17 魔法少女、掃除をする
「くまゆる、くまきゅう、掃除をするよ」
わたしは汚い部屋を見て、宣言する。
「別に、しなくても」
「わたしが落ち着かないんで」
お母さんが亡くなってから、家の掃除や片付けをしてきた身としては、許されない状況だ。
「くまゆる、くまきゅう。まずは、同じものを集めて」
「「くぅ~ん」」
わたしはくまゆるとくまきゅうに指示を出す。
部屋が散らかっている中で一番多いのは本だ。それから洗濯物、生活用品が多い。部屋の中には見知らぬ物がたくさんある。
信じられないけど、異世界なのは間違いないと思う。
わたしは足元にある本を手にする。
初めて見る文字だけど、読める。
猫神様が与えてくれた翻訳機能だけど、英語だけでなく、異世界の文字まで翻訳してくれるとは思わなかった。
「男と女の関係」
表紙には、そう書かれていた。
「ああ、子供が読んじゃダメ」
サーチェさんがわたしから本を奪い取る。
「読まないよ」
わたしは内容を気にせず、本以外の服やタオルなど洗濯物を集める。
「どうして、カゴがこんなにあるのかな」
「使うときになくて、買っちゃうのよ」
「無駄遣い」
「うぅ、わたし、こう見えてもお金は持っているから」
「お金を持っているからと言って、無駄遣いをしていい理由にはならないよ。買われたカゴが使われなかったら、可哀想でしょう。なにより、このカゴを作った人が」
お金を持っていると人は新しいのを買えばいいと言う考えがある。
お父さんのお給料で、買い物をしてきた身としては、無駄遣いは許せない。
「それは……」
「その理由はちゃんと片付けていないからでしょう」
「……ごめんなさい」
「だけど、部屋は汚いけど、食材や食べ物が散らかっていないのが救いだね」
もし、食べ物が放置されていたら腐って大変なことになっていた。
虫とか……。
想像しただけで、身震いする。
「ああ、それは昔に大変なことになって、以降は気をつけることにしたわ」
大変なことになったことがあるんだ。
「食材は冷蔵部屋に入れてあるから大丈夫よ」
その冷蔵部屋を見せてもらったけど、6畳ぐらいの冷たい部屋になっており、野菜や肉が保管されていた。
簡単に見ただけだけど、見知った食材もあった。
食材の確認は後にすることにして、一階の部屋の片付けることにする。
わたしは服を集め、洗濯をしようとしたけど、洗濯機があるわけもない。
「洗濯物を洗う洗剤? この世界だと石鹸? ってあります?」
「石鹸? どこだったかしら」
サーチェさんは、周りをキョロキョロを見回す。
「あったわ」
サーチェさんは石鹸を渡してくれる。
洗濯機には粉だったし、手を洗うのは液体や泡、食器を洗うのは液体。
テレビとかでは見たことがあったけど、石鹸の実物を見たのは初めてだ。
わたしは石鹸を受け取ると、くまゆるとくまきゅうに洗濯物を外に運んでもらう。
そして、色落ちしそうなものなど洗濯物を分ける。
「これでいいかな」
魔法で水球をいくつか作り出し、分けた洗濯ものをそれぞれ水球の中に放り込んでいく。
そして、石鹸の一部を削り、水球の中に入れる。
あとは水球の中を回転させれば簡易洗濯機の出来上がりだ。
「あなた、凄いことをするわね」
「凄いって、今までどうやって、洗濯をしていたの?」
「適当?」
頭を抱えたくなる。
洗濯機ってないのかな。
文明のありがたみを感じる。
それと同時に魔法のありがたみも感じる。
洗濯は洗い終わるまで放置して、次の片付けを始める。
問題は本だ。本の数が多い。
本棚らしいものがあるけど、いっぱいだ。だから、床に山積みになっていた。
「本を読むのが好きだから」
本を見ているとサーチェさんは言い訳を言う。
階段に目を向ける。
階段の端にも本が置いてある。
もしかすると2階も、同様な状況かもしれない。
「この家の隣に建物を作ってもいい?」
「建物? 別にいいけど」
わたしは外に出ると、家の隣に魔法で建物を作り上げる。
書庫? 図書室? 本を置く建物だ。
建物の大きさはサーチェさんの家より一回り小さいぐらいだ。
サーチェさんが本が好きなのは、本の山を見れば分かる。
今後も増える可能性があるので、本を仕舞う建物としては少し大きめの建物を作った。
「ちょ、あなたなにをしたの?」
「魔法で建物を作っただけだよ」
「そんなに簡単に?」
「土魔法を応用すれば簡単なことでしょう」
魔力は変化する。火にも水にも土にもなる。
それを猫神様から学んだことだ。
「建物は理解できるわ。でも、窓はなに?」
「普通の窓だけど」
「ガラスよ」
窓にはガラスがある。
このあたりは神様のルールらしく、世界に少ない物や価値がある物は魔力の量は多くなる。
土はどこにでもあるから、少ない魔力で作れる。
でも、ダイヤモンドなどは鉱石は数も少なく、価値があるので、魔力では作れない。
正確には大量の魔力を使えば宝石も作れるのことらしい。
試しにダイヤモンドを作ってみようとしたけど、作れなかった。
ガラスは土より多めの魔力を使うけど、作成は可能だ。
「はぁ」
サーチェさんは溜め息を吐く。
わたしは気にせずに建物の中に入る。
窓から光が入って、良い感じだ。
でも、直射日光は本が傷むのでカーテンは必要かな。
わたしは壁際に魔法で本棚を作る。
中央はテーブルと椅子を置けば、本を読むには最適になる。
「くまゆるとくまきゅうに本を書庫に運ばせるから、サーチェさんは本棚に本を並べてください」
「今、書庫って。それとサーチェって」
「本を置く場所だから書庫でしょう。早くしないと、終わらないよ」
わたしはサーチェさんの名前を初めて呼んだ恥ずかしさを誤魔化すように言う。
「ええ、分かったわ」
「でも、ちゃんと綺麗に並べてくださいね」
サーチェさんは嬉しそうに本の片付けを始める。
わたしは水球で洗っていた洗濯物を取り出し、魔法で布に吸い込まれている水分を吸い取る。
洗濯物から、水分が消え、乾く。
本当は太陽の下で乾かしてもいいんだけど、時間短縮だ。
洗濯物の量が多いから、干すのが面倒くさいのが大きな理由だ。
実は梅雨どきに洗濯物が乾かないときに、元の世界でも、魔法を使っていたのは内緒だ。
綺麗になった洗濯物を家の中に運ぶ。
本当に見知らぬ服ばかりだ。
服やタオルを畳む。
畳んだ洗濯物は端にある棚の上に置いておく。
仕舞うのは、サーチェさんにやらせることにする。
人様のタンスを開けるのはよくない。
それに使う本人が自分でしまわないと、どこにしまったか分からなくて困ることになる。
それで、お父さんはいつもどこに仕舞ったか、わたしに尋ねていた。
1階の部屋にあった布類は片付き、本は現在進行形で、くまゆるとくまきゅうが運んでいる。
徐々に床が見えてくる。
わたしは布類と本以外の物を家の外に運ぶ。
見知った物から、なにに使うか分からない物もある。
とりあえずは道具類として、外に出しておく。
そして、しばらく作業をしていると、床に物が無くなる。
「やっと、床に物がなくなったよ」
わたしは物が無くなった床を魔法で小さい竜巻を起こし、ゴミや埃を巻き込ませる。最後はゴミ箱に入れる。
そして、最後に水魔法で床掃除をして完了だ。
部屋が綺麗になった。
まあ、あくまで1階部分だけだ。
階段を見れば、2階がある。
本はくまゆるとくまきゅうが運んでくれたので、見えなくなっているけど、時間もないので、2階は見ないことにする。
さっき、外を見たら、日が傾いていた。
異世界だからと言って、太陽が2つあるわけもなく、変わった感じはなかった。
片付けはここまでにして、わたしは料理を作ることにする。
異世界で出会った女性はだらしない女性でした。
※異世界編より、投稿は2~3日おきに投稿させていただきます。
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