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殺された魔法少女、異世界に行く  作者: くまなの


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11/21

11 魔法少女、一年経つ

 魔法少女になって一年が過ぎ、新しい夏がやってきた。

 3月30日に誕生日を迎え、10歳になったのに、7月時点でクラスメイトの何人かは11歳になっているから、理不尽だ。

 わたしが11歳になるのには八ヶ月も先だ。

 でも、魔法少女になった夏から、この一年の間にいろいろな魔獣、妖怪、幽霊、人に敵対するものたちと戦ってきた。

 他のところにいる魔法少女に会ったり、一緒に戦ったりもした。

 魔法少女の数は少ない。

 会ったことがある魔法少女はせいぜい5人ぐらいだ。

 多いような、少ないような。

 海外の魔法少女とも一度だけ会ったことがある。

 魔法少女になった特典として、海外の言葉が分かるのは助かった。

 だって、外国の言葉なんて分からないし、話すこともできない。

 でも、猫神様が魔法陣を使って、外国の言葉を分かるようにしてくれた。

 もちろん、外国語を話すこともでき、さらには外国の文字も読めるし、書ける。

 これは一般のときにも適用される。

 なにか、ズルをしている気がするけど、危険を冒して戦っているんだから、このぐらいの恩恵はあってもいいと思う。

 こないだ。海外の字幕の映画を見に行っちゃった。

 字幕を見なくても、映画の内容が分かる。

 ちょっと、大人になった気分だった。


 そして、契約したくまゆるとくまきゅうは成長し、大人になった。

 大きいままだと部屋に召喚することもできずにいると、猫神様がくまゆるとくまきゅうを小さくできるようにしてくれた。

 家では小さく、戦うときは大きくなって、一緒に戦ってくれる。

 頼もしい契約獣となった。


 そして、この一年で分かったことは、瘴気は動物だけでなく、人間にも取り憑くってことだ。

 人に裏切られ死んだ悪霊が、同じような生きている人間に取り憑く。

 悪霊が取り憑いた人間に攻撃をすれば取り憑かれた人は死ぬ。

 つまり、人殺しになる。

 でも、猫神様は人殺しにはならないと言う。

 悪霊に取り憑かれたものは初期段階なら助けることはできるそうだけど、猫神様が感知出来る時には手遅れな事が多い。

 お父さんの場合は、わたしが魔法少女候補だったから猫神様が気付いてくれた。

 わたしが魔法少女候補ではなかったら、気付かれず、お父さんは死んでいた。


 悪霊に侵された人間を放置すれば、被害が出る。死者もでる。

 わたしは最終的に悪霊に侵された人を倒した。

 つまり、人を殺したってことだ。

 でも、悪霊が消えて、残った体の人の意識が一瞬戻ると、「ありがとう」と言って、死んでいった。

 助けられなかった命は多くある。

 猫神様に早く発見できないのか、尋ねたことがある。

 返答は、神も万能ではないのこと。

 なんでもできるなら、魔法少女の力は借りていないと言う。

 そうだよね。こんな子供の力を借りないと、魔獣も妖怪も悪霊も倒せない。

 だから、わたしたち魔法少女が戦わないといけない。


 KUMAチャットに通知が来る。


父「18時に帰る」

優奈「ご飯作って、待っているね」


 返信ボタンを押す。

 その日の夕食はお父さんが大好きなカレーを作ることにする。

 そして、出来上がったカレーを一緒に食べるため、お父さんの帰りを待つ。

 でも、約束の18時になっても帰ってこない。時間は19時、20時と過ぎていく。


優奈「お父さん、どうしたの?」

優奈「仕事が入ったの?」


 KUMAチャットをするけど返信はない。

 お父さんの仕事は警察官なので、緊急な仕事は入ることはある。

 でも、そのときは「ごめん、帰れなくなった」みたいに一言はあるのに、今日は何もない。返信もこない。

 電話をかけても、繋がらない。

 嫌な感じがする。

 魔法少女になってから、危機感が敏感になるようになった。

 お父さんになにかあったのかも。

 不安だけが募っていく。

 そんなとき、静かな部屋にスマホが鳴る。

 わたしは慌てて、スマホを手にする。

 画面には警察署の文字が。

 お父さんが働く警察署から電話だった。

 お父さんからかも。

 わたしは急いで、通話のボタンを押す。


「お父さん!」

「如月優奈さんの電話であっていますでしょうか?」


 お父さんの声じゃない。

 でも、聞き覚えがある。


「はい、如月優奈(きさらぎゆな)です」

「優奈ちゃん? 俺、前原だけど」

「前原さん?」


 前原さんはお父さんの同僚で、同じ警察官の人だ。

 何度か会ったことがある。

 でも、どうして、そんな人がわたしに電話を?


「落ち着いて、聞いてくれ」


 前原さんが言いにくそうな感じがスマホごしに伝わってくる。

 もしかして、お父さんになにかあったの?

 怪我をしたの?

 でも、次の言葉は違った。


「如月さんが行方不明になった」

「お父さんが!?」

「今日、優奈ちゃんが、カレーを作ってくれるって、如月さんから聞いていたから、心配すると思って連絡をしたんだ。優奈ちゃん、心配しないで、待っててほしい。きっと、すぐに見つけて、連絡をさせるから」


 安心させるような声で言う。


「はい」


 わたしは震える手で通話を切った。

 お父さんが行方不明。

 予定がいきなり入っても「ごめん」と謝りは必ずあった。

 でも、今日はなかった。

 警察でもお父さんの行方が分からないと言う。

 不安に押しつぶされそうになる。

 わたしはくまゆるとくまきゅうを召喚して、抱きしめる。

 時間は過ぎる。

 そんなとき、スマホに通知の音が鳴る。

 わたしはスマホを手にして確認するとKUMAチャットに通知だ。

 KUMAチャットを開くとお父さんからだった。

 わたしは確認する。


「地図?」


 お父さんから、地図が添付されていた。


「お父さんが、ここにいる?」

「「くぅ~ん」」


優奈「お父さん、ここに行けばいいの?」


 KUMAチャットに返信するけど、返信はない。

 もしかして、なにかしらの理由で返信ができない?

 でも、地図だけ添付した理由が分からない。

 もう、分からないよ。

 ただ、お父さんのスマホから送信されたのは間違いない。

 わたしは魔法少女に変身すると、二階の自分の部屋の窓から飛び出す。

 そのあとをくまゆるとくまきゅうが付いてきてくれる。

 地図は住宅街から少し離れた場所だ。

 わたしは飛ぶ。

 お父さん、お父さん。


「このあたりのはず」


 ゆっくりと周りを見る。

 周囲は真っ暗だ。

 畑があり、夜は人がこないような場所。

 地図の反応は、この近くを示している。

 わたしは地面に降り、お父さんを探す。

 お父さん、どこ?


「くぅ~ん」


 くまゆるが鳴く。

 お父さんがいたの?

 くまゆるとくまきゅうが駆け出す。

 わたしは追いかける。

 くまゆるとくまきゅうは田舎道に横にある一本の木に向かっている。

 木に近づくに連れて、不自然なものに気付く。

 木になにかがぶら下がり、左右に揺れている。

 いや、人の形をしたものだとすぐに気付く。

 嘘、嘘、嘘、嘘、嘘、嘘、嘘、嘘、嘘、嘘。

 わたしは止っていた足を動かす。ゆっくりと木に向かって歩き出す。


「……お父さん」


 木にぶら下がっていたのはお父さんだった。

 一本のロープがお父さんの首に。

 わたしは考えるよりも先に魔法を放ち、お父さんの首に掛けられていたロープを切る。

 そして、落ちるお父さんを抱きしめ、ゆっくりと地面に下ろす。


「お父さん! お父さん!」


 お父さんは動かない。

 いくら呼んでも目が開かない。


「どうやら、自殺をしたみたいだね」


 いつの間にいた、猫神様がお父さんを見ながら言う。


「お父さんが自殺するわけがない」


 でも、お父さんが木にロープを付けて、首を吊って、死んでいた。


「猫神様、お父さんを生き返らせて」

「それは神の僕でもできないよ」


 分かっている。

 今までに、死んだ人を見てきた。

 人を生き返らせることは神様でもできない。


「お父さんが、自殺するわけがない。帰ってくるって言った」


 わたしはスマホのチャットのやりとりを見る。

 18時に帰るってある。

 そんなお父さんが自殺をするわけがない。

 わたしはお父さんを抱える。


「誰かがお父さんを自殺に見せかけて殺した」


 漫画やドラマだと言われるかもしれない。

 でも、絶対にお父さんは、わたしを残して自殺なんてしない。


「そうだね。君の父親は殺された」

「知っていたの?」

「今、確認したら、分かったんだよ」

「お父さんを殺した人は分かる?」

「魔法少女の役目は犯罪者を捕まえることでも、倒すことじゃない。その力は人を守るための力だよ」

「お父さんだって、守る中に入っている人でしょう。その人の中に入っていないの?」

「人間どうしの争いに干渉しないだけだよ。この世界に、どれほどの争いが起きていると思っているんだい。全ての人を救うことはできないし、救うつもりもない。僕たちが戦うのは人に危害を加えるものだけだよ」

「その、人に危害を加えているのが人でも?」

「そうだよ。それは人間同士で解決することだから」

「…………」


 わたしはお父さんを異次元ボックスに入れる。


「父親をどうするんだい?」


 分からない。

 でも、このままにしたくない。

 わたしは無言で浮かび上がる。

 もう、この猫神様になにを言っても無駄。

 後ろでは猫神様がなにかを言っているけど、わたしの耳には届かない。 


 わたしはお父さんを家まで運び、ベッドの上に寝かす。

 首のロープの跡が痛々しい。

 お父さんが自殺するわけがない。


「そのお父さんの死体をどうするんだい?」


 わたしは猫神様の言葉を無視して、お父さんの死体をベッドごと凍らせる。


「そんなことをしても意味がないと思うけど」


 しつこい。

 お父さんを殺した犯人を探す。

 でも、今までの会話からして、そんなことを猫神様に言えば止められる。

 

「ごめん、しばらくは魔法少女の仕事は休ませて」

「父親が亡くなったんだ。僕も鬼じゃない。他の魔法少女に頼むから、休むといい」


 猫神様はそういうと消え去ってしまう。


「お父さん……絶対に犯人を捕まえるから」

「「くぅ~ん」」


 くまゆるとくまきゅうが心配そうに擦り寄ってくる。

 その日は、わたしは泣いた。


もしかしたら、女の子の名前、初出し? ユナ、10歳です。(8話であったみたいです)

父親、死亡です。

残り3話で、現代編は終わりです。(現代編全14話予定)


面白いと思ったり、続きが気になりましたら、ブックマークをよろしくお願いします。

※誤字を報告をしてくださっている皆様、いつも、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
やっぱり小さくなるんだ、くまゆるくまきゅう
揺れてたのは直後だったか
くまなのさんのヒロインが引くわけないよね。 しかし、相変わらず展開が読めない話を書くねぇ。 流石です、くまなのさん。
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