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殺された魔法少女、異世界に行く  作者: くまなの


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15/21

15 魔法少女、異世界に行く

 体が揺れる。

 誰かが体を揺すっている。

 揺らすのをやめてほしい。

 わたしの体を揺らすものを追い払おうとする。

 柔らかい毛皮に触れる。

 目を瞑っていても、何度も触ってきたから分かる。


「くまゆる、くまきゅう、揺らさないで」

「くぅ~ん」


 さらに、体が強く揺れる。


「起きるから、揺らさないで」


 わたしは目を開けて起き上がる。

 やっぱり、わたしの体を揺らしていたのはくまゆるとくまきゅうだった。


「「くぅ~ん」」


 くまゆるとくまきゅうは心配そうにわたしを見ている。


「どうしたの?」


 わたしは思い出す。

 わたしは人を殺し、最後は猫神様と魔法少女たちに殺された。


 あれは夢?

 でも、わたしは生きている。

 それにくまゆるとくまきゅうも、間違いなく死んだはず。

 あの苦しみは心に残っている。

 死んだ後にお父さんとお母さんに会って、たくさんお話をした。

 最後に、新しい世界で生きてと言われた。

 なにが夢でなにが現実なのか分からない。


 でも、くまゆるとくまきゅうが生きていることだけは確かだ。

 わたしはくまゆるとくまきゅうを抱きしめる。

 嬉しい。

 お父さんとお母さんが生き返らせてくれたのかもしれない。

 ありがとう。

 夢でも最後に、お父さんとお母さんに会えて嬉しかった。

 わたしは立ち上がり、周囲を見る。


「ここはどこ?」


 草原?

 わたしが立っている場所は、なにもない草原の真ん中。心地よい風が吹いている。

 夢でなければ、お父さんとお母さんが新しい世界って言っていたけど。


「くまゆる、くまきゅう、ここはどこ?」

「「くぅん?」」


 くまゆるとくまきゅうは首を傾げる。

 くまゆるとくまきゅうも知らないみたいだ。


「そうだ。スマホ」


 わたしは異次元ボックスからスマホを取り出し、地図アプリを立ち上げる。

画面は検索中のまま表示はされない。

 よく見ると、スマホのアンテナの表示が圏外になっている。

 つまり、電波が届いていないってことだ。

 もしかして、海外?

 海外だと日本で契約している携帯会社じゃ、電波が繋がらないって聞いたことがある。

 新しい世界って、海外のこと?

 魔法少女の力の一つで、海外の言葉は話せるし、言語も理解はできるけど……。

 それ以前に、このスマホはお父さんが契約してくれた。そのお父さんが亡くなったから、契約が解除された可能性もある。

 わたしが状況をいろいろと考えていると、くまゆるが鳴く。


「くぅん!」


 くまゆるが鳴いた瞬間、魔法がわたしたちに向かってくるのが見えた。

 わたしは咄嗟に魔力の防護壁を作る。

 攻撃対象はくまゆるとくまきゅうだった。

 誰かがくまゆるとくまきゅうに攻撃を仕掛けてきた。

 魔法少女?

 わたしは戦闘態勢に入り、攻撃が飛んできた方角を見る。

 金色の長い髪の女性がいる。

 服装はファンタジー漫画でしか見たことがない格好だ。

 魔法少女が大人になった姿?

 猫神様の仲間?

 わたしを殺しにきた?

 わたしはくまゆるとくまきゅうの前にでる。

 今度は、わたしがくまゆるとくまきゅうを守る。

 もう、わたしの大切な家族は死なせない。


「そんなに、わたしを殺したいわけ。わたしはもう、あなたたちには関わらない。くまゆるとくまきゅうと幸せに暮らすだけ」


 魔法を放った女に向かって叫ぶ。

 それがお父さんとお母さんの願い。


「わたしを殺すつもりなら、自分が殺される覚悟があるってことだよね」


 わたしの手は血に染まっている。

 今更、1人ぐらい増えても変わらない。

 くまゆるとくまきゅうのためなら、何度でも手を血に染めることはできる。

 二度とくまゆるとくまきゅうが死ぬところは見たくない。

 くまゆるとくまきゅうとの契約が途切れる感覚は味わいたくない。

 くまゆるとくまきゅうが動かないところなんて、見たくない。


 わたしは魔力弾を女に向けて放つ。

 女は驚きながら、回避する。


「ちょ、ちょっと待って!」


 待たない。

 わたしは攻撃の手は緩めない。

 だけど、女は防ぐ。

 強い。

 年齢は20歳ぐらい。

 もし、魔法少女が成長した大人なら、経験値が違う。

 わたしは魔法少女になって1年ほど。でも相手は、わたしの数倍以上だ。

 経験の差が大きすぎる。

 だからと言って、簡単に殺されるつもりはない。

 魔力を槍のように細く研ぎ澄ませる。


「貫け!」


 細い槍が女に向かって飛んでいく。

 女の魔法防御壁を貫く。

 でも、槍が途中で止まった。

 女は魔法防御壁を何重にも張っていた。


「ちょっと、待って。なにもしないから」


 女は両手を挙げる。

 わたしは攻撃態勢のまま、動きを止める。

 くまゆるとくまきゅうがわたしの横に立つ。


「くまゆる、くまきゅう、下がって!」

「「くぅ~ん」」


 くまゆるとくまきゅうはわたしの邪魔をする。


「いきなり、攻撃を仕掛けてごめんなさい。あなたがクマに襲われているかと思って」


 女性が話かけてくる。


「クマって、くまゆるとくまきゅうのこと?」

「ええ、そのクマよ。くまゆるとくまきゅうって言うのね」


 女性は近寄ろうとする。

 わたしは女性の前に風を放ち、線を引く。


「それ以上、近寄ったら攻撃するよ」

「分かったわ。近寄らないわ」


 女性は歩みを止める。


「わたしはサーチェ。あなたの名前は?」


 わたしのことを知らない?

 どこの国かわからないけど、名前、服装、顔からして、日本人ではない。

 猫神様は世界中に魔法少女がいると言っていた。実際に何人か外国の魔法少女にもあったことがある。他の国の魔法少女が、大人になった人?

 言葉は自動翻訳で会話ができるので、どこの国なのか判断がつかない。


「……」

「教えてくれないかな」


 優しい声で答えてしまいそうになる。

 油断はしちゃダメだ。


「聞かなくても、知っているでしょう。わたしを殺しに来たのだから」

「だから、あなたを殺しに来たわけじゃないって。偶然にここに来たら、あなたがクマに襲われているように見えて、あなたを助けようとして、クマに攻撃をしちゃっただけ」


 嘘は感じない。

 本当にわたしを知らない?


「それを信じろと」

「あなたのクマに攻撃をしちゃったことなら謝るわ」


 本当に猫神様に言われて、わたしを殺しに来たんじゃない?


「それじゃ、わたしの質問に答えて」

「ええ、わたしに答えられることなら」

「ここはどこ?」

「ここは、アルラリ国の西にある森よ」


 アルラリ国?

 聞いたことがない。

 どこかの小さい国?

 全ての世界の国は知らない。

 勉強で世界地図の勉強はしたけど、全てを覚えていない。


「そこはどこ? アメリカ、ロシア、それともアジアの近く?」


 わたしは自分が知っている大きな地名で尋ねる。


「アメリカ? ロシア? アジア? ごめんなさい。どれも知らないわ」


 女性は首を傾げる。

 知らない?

 ちゃんと言葉は翻訳されているよね?


「それじゃ、ヨーロッパ、中国、日本は?」


 女性は首を横に振る。

 本当に知らないの?


「それじゃ、地球は?」

「ごめんなさい」


 地球を知らないってことはありえない。

 ちゃんと翻訳されていれば、伝わっていないことはないはずだ。

 お父さんとお母さんの言葉が思い出される。

 別の世界で幸せになって。


「……別の世界」


 それじゃ、ここは地球じゃなくて、別の世界なの?

 わたしの力が抜ける。


「ははは」


 わたしはくまゆるとくまきゅうに抱きつく。

 つまり、ここは漫画やアニメで見た異世界かもしれない。


異世界編、始まりです。

くまゆるとくまきゅうと一緒に異世界生活が始まります。

異世界編では、ほのぼのの話になる予定です。

異世界編より、投稿は2~3日おきに投稿させていただきます。


面白いと思ったり、続きが気になりましたら、評価やブックマークをよろしくお願いします。

※誤字を報告をしてくださっている皆様、いつも、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
本当に殺伐した世界からほのぼのとした世界になるの?
何やらサーニャさんみたいな名前の人が出てきた・・・あっちの作品とごっちゃになりそうで心配だw
ようやく異世界編きたー!幸せほのぼのまで長かったですね!楽しみです
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