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この転生に抗議します!  作者: 淡星怜々
第一章 ラインアース王国編
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08話『冒険者』

 「そなたの才能を見込んでの話なのだが、カラトニア連盟大国に留学せんか?」


 国王からの提案というのは魔術師としての留学だった。一応、心配してくれているのかもしれない。

 カラトニア連盟大国は王国とミラト大森林を挟んで上方にある、その名前通り大国だ。

 優れた魔術師もたくさんいるらしいし、留学は楽しそうだ。だけど……


「そうですね、とても魅力的な話ではあるのですが、すみません.....辞退させていただきます」


 俺には、いや俺達にはやらないといけない事がある。ここは残念だが断るしかない。


「ふむ、そうか……残念だ。何かやりたい事でもあるのか?」

「はい、冒険者という物を」


 ***


「お、おかえりなさい……レイニィさん、どうでしたか……?」

「ただいま、エリス。今のところ予定通りかな」


 王都から家があるロミンまで戻ってくるのは一苦労、馬車に三日間も揺られないといけないのだ。

 エリスに一緒に暮らそうと言った手前だが、御家取り潰しなのでこの家からも出ていかなければいけない。


 そこで、俺とエリスは冒険者になる事にした。冒険者になる理由は大きく分けて二つある。

 一つは生活費を稼ぐ為、そして二つ目がエリスの故郷に帰る為だ。

 エリスの記憶から推測するに、彼女の故郷はルーナット大陸にある獣王国じゅうおうこく藝華げいかの南方にある小さな集落だと思われる。

 少し前に狐人族ルーナットが住んでいたと聞いた事があるが、今もそこが存在するかどうかは不明だ。

 しかし、行ってみる価値は充分にある。


「さぁ、出かけようか」


 最低限の荷物となけなしのお金を持ち、長年住み慣れた家を出た。財布の中は銀貨五枚と銅銭十二枚……中々厳しいな。

 まずは、冒険者協会へ行こう、そして冒険者登録をしないとな。


 町中に出ると、町は領主が変わるという話題で持ち切りだった。

 この王国では領主が変わることなんてほとんど無い珍しいことなので仕方ないのかもしれない。しかも、何故変わるのかという説明が無いのもこの騒動の理由の一つだろう。



「ようこそ冒険者協会、ロミン支部へ」


 扉を開けて最初に迎え入れてくれたのは、カウンターの向こう側にいる受付のお姉さんだった。そのひとの両耳は柔らかに尖っていた。


 これが噂のエルフなのか?!――


「今日はどういったご用件で?」

「あ、今日は冒険者登録へ来ました」


 それから登録手続きをすると、「少々お待ちください」と言われたので、冒険者協会に隣接するカフェでくつろぐことにした。


「レイニィ様、エリス様こちらへどうぞー」


 やっと呼ばれたか


「お待たせしました、登録の方完了しました。おめでとうございます、それではこちらをどうぞ」


 と言って、渡されたのは赤色の小さなバッジだった。


「それは、登録冒険者の証になります。無くさないようにしてくださいね。そして、最後に冒険者ランクについて軽く説明させていただきます。下から順に赤、青、黄、黒、白、紫となっております。昇格は評判や実績などから総合的に判断されます」



 これで俺達も晴れて冒険者か! 前々からずっと憧れてたし楽しみだな!


「それじゃ、改めてよろしくなエリス。早速俺たちのパーティー名なんだが、『レーシィ』なんてどうだ?」


「そうですね、とても良いと思います……! 」


 二人パーティーは無いことはないが、初心者の二人パーティーは死にに行っているようなもんだし、とりあえずあと二人くらい仲間欲しいな……まずは仲間探しからか。


 と、その時協会内がざわつきを見せた。


「あれが、白級はっきゅう冒険者のミズキ・キノか……やっぱ迫力が違うわ」

「すげぇよな……美人だし、てか異世界人って噂、本当なのか? 」


 などなど、様々な声が飛び交う。ミズキ・キノか、異世界人ねぇ……


「ねぇ、君……異世界人って本当?」


 気づいた時にはそう声をかけていた。そこに居合わせた全員から注目を浴び、少し恥ずかしい……


「え……何で?ちょっと待って、まず君は誰?なんでそんなこと聞くの……? 」

「あぁ、君が日本から来たキノミズキだというのなら、俺はよく知っているよ」


 俺はそこで急に思い出した。

 あの日、家を出る前にニュースで見た行方不明になっている女子高生と同じ顔だ。何故か鮮明に覚えている。



「それで、あなたは一体誰なの? 」


 協会の奥の方にある個室を借りて、少し話をすることになった。

 少し心配だが、エリスは残してきた。これからする話を聞いたとしても混乱するだけだと判断したからだ。


 魔力感知――


 どうやら部屋の外では、小さな初心者冒険者と白級冒険者が一体何の話をするんだと言わんばかりに、ドアの前に人が詰めかけて聞き耳を立てているようだ。

 とんでもない種類の魔力を感じる……


「ドアの前にいっぱい人がいるようね。私、注意してくるわ」


 さすがに彼女も気づいたのか、そう言って席を立とうとした。


「いや、ここは俺に任せて。魔力障壁っと……よしこれでもう大丈夫」


 魔力障壁を展開すると部屋全体が魔力によって包まれた。

 そして、外から感じられた魔力がピタッと感じられなくなった。


「あなたは一体……本当に何者なの?」


 自分よりも小さな子供が無詠唱魔法を使ったらそりゃ怖いだろうな。大人の魔術師が、やっと習得できるレベルの魔法だしな。

 だが、俺は単純な魔法レベルなら無詠唱で発動出来るようになっていた。

 国の首席魔術師にでもなるともっと凄いと聞くがな……そんなんもうバケモンでしょ。


「俺は、赤級しゃくきゅう冒険者のレイニィ・ロメニ……じゃなくて、ただのレイニィだ。旧名を春瀬蒼弥という」


「春瀬蒼弥……信じられないわ、こんな所で同郷の人間に会うなんて……」


 俺も本当に驚いた。


「本当に運命的な出会いだね。僕は転生してこの世界に来たけど……君は、訳ありそうだね」



 さっき、彼女は異世界人だと言われていた。

 つまり、俺の様な転生者とは違う。転移者、もしくは召喚者だ。


「そう、私は召喚されたの。他にも結構沢山の人が召喚されてたわ、聞くところによると大型召喚術式が何とかって……」


「なるほどね、その召喚は胡散臭そうな神様にされたの? 」

「胡散臭そうな神様……?」


 そうか……彼女は、あれとは無関係か。

 なら、召喚の目的が謎だな。


「なら、まずは俺がこの世界へ来てしまった経緯を改めて話しておこうか」

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