13 魔法少女、死ぬ
お父さんを殺したことに関わった人を全員殺すことができた。
男を殺し、建物の外に出ると魔法少女たちに囲まれた。
わたしは防戦する。
数が多い。8人の魔法少女たちが次々と攻撃をしてくる。
でも、心の半分は死んでもいいと思っている。
お父さんを殺した人は殺した。
お父さんはいない。
もう、思い残すことはない。
でも、わたしを守るためにくまゆるとくまきゅうが魔法少女たちと戦う。
どんなに傷ついても、わたしを守ろうとする。
魔法少女たちが一斉に攻撃するが、くまゆるがわたしの代わりに攻撃を受ける。
くまゆるはボロボロだ。
それでも、くまゆるは倒れない。
「くまゆる!」
「くぅん」
くまゆるが魔法少女たちに向かっていく。
それと同時にくまきゅうがわたしを背中に乗せ、逃げ始める。
「くまきゅう、くまゆるが」
わたしの言葉でも、くまきゅうは止まらない。
わたしとくまゆるは繋がっている。
その繋がりが途切れた。
くまゆるが死んだ。
くまきゅうも分かっているはずだ。
でも、逃げる。
後ろから魔法少女が追ってくる。
くまきゅうの体に魔法が当たる。
でも、くまきゅうは止まらない。
「くまきゅう、もういいから」
くまきゅうの速度が落ちていく。
そして、わたしを庇うように魔法少女たちの攻撃を受け、地面に落ちる。
「くまきゅう!」
「くぅん」
くまきゅうは逃げてと訴えてくる。
魔法少女たちが地面に降り立つと、わたしに攻撃を仕掛けてくる。
その全ての攻撃をくまきゅうが、わたしの代わりに受ける。
「くまきゅう!」
魔法少女たちは、トドメと言わんばかりにくまきゅうに攻撃をする。
「やめて!」
わたしの言葉は届かない。
くまきゅうは魔法少女たちの攻撃を受ける。
そして、くまきゅうとの繋がりが途切れた。
「……くまきゅう」
わたしを庇って死んだ。
魔法少女になって、共にいてくれた。
寂しいときも、悲しいときも、嬉しいときも傍にいてくれた。
でも、動かない。
くまゆるも、わたしを逃がすために犠牲になって死んだ。
「もう、守ってくれるクマはいませんよ」
くまゆるとくまきゅうを殺した魔法少女が近寄ってくる。
その魔法少女の肩の上に猫神様がいる。
「残念だよ。君は魔法少女として、才能があったのに。契約を破るなんて」
「その才能があったおかげで、お父さんの仇を殺すことができたよ」
魔法少女になるには人に危害を与えてはいけない契約だった。
でも、わたしは魔法少女の力を使って、人を殺した。
「魔法少女の力は人に向けるものじゃないよ。守るためにあるんだよ」
その人間がお父さんを殺した。
魔法少女の力はお父さんを守ってくれなかった。
無価値なものだ。
いや、お父さんを殺した者たちを殺すことができたから、最終的には価値があった。
魔法少女の力がなかったら、お父さんを殺した者を殺すことはできなかった。
「悪魔も妖魔、魔獣も悪なら、人を殺す人も悪でしょう」
どうして、人を殺す人を悪としないのか。
「僕は人間の味方だから」
「わたしのお父さんも人間よ」
「うん、知っているよ。だから、人間と人間の争いには関わらない。それは僕の管轄ではないからね」
この猫はそうだ。
人間が好きと言っているが本質は無関心。
人が死のうが関係ない。
人に危害を加える、対外生物のみしか見ていない。
「それじゃ、魔法少女が魔法少女を殺すのはいいの?」
「もちろん理由がなければダメだけど。君は人を殺したからね。それは、魔法少女として失敗作だから、廃棄対象なんだよ」
わたしが失敗作。
「それじゃ、目の前にいる魔法少女が成功作ってこと?」
白猫に言いなり、魔獣や悪魔と戦う。
「もちろん」
「あなたもバカね。普通に魔法少女をしていれば、いろいろな恩恵が貰えたのに。父親が殺されたぐらいで」
魔法少女の一人が笑う。
「それはあなたが父親が嫌いなだけでしょう」
この子は父親を嫌っていた。
「当たり前でしょう。臭いし、抱きついてきたり、うざい。いないほうがマシよ」
「父親があなたのために、どれだけ頑張っているか分からない子供ね」
そう言った瞬間、わたしは顔を蹴られる。
「あなたに言われたくないわよ」
わたしも知らなかった。
わたしが知ったのは母が亡くなったからだ。
母は2年前に病気で亡くなった。
それから、わたしは働く父の代わりの家のことをした。
父はしなくてもいいと言ってくれたけど、大好きだった母の代わりにしたかった。
凄く大変だった。
料理、洗濯、掃除。なにより、お金だ。
料理をするのは食材が必要だ。
父にお金を渡され、買い物をするようになって、お金の大切さを知った。
人が生きるには衣食住が必要だ。
わたしが住んでいた家はローンと言うものがあり、毎月、多くのお金を支払う事になっていた。
何十年間も払い続け、自分の家になるとお父さんが言っていた。
生きていくには、服も必要だし、雑用品も必要だ。
そして、なにより、毎日食べているご飯だって、お父さんが仕事をして、お給料を貰っているから、温かいご飯が食べられる。
目の前の女の子は、そんなことも知らない。
働く父親がいるから、綺麗な服を着れて、美味しい物を食べられ、暖かい家に住めることを。
「なによ。その目は」
わたしはもう一度蹴られる。
動けないわたしは、躱すことはできない。
「あと、他の魔法少女の代わりよ」
ツインテールの魔法少女はさらに蹴ってくる。
「ふふ、面白い。あれだけ、わたしたちを苦しめたあなたが、地面を這いつくばるなんて」
「君のせいで、めちゃくちゃだよ」
猫神様がわたしの前に来る。
もう少し近づきなさい。
「魔法少女の力は人を殺す力じゃないって説明したよね」
「その魔法少女の力で、わたしの召喚獣を殺しておいてなにを言っているのよ」
わたしには使い魔のクマの召喚獣がいた。
でも、わたしを守るために魔法少女に殺された。
くまゆるは、わたし逃がすために殺され、くまきゅうは魔法少女の攻撃からわたしを守るために死んだ。
「闇落ちした魔法少女の使い魔は処分対象だよ」
「ふふ」
笑みがこぼれる。
闇落ちした魔法少女。
「どうして、笑うんだい」
家族も守れないなら、それでもいい。
お父さんが殺されて、笑っていられるほど、できた魔法少女じゃない。
我慢するつもりもない。
大切なものを守るためなら、闇落ちだってする。
でも、わたしはなにも守れなかった。
お父さんは殺され、くまゆるとくまきゅうもわたしを守るために死んだ。
わたしに力がなかったから。
「さっさと、殺して。もう、この世界に未練はないから」
お父さんもお母さんもいない。
くまゆるとくまきゅうもいない。
この世界で生きる意味はない。
死ねば、お父さんとお母さんのところにいける。
くまゆるとくまきゅうに会える。
「いいから、さっさと殺しましょう」
怪我をしている魔法少女が猫神に言う。
わたしを殺そうとしている時点で、わたしと同じ穴のムジナだ。
でも、目の前の魔法少女たちは分かっていない。
「最後に一つだけいい?」
「なんだい」
「お礼だけは言わせて」
「お礼?」
「この力がなかったら、お父さんの復讐はできなかった」
そして、あなたを殺せなかった。
最後の言葉は心の中で呟く。
「……」
「なんて言ったの? もう、声も出せないのかな?」
猫が近づいてくる。
もっと、近づいて。
「悪魔って言ったのよ」
「僕は神様だよ」
猫が倒れているわたしの顔を引っ掻く。
もう、感覚が麻痺して痛さが分からない。
「それじゃ、死んでくれるかな」
手も足も動かない。
でも、口は動く。
わたしは猫の足に噛み付く。
「なんだ。離せ!」
思いっきり噛む。
くまゆるとくまきゅうの仇。
死ぬとしても、このまま死ぬことはできない。
お父さん、お母さん、くまゆる、くまきゅう、今からそっちに行くから。
魔力を増幅させる。
生命を燃やす。
「やめろ! 攻撃をしろ!」
魔法少女たちがわたしに攻撃を仕掛けてくる。
でも、噛み締めた歯だけは緩めない。
死んだかどうか確認ができないのは残念だけど。
わたしは魔力を暴走させ、魔法少女と猫神を巻き添えにして爆発した。
1話に繋がります。(1話と若干、心の描写が違いますが、1話でどこまで書いていいのか悩んだ結果です)
次回で、プロローグは終了です。
くまゆるとくまきゅうが死ぬシーンは書いている自分も悲しかったです。
自分には大切な仲間を殺す話は書けないと、あらためて思いました。
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※誤字を報告をしてくださっている皆様、いつも、ありがとうございます。




