07話『奴隷少女-②』
あー体がダルい……今何時だ?――
全身にまとわりつく倦怠感を感じながら枕元に置いてある小さな時計を見た。
もう昼過ぎじゃないか……寝すぎたな――
しかし、昨晩は色々あって結局寝るのが朝方になってしまったのでこんなに遅くなっても致し方ない事を分かって欲しい。
やっとの思いで体を起こし、一階にあるキッチンへ向かう。
朝兼昼ご飯にと卵とスライスした肉を焼いた。コルフィも入れてキッチンには食欲を唆る良い匂いが充満している。
正直な話、父と母を亡くした実感は全く湧いてこない。悲しいのかどうかすら分からない。
頭では分かっているが心ではまだ納得しきれていないのかもしれない。
俺はとにかく父が嫌いだった。生まれた時から目の敵のように見られ、父親らしいことをして貰った記憶は無い。全ては俺が呪われた闇属性適正者として生まれた事が、元凶なんだが。
小さい頃は理不尽に父に怒られ、良く母に助けて貰ったもんだ。
その点、母は優しかった。まるで慈愛に満ちた女神のようにも見えた。
そんな母が何故この様な決断をしないといけなくなったのか……
同じ事を延々と頭の中でこねくり回すのは何となく不愉快だった。
しかし、そうするしか自分を落ち着かせる方法が無かったのもまた事実なのであった。
「あ、あの……」
俯き気味で申し訳なさそうにエリスが現れた。きっと彼女も疲れていたのだろう。
「あぁ、おはよう。昨晩はよく眠れたか? 」
俺に出来る限り最大限の笑顔を見せて尋ねた。
この子はこれから先俺が絶対に幸せにしてあげないといけない。父がしてきたことに対しての罪滅ぼしになるなど思っていない、ただこの子の笑顔を守らなければ。
「あ、おはようございます。は、はい……眠れました……」
エリスは少しよそよそしく答えた。
まだ完全には心を開いてくれないか……目も合わせてくれないしなぁ。
だけど、名前を付けてあげた事をきっかけに着実に距離は少しずつ縮まっているはずだ。
「俺の父が君にしてきた事を俺は知らない。だが、罪は俺にもある。これが罪滅ぼし……という訳にはいかないが、これから先一緒に暮らそう、俺も一人ぼっちになったしな……アハハ」
先程用意していた、卵とスライスした肉で作ったスクランブルエッグを一緒に食べている時に、タイミングを見計らってそう提案した。
「え……良いんですか、私がいるとレイニィさんの迷惑に……」
少し考え込んだ後、エリスは戸惑いながらそう答えた。
「迷惑なんかじゃないよ、ゆっくり考えておいてくれ」
「はい……」
彼女はまたも申し訳なさそうに答えた。
***
「レ、レイニィさん……わ、私と一緒に暮らしてください……!」
夜ご飯を食べ終え、俺が片付けをしている時にエリスが現れ少し大きな声でそう言った。
彼女なりに強い決意が籠った言葉だった。
「あ、あぁよろしく頼むな!」
良かった、本当に心からホッとした。
今まで気が気じゃなかったんだよな……よし、これから俺は彼女の決意に全力で応えよう。
「なぁ、エリス一つ聞いていいか?俺は君の過去が知りたい。無理はしないでくれ、話せることだけでいい」
これから先一緒に暮らす上でこの話は避けては通れない事だと思い、俺は覚悟を決め聞いた。
「わ、私は……昔に……村が、襲わ……それで、みんな……ここに連れて、無理矢理……それで、それで……」
エリスは息を詰まらせながら頑張って話そうとするが、上手く纏まらないようでとても苦しそうに見えた。
それ程、彼女の過去が重く苦しい、忘れたくても忘れられない悪夢なのだろう。
「ごめんな……大丈夫、もう大丈夫だから。これからは俺が君を守るよ」
俺の胸に飛び込んで来て、大泣きする彼女が早くこんな悪夢から解放されるようにと俺は強く強く祈った。
そして、彼女から見て俺がこの時どれほど救世主の様に、心強く見えたか俺はこの時まだ知らなかった。そして、また彼女が誰かの救世主になる事も。
***
人元歴455年7月、ラインアース王国王都――
「我はラインアース王国、八代国王ロッド・ローム=レストナーバである。そなたを呼び立てたのは、ロメニアーティ家の今後についてだ」
俺は今国王の御前にいる。こうなるのは随分前に分かっていたが、いざ実際となると怖いもんだな。
ロメニアーティ家は例の事件の責任を取るという事で爵位を剥奪され、ただのロメニアーティ家になってしまったのだ。
あの国家治安維持局の人の言う通りになった。つまり、今回呼び出されたのはついに御家取り潰しか。
「早速本題に入ろうか。王国法三条に基づき、ロメニアーティ家を御家取り潰しとする。尚、ロメニアーティ領はハルン伯爵領に一時管理させることとする」
やっぱりか……ちょっとだけ悲しいな、あの家どうなるんだろう……まず俺とエリスはどこに住めと?
国王がそう宣言した時に横の方から出てきたこの男がハルン伯爵か、何かちょっと凛としててかっこいいなクソ、貴族なんてもんはおデブじゃないといけないんだが……
「レイニィ、と言ったか、そなたは今何歳だ?」
「はっ、少し前に12歳になりました」
「そうであるか……って12歳か。なるほど、12歳……え、12歳ってそれ程にしっかりしているものなのか?我の娘とえらい違いだ……」
国王はとても驚いていた、よく考えてみるとそうだな……自分でも驚くわ。12歳はまだ中学生くらいだもんな……
「12歳にして、冥星級めいせいきゅう魔術師であるか……そなたの今後についてだが、我からある提案がある」
そうなんです。俺持ち前の保有魔力量の多さと、赤ちゃんの頃から特訓した魔術のお陰で冥星級魔術師をやらせてもらっているのです。
割と大人にも勝てるくらいには強いと自負してます。
「それは一体……?」
魔術師級位
一般魔術師→高等魔術師→上級魔術師→冥星級魔術師→水星級魔術師→界星級魔術師→神星級魔術師
正直覚えなくても差し支えないと思われます。
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