成人
4月10日王宮に向かっている
昨日の午後に王宮横の錬兵場に着いたのだが、モンデール邸に泊まり。サリユース爺ちゃんとライアン爺ちゃんに、毎月の酒とソイソースの配達をやめるように頼んだ。勿論お礼は言って有る。
グズる爺ちゃん達に、母さん達が。それならば私達に毎月ドレスをの一言で、爺ちゃん達は撤退していった。
王宮に着いて案内された一室には。ユージンが1人だけで居た。
「成人の挨拶、ちゃんと考えたかい。ガンジー」
いつもの余裕笑い
「私の挨拶では、ご満足頂けないご老人方が多いでしょうね。王に忠誠を誓わない挨拶など、もってのほかだと」
「そう言えば、当然そうなるよね。でもそう言わなければならない。面白い立場になったものだね」
面白がるなよ
「ユージン、帰って良いか?俺疲れたよ」
泣き言を言う
「ガンジーが、妹達か従姉妹を嫁に貰えば。誰も何も言わなくなるよ」
人魚達の仕返しか?
「爺さん達と喧嘩する方がマシだな..」
なげやりになってきた
結局謁見の間で爺さん達と戦う事を選んだ
「陛下、我が忠誠は陛下のみ心のままに」
一見王様の思い通りにって聞こえるけど。剣を捧げて無いから、忠誠を捧げるかどうかは王様の心掛け次第だと言ってるようなもの..王宮など屁理屈の通しあい..
〈おのれ無礼な〉〈若造が何を〉〈身の程をしれ〉〈素っ首叩き落としてくれよう〉様々な言葉が飛び交う
「よい!北のドラゴンを打ち。西の海賊を滅し。素晴らしい功績を上げたにも関わらず、領地も地位も金も、何の見返りも望まぬ。誰が真似を出来ようか。口先ばかりの忠誠などより、余程信頼出来るわ。賢しそうに、腹に隠す者より小気味良いしのお。名誉飛龍将軍ガンジー、これからも励め」
「はっ!」
最敬礼をした
「お祖父様、ガンジーをお譲りする気は有りませんよ」
「解っておるわ、あれはワシの手には余るでのお。ハハハハ」
玉座で笑う王様と隣で微笑むユージンの聞こえないハズの会話が聞こえた気がした..
100人近い貴族や、有力な騎士の息子などの成人の宣誓の最後が俺だったのだが。ただ立って待つのは疲れた。別室でユージンとソファで伸びてたら、ノックと共に母さん達が。
「ガンジー、成人したのに婚約者の1人も居ないでは少々淋しくはないですか」
テレサ母さんが言うが。母さん達の後ろには10数人の女性予備軍達が..
「ガンジー、この娘達はお母様達と共に美しさを磨く努力を常にしているのですよ。皆様お美しいでしょう?」
マーニャ母さん、石鹸のお客様達の接待だと言い切ってます..
「私は、テレサ母上とマーニャ母上とに育てられ。幼い頃より美しさには目が肥えております。お2人の母上に勝ると自信の有る方は居られますか?」
良い逃げ口上が浮かんだと自画自賛する
流石に全員しりごむと思ったが、1人の女の子が進み出た
「ユージンお従兄様、ご紹介して下さいませ」
金色の縦巻きロールを揺らしながら言う美少女
「ガンジー将軍、私の従妹のユーリア・ローレル。ローレル公爵家の令嬢だよ」
自信満々の微笑を向けて来るユージン、確かに美しくなるだろうが5年以上は確実に後だよ。残念ながらロリ属性は持ってない..
「ユーリア様、初めまして。美しい方にお声を掛けて頂けるのは、大変な名誉だと感謝致しますが。私には、世界を旅したいと言う夢が御座います。粗忽者の戯言とお許し下さい」
正直な所美人には余り興味が無い
「ガンジー様、旅が終わりましたら。お話しを聞かせて下さいませ。お約束ですよ」
ニッコリと微笑むユーリア。何とか助かったと息を吐き出す。女の子を傷つけるのも、恨まれるのも出来る事なら回避したいと思う部分が強い..
母さん達が、接待を終えたと。満足げに退室していく
「ガンジー、あの娘でも駄目かい。王国1と言われる美少女なんだけどねえ..」
呆れたような目線、一枚噛んでやがったかな..
「あくまでも美少女だよユージン。少女が付くと子供って意味だから」
笑いながら言うが..ふと、ルールーが頭に浮かぶ。何故ルールーは大丈夫だったのかな?4才年上の16才だったハズ..
「まぁ、ユーリアも助かっただろうし。喜んでると思うよ」
意味不明の事を言われた
「俺に断られたかったって意味かな。ユージン」
頭の中には点点点点の文字が
「違う違う。あの娘は、王家の血を引いているからね。それにあの美しさだし。目的はそれぞれだろうけど、婚約者候補を断るのが大変なんだよ。でもこれからは楽になるだろうし良かったよ」
笑いながら言う
「楽になるとは?」
「これからは、ガンジーを待ってるの一言で済むからね」
笑いが微笑みに変わる
「俺には婚約などする気ないよ。大丈夫なのか?」
先に釘をさす
「大丈夫さ、あの娘はああ見えてしっかりしてるから。良いのが居れば嫁ぐだろうし、いなければ独身を通すだけだよ」
王宮で暮らすにはそれなりの苦労が有るのは、色々聞いて知ってはいたけど。改めて自分には無理だと確信したよ。
この後は舞踏会..武道会なら良かったけど..
成人を迎えた男は1度は踊らないといけないらしく。相手が居ないのを知ってる母さん達が、女の子達を伴って来た理由にも含まれてたらしいが。しきたりに無知な俺が気付くハズも無く。迂闊に申し込めば婚約させられるかも知れないとの無知なゆえの恐怖も有って。仕方無くユージンに頼むしかないと思ってると
「ガンジー様、わたくしと踊って下さいませ」
男達の囲みを抜けてやって来たユーリアが言う
渡りに船と思い、優雅に礼をして手を差し出した
「王子様に伺いました。私は良い虫除けになれそうですか?」
躍りながら聞いてみた
「まぁ・・・」
小さく呟きクスクス笑いながら踊ってる
「もし、私が断らなければどうしたのですか?」
イタズラ気分で聞いた
「ガンジー様に貰って頂けるなら。わたくしはお受けしてもよろしいですわよ」
クスクス笑っている。全く13才とは思えない強かさである
「好きなだけ、私を虫除けに使って下さって結構ですが。虫除け以外にはなれない事は理解していて下さいね」
子供に負け惜しみを言う元爺さん、最低である
2曲踊ったが、ユーリアは結局最後迄クスクス笑っていた
席についていたユージンの隣に座ると
「ユーリアがあんなに楽しそうに踊っているのは初めて見たよ」
「好きに言ってくれ!」
仏頂面でワインを口に運んだ..
ダンスは子供の頃から、姉さん達と母さん達が。俺をオモチャにし続けた結果ですから。苦労したかいが....
暫くして、お役目をはたして頂きますね。と微笑みながやって来たユーリアは最後迄ニコニコと席から移動せず
ユージンの隣にはアリシアと言う、美しい少女がやって来て座っている。アリシアはユージンの婚約者で来年の成人を期に二人は結婚するらしいが。17才のユージンには他にも2人の婚約者が居るそうだ。王族とはいえ、決められた人生を歩くのは嫌な事も有るのではと余計な心配をしてしまうのは..前世の記憶が有るせいだろう..
王都での予定を終え、カチュア子爵の領地へ向かう。
コーティングが上手く仕上がらない理由は2ヵ所存在した。
接地面の剥離と。素材を構築しながら薄く伸ばす作業をする為に魔力不足を起こす事なのだが。
先ず、鉄の表面をざらつかせ。爪状の小さい突起を多数作り剥離を防止し。
その上に新しく素材を構築するのでは無く。あらかじめ用意した大理石をそのまま薄く再構成させる事で魔力の必要量を激減出来ると教える。
全ての鉄の船をコーティングし終える頃には、かなり様になった来ていたので。後は経験をつむだけだとカチュア子爵に伝えた。
満面の笑顔を浮かべながら。カチュア子爵は1週間以内には全ての材木を運び終えると言ってくれた。
海賊島の獣人達も柵を8割方完成させていて。柵が出来上がれば、太い木を選んで切り出すように頼んで有る。カチュア子爵領からの700本とマルトークからの300本では少し足りないのだ。マルトークにはパン工房も建てて貰ったので、余り無理は言いたくない。
パン工房の外部工事が終われば、半数の大工達を貸して貰う事にもなっているので。材木を配置さえしておけば、日除け小屋と物置小屋の建設は。30人程の大工達が1週間程掛けて仕上げる予定だ
後は、牧場用の家畜を持ってくれば。一応の待ち受け体制は整うなあ....




