16 魔法少女、サーチェさんの家に行く
「えっと、質問は終わり?」
笑い出すわたしに女性は話しかけてくる。
「最後に一つ」
「なにかしら?」
「猫神様の関係? ううん、神様との関係はある?」
「えっと、神様? 神様って、人が崇めている神様?」
わたしは頷く。
「神様の指示で、わたしのところに来たの?」
ここが異世界だとしても、神様同士が繋がっていたら、この世界における神の指示の可能性もある。
「神様って、困ったときに願いをする神様よね?」
わたしは、もう一度頷く。
「神頼みをすることはあるけど、神様には会ったことも声を聞いたこともないわね。だから、指示は受けていないわ。そもそも神様って会いたいと思っても会えないでしょう」
女性の口調と表情からして、本当に神様に会ったことが無いみたいだ。
「こんな返答でよかったのかしら? それじゃ、今度はわたしから質問するわね。あなたの名前は?」
女性は再度、わたしの名前を聞いてくる。
ここが異世界だと分かったけど、目の前にいる女性が味方とはかぎらない。
でも、情報は必要だ。
なので、素直に名前を名乗ることにする。
「ユナ」
フルネームは必要ない。
女性も名前だけだ。
「ユナは、どこから来たの?」
わたしが別の世界から来たと答えても大丈夫?
頭がおかしいと思われて、信じてくれないかもしれない。
「ここから、凄く遠くの場所。あなた、ううん、誰も知らない場所から来たの」
「さっき、言っていた名前の国ね」
とりあえず、頷く。
「わたしも知らない国から、どうやって、あなたみたいな子供がここまで来たの?」
「誰かの力で、ここに飛ばされたんだと思う」
「誰かの力って? 誰?」
お父さんとお母さんだと思うけど。
あの出来事が夢のようにも感じる。
「分からないよ。だから、ここにわたしたちを飛ばしたのが、あなたの仲間だと思ったの」
「それは否定しておくわ。それと、あなたの敵じゃないわ。だから、そんなに疑うような目で見ないで」
知らないうちにわたしは力が入っていたみたいだ。
この女性は猫神とは関係ないと思う。
関係があれば、すでに戦いになっているはず。
わたしは力を抜く。
「でも、どうして、わたしに関わるの? 自分でも怪しい子供だと思うよ」
「だって、あなた、泣いていたでしょう。泣いている女の子をほっとくことはできないわ」
さっきまでお父さんとお母さんに会って泣いた。
くまゆるとくまきゅうが生きていることに泣いた。
「わたしが泣いていても、関係はないでしょう」
わたしが泣いたからと言って、赤の他人だ。
猫神様も他の魔法少女たちも助けてくれなかった。
「子供が泣いているのに、ほっとくほど、わたしは冷淡な人間じゃないわ。どうしたら、信じてくれるかしら?」
その答えは、わたしは持っていない。
どうしようかと思っていると、くまゆるとくまきゅうが女性に向かって歩き出す。
「くまゆる、くまきゅう!」
くまゆるとくまきゅうは女性の前に座る。
くまゆるとくまきゅうは女性に敵対心を持っていない。
わたしにこの人は安全だよ。と伝えてくれているみたいだ。
「えっと、どういうことかしら?」
「くまゆるとくまきゅうは、あなたのことを信じて大丈夫と言っているみたい」
危険な相手なら、無防備にしないはずだ。
「それは、嬉しいわね」
女性はくまゆるとくまきゅうの頭を撫でる。
「あら、遠くから見たときは怖いクマかと思ったけど、可愛いクマさんね」
くまゆるとくまきゅうが女性を信じるなら、わたしも信じることにした。
「その、ごめんなさい。心配してくれてありがとう」
「ふふ、信用してくれて嬉しいわ。確認だけど、帰る当てはあるの?」
……帰る当て。
そんなものはない。
ここが異世界なら、余計に帰ることはできない。
それに元の世界に、お父さんはいない。
なにより、わたしの居場所はない。
「ないみたいね。それじゃ、わたしの家に行きましょう」
「…………」
わたしが答えずにいると、それが答えと受け取ったのか女性が誘ってくれる。
お父さんとお母さんのところに行くことはできない。
ここがどこかも分からない。
この世界で生きていくなら、生きるための手段が必要だ。
それには知識が必要だ。
くまゆるとくまきゅうが信用しているので、女性……サーチェさんに付いて行くことにした。
「でも、家ってどこに……?」
周囲に建物どころから、家1つない。
「この森の奥よ」
女性は草原の先にある森を見る。
草原の先には森がある。
サーチェさんはその森に向かって歩き出す。
人を殺すなら、目立たない場所が最適だ。
経験したから、分かる。人が多い場所、開けた場所では誰かに見られる可能性があるからやりにくい。
「わたしを殺すつもりなら」
「違うわよ。この森の奥に、本当にわたしの家があるのよ。あなた、どんな環境で育ってきたのよ。疑い過ぎよ」
信用するつもりでいるんだけど、反射的に疑ってしまう。
それも今まで信用していた猫神様や魔法少女と戦ったせいかもしれない。
「信用していた人(猫神)に裏切られて、仲間だと思っていた友達(魔法少女)に殺されかけたから」
殺されたけど、生きているので殺されかけたと言っておく。
「お父さんも友達に殺されたし」
「その、ごめんなさい。あなたは子供なのに。でも、そんなに裏切りだらけの世界があるの?」
「ないよ。ただ、正しいことをしていたお父さんを邪魔と考えた奴らに殺されて、わたしも殺されかけただけ」
「えっと、お母さんは?」
「わたしが幼いときに、病気で亡くなったよ」
「その、ごめんなさい」
何度も謝るサーチェさん。
「わたしの両親が死んだなんて知るよしもないんだから、気にしないでいいよ」
赤の他人だ。今日、会ったばかりだ。知らなくて当たり前のことだ。
「でも、配慮がなかったかと思って」
「そんなことで怒らないよ」
「あなた、何歳?」
「10歳」
11歳になるには8カ月も先だ。
「10歳……。子供らしくないわね」
「サーチェさんも言ったでしょう。どんな環境で育ったのかしらって。子供は育った環境で変わってくると思うよ」
わたしは自分が子供らしくないことは前々から理解している。
クラスのみんなが遊んでいるときに、わたしは料理を作ったり、洗濯をしたり、掃除をしたりしていた。
みんなの家ではお母さんがしている。
でも、わたしにはお母さんはいなかった。
お父さんの役に立ちたかったから、嫌と思ったことはなかった。
それから、魔法少女になって、いろいろと経験をして変わってきたと思う。
さらに猫神様が言うには魔力が活性化すると、知能が発展すると言っていた。
実際に学校の勉強はどれも簡単だった。
だから塾に行っている子よりも、賢かった。
当時はずるをしている感じがして、後ろめたさを感じたこともあったけど。みんなが遊んでいるときや家族でテレビを見ているときに魔法少女としての仕事をしているのだから、そのぐらいの恩恵はあってもいいと思い始めていた。
そして、お父さんが殺され、復讐したことで、わたしは子供らしさを無くしたんだと思っている。
くまゆるとくまきゅうが左右から擦り寄ってくる。
「心配してくれるの? ありがとう」
「ふふ、そのクマがいるときは、子供らしい表情ね」
「くまゆるとくまきゅうは、わたしの大切な家族だからね」
くまゆるとくまきゅうがいるときは、子供になれるのかもしれない。
そんな話をしていると、木々を抜けると建物が見えてくる。
「家?」
ログハウスのような家があった。
森の中にこんな家が。
「えっと、少し散らかっているけど、気にしないでね」
サーチェさんは、注意をしてドアを開けると、家の中に入る。
わたしとくまゆる、くまきゅうも家の中に入る。
そして、家の中に入って、言葉が出なくなる。
「……少し?」
少しじゃない。かなり酷い。
物が床に散らかっている。
「人が来ることなんて、なかったから」
それは言い訳だ。
知り合いが来なくても、掃除、洗濯、片付けはするべき。
森の奥に住む、怪しげな女性に拾われました。
まったりと、ほのぼのになる予定です。
殺伐した世界は現実だけでいいかと。
※異世界編より、投稿は2~3日おきに投稿させていただきます。
※面白いと思ったり、続きが気になりましたら、ブックマークをよろしくお願いします。
※誤字を報告をしてくださっている皆様、いつも、ありがとうございます。




