黒組が行く5
砂浜から海を眺めていた
顔を焦燥に曇らせて、視界が閉ざされ始める夕暮れ時の海を見詰めている..
今猛烈に後悔してます。日が傾き始める少し前にバカな命令出してしまったと..
夜のモンスターは動きが活発化します。モンスターの強さは変わらないのですが。理不尽な存在が出没する場合が有るようなので..
神に祈っても、話は聞いてくれますが。祈りは無理だと思われます..あの女神様なので..
出産を待つ旦那のように、砂浜をウロウロしていたら。海から人魚達が上がってきたので。ほっと息を吐き出して体の力を抜きました
「ガンジー様、ただいま戻りました。こんな所でどうしたんですか?」
最後尾からヤールーが聞いてきた
「夜の海は危険だから少し心配しただけだよ」
正直に言うと、ヤールーは少し笑った
ヤールーの後ろに、左右から支えられるようにして立っている裸の人魚がいる。本来の姿なのに、.Tシャツ姿を見馴れたせいで裸と感じてしまうのだが..
裸の人魚には、右腕が無かった。右肩の少し下をきつく縛って有るが、その直ぐ下の部分からが無く少しづつ血が流れている
「この人魚は海賊島の?」
海賊島から戻った人魚達が、イカーンやサメンを数体岸へ引き揚げてるのが見える
「そうです」
頷くヤールー
「この人魚を襲ったサメンもあの中にいるの?もしいるのなら腹を裂いて人魚の腕を探してくれるかな」
間に合わないかも、と思いながらも聞いてみる
跳ね去るヤールーを見ながら
「その人魚をその場に座らせて。お前達は下がって良いよ。ご苦労様」
人魚達が軽く頷いて去って行く
「1人みたいだけど、他の仲間は?」
答えは想像出来たが、一応聞いてみる
「サメンに喰われるのは1人で十分さ」
想像通りの言葉だ
「海賊島の人魚の中でお前が最年長なのかな?」
少し期待する
「そうだよ、それがどうかしたのかい」
不審そうな顔で答えた
ヤールーが腕を見付けて持って来てくれる
「ありがとう、サメンの本体を50センチ程切って持って来てくれるかな」
ヤールーが直ぐに持って来てくれた
「ありがとう、暫く離れていて」
ヤールーが去って行くのを待ち、人魚の腕を綺麗に水で洗い流してから。
「そこへ寝て、海の方を向いて体を横にしてくれる」
人魚の腕を縛ってあった紐をほどくと、傷の部分を洗い流して腕と傷を密着させる。人魚の傷口とサメンに触れて、魔力を同調させて情報を集め再構築に入る。傷付近や更に奥の組織が死滅している部分の再構築、欠損している様々な部分が少しづつ繋がり再生されて行く。切断されていた腕の部分の損壊も再生されて行き酸に侵されつつ有る皮膚さえ綺麗になった。
治療の終わった腕を擦りながら体を起こす人魚
「あんた、神様かい?」
いつもと同じ反応、同じ言葉
「腕を咬み千切られた夢を見ていただけだよ。きっと」
いつものオトボケ
「そんな事有るハズ無いんだよ」
だよなあ..
「それでも夢を見ていたんだよ。どうしても夢じゃ無いと言うなら、元に戻すけど!腕が有るのと、無いの。どっちが良い?」
やっぱり悪どい..
「解ったよ、夢だよ。夢」
必死に首を振る人魚
「約束出来る?」
いつもの確認
「約束するよ。する!」
黒組には口止めは必要無い、黒組ゆえに..多分
この人魚は名前をメイメイと名乗った。メイメイは2年半程前にギャルソン領から逃げて、海賊島に来たそうだ。その時の海賊島には150人程のメイソン領の人魚と100人程のギャルソン領の生き残りの人魚とで、250人程の人魚が居たらしいが。海賊島の回りにはサメンが多く、人魚の数は年々どころか毎月のように減った上に。1年余り前に人魚の総出動する戦いから戻る時にサメンの大群に教われ激減したそうだ。
現在の人魚の数を聞くと、5才以下が50人余り、14才以下が20人、14才以上が50人。最年長のメイメイが21才だとか..
思ったより、赤ちゃんが少ないのと何故14才で区切るのかを聞いたら。妊娠中の者が次々に死んだのと、一年余り前に死んだ人魚の大半が出産間近だった。というとんでもない話しを聞いて少し落ち込みかけた所に..14才以下が極端に少ない理由を聞かされて、更に落ちた..
子供を好んで殺すバカがギャルソン領に居たらしい..
14才で区切る理由は単純だった。14才から海賊島では戦いに出動するらしい。120人以上居る人魚が、50人だと言われた理由が解った気がした
メイメイは2000人以上居る人魚達の数にも驚いていたが。その服装や装備にも驚いていた
俺はそれより気になった事をヤールーに聞いた
「群島でもサメンの群れは出るの?」
大問題だ..
「サメンの群れですか?50や70なら時々出ますよ」
とんでもない事を聞かされる
「出合って、被害は?」
焦り気味に聞いたが
「無傷で殲滅に決まってますよ。サメン程度は」
サメン程度って言われてますよ..元天敵さん
「黒組なら大丈夫だろうけど..他は..」
不安そうに呟くも
「他ですか?確か先日も、60程の群れを。グリーンのメイリン隊が無傷で狩ってたハズですが。私とかメイリンなら、1対1でも勝てますし。他にも1人で勝てる者が結構居ますよ」
1対1って..どこまで強くなってんだよ..
呆然としてる俺をよそに、話しを始めるヤールーとメイメイ。
「あんた、その服カッコいいじゃない」
そこかよ命より服って..
「良いでしょう!私も気に入ってる。欲しいなら群島共和国に来なさいよ」
気に入ってるんだ、戦闘狂の癖に..
「群島共和国?って何なのさ」
え、って顔
「知らないんですか!人魚の国ですよ。この3年余り、1人の人魚も死んでないんですよ。信じられないでしょう!」
そう言えば人魚は誰も死んでない..人魚は
獣人が1人死にました。人魚群島共和国最初の犠牲者です。中央の島の砂浜に、巨大蟹のモンスターが現れて。真っ先に向かって行って殉職しました。その奮闘のお陰で態勢を整えられた人魚達に犠牲者は出ず。何故かその後、3人づつの人魚が獣人達の世話をするようになってました。
俺は関知するつもりも必要も感じて無いので、幸せに過ごして欲しいとだけを願ってます
話しがそれてしまいました..
メイメイに海賊を取るか?俺たちを選ぶか?を聞くと、海賊は子種はくれたし乱暴はしないが。お腹の大きな人魚さえ戦いに駆り出すのが許せないみたいで、協力してくれるようです。
有り難い事に、接近してからの斥候役を人魚が受け持ってるらしく色々と活用すれば海賊に痛手を与えられるハズです、問題は子供達の保護をどうするか?ですが..
取りあえず、メイメイは翌朝ヤールー達が送る事に決めて眠ります
眠りが訪れる迄の間、今日1日を振り返り。色々有り過ぎだと心の中でボヤキながら、色んなシーンを回想中にふと気づく。場面、場面での自分の意識外の言葉使いの変化に..その時の自分の意識がどちらの意識なのか、と言う女神様の言葉を思い出す。
この世界の意識も育っている。とも言われたし..
二重人格って事か?いや違うな。
価値観の違う世界で育つ禁忌は違う。それを受け入れる..そうじゃない。無理矢理子供を演じて来た付け?それも違う..言葉使いの変化にさえ答えが出ないまま眠りに落ちた....




