんが買ってくれたリボンも仕舞う。
「あとは靴もかな」
買ったはいいけど、普段は履いていない靴も異空間ボックスの中に入れておいた。
だって、イメージするだけで靴も履くことができる。
変身ができると本当に魔法少女になったみたいだ。




